極秘資料2:フリーライター タケマツシュウ宅より回収したレコーダー音声記録つ
<録音再生>
さて、ココまでが俺の知る全てだ。違法上等、あらゆる手段を駆使して集めたG県で多発する行方不明事件の情報は、調べれば調べる程に何が起きているか分からないとしか評価出来なかったが、次第に、朧げに全体像が浮かんできたのでここに残す。
先ず、判明している事を列挙する。
1つ。事の始まりはフィールドワークに出かけたG大学の学生と教授。彼等は何かを見たか、あるいは知ったか、あるいは触れてはならない何かと関係を持ってしまったが為に呪われ、最終的に全員が命を落とした。あぁそうだ、多分この大学生が掛かっていた精神科医も恐らく……
2つ。次にこの事件を調査していた刑事だ。まだ新米で行動力も正義感も強かったのだろうか、あるは自分と歳が近い大学生たちが次々に行方不明となった事に思うところがあったのか、とにかく首を突っ込んで……死んだ。しかも異常な死に方だ。映像と殺された痕跡があるのに死体だけが何処にも無いという状況は警察すらお手上げだという。
3つ。その次だが、恐らく新米刑事の上司だ。彼は部下の件が余りにも不自然だったので独自に調査を開始、そして何故か県警の捜査資料をオカルト雑誌編集部に届けた。その中にはヤツ自身の最期を記録した映像もあった。
4つ。最後、文化出版社の5人。全員、俺の知り合いだった。レコーダーに残された音声には、恐らく彼等が犠牲となる瞬間が記録されていたが、これだけじゃあ何が起こったかサッパリ分からない。ただ、悍ましい何かに殺されたという、ソレだけしか……
一連の証拠は全部、間違いなく本物だよ。何せあの凄惨な現場から持ち出したんだからな。思い出しても吐き気がする。あの、そこら中にべっとりと血がついた部屋はな。多分、みんなあそこで死んだんだろうけど、手を合わせる余裕なんて無かった。
ココまでの情報を総合すると、君達の中にははっきりとした疑惑が浮かんでいる筈だ。ない?そんな訳が無いだろう。そもそも、ココまで全部の情報はとある刑事がG県警から盗み出さなければ決して表には出なかった代物だ。じゃあ刑事はなんで盗んだんだ?導き出せる答えは1つしかない。この件にはG県警そのものが関わっているからだ。大体にして、Gカルチャーの件が闇金絡みのトラブルって形になってるのがおかしいんだよ。あんな、そこら中に血が飛び散った悲惨な現場を見たんだ。あんなの見て、誰が闇金の仕業だと思うんだ。だから間違いない。
ただ、直接この目で見たわけじゃない。だから、結局は全部憶測でしかないと言われたらそれまでだ。とは言え、怪異と人間の間に何らかの繋がりがあるのは確かなんだ。しかもその関係は酷く歪で、悍ましい。だが、どうにもしようがない。今現在の世界も、当然日本の文化文明も怪異の存在を織り込んじゃあいないんだ。法律では怪異を縛れず、その怪異と何らかの関りを持つあの町の連中も同じく。いや……あの怪異に至れば何であっても縛れないような、そんな気がしてくる。
海外に好奇心は猫をも殺すという諺がある。怪異は知ってはいけない。知ろうとしてはいけない。関わるなんてもってのほか。俺もこれ以上の詮索は止めにするよ。せっかく新しい飯のタネにありつけるかと……友人の死に様を書き起こす覚悟でいたんだが、これは駄目だ。怪異だけでも無理ゲーなのに、人間まで関わってると来た。
こんな事知ってたら関わるべきじゃあないなんて直ぐに気が付けた。あの日を恨む言葉は今まで何度も何度も零れ落ちたし、汚い言葉もまるで尽きない後悔の如く溢れた。本当についてない。なんで見つけちまったんだろうな。G県に立ち寄った事、偶然知り合いの編集部が近いから顔を見せに行って、そして……血塗れの部屋と充満する不快な匂いの中にソレを見つけた。
反射的に一歩後ずさろうとした俺は、だが机の上にポツンと置かれたレコーダーに目がいってしまい、次に厳重に封がされた証拠品一式を見つけ、反射的にカバンにしまい込んだ。警察には知らぬ存ぜぬで通した。だが、それが全部の間違いの始まりだ。彼等がここ最近、G県で頻発する行方不明事件を追っているのは電話で知っていた。この惨状が関係していると、そう直感した。
理性はフルブレーキをかけている。危険だ。怪異と下手に関われば死ぬ。だけど結果的に俺は関わってしまった。好奇心には勝てなかった。その結果、多分俺も……なんだ?
――カラン カラン
どこかで聞いた覚えのある……
――カラン カラン
どこだ、どこだっけ?直ぐ最近だった筈なんだ。クソ……あ
――カラン カラ……
あぁ、白い……着物の女が。何処までも真白い……まるでユキの様にシロい……大きな口が……(以後、レコーダーは何かが固い何かを咀嚼する音を3分ほど記録する。最後に下駄の音が遠ざかる音を最後に録音が途絶える)
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