高校3年生という子供と大人の狭間にある幼馴染の男女の、どうしようもない環境と心の傷の寄り添い合うひと夏を描いたお話です。
ただの青春物語ともラブストーリーとも名状するには惜しい。
女であるが故の生きづらさやヤングケアラーといった、センシティブな題材を織り交ぜたリアルなヒューマンドラマが、繊細かつ生々しい筆致で綴られています。
紗世と佑、罪悪感と共に惹かれ合う二人の恋愛感情が、まるで互いの逃げ道のようになっているのが終始苦しい。
もっと当たり前に楽しい恋ができたら良かったのに、その環境から自力で抜け出せるような大人でもない。
作中ずっと蔓延り続けるしんどさこそ、本作最大の魅力だと思います。
だからこそ、ラストシーンの清々しさが沁みます。
全てを自分のものとして受け入れ、前に進む力を得た二人の姿に、とても胸が温まりました。
ぜひとも皆さんに、この最後の景色へと辿り着いてほしい。
素晴らしい作品でした。おすすめです!