番外編 グサヴィエとジーナ。
辺りを見回せば、モンスターの爪痕が色濃く残る。
木々は枯れ果て、田畑は焼け跡だけが無惨に残され、手入れする者もいない。
そんな閑散とした中、グサヴィエは痛む胸を押さえて立ち止まった。
「まったく酷い光景だな……」
かつては、細々と、だが慎ましく暮らす人々がいたであろう村の名残りは、まるで地獄絵図だ。
旅の途中、たまたま通り掛かっただけの村で、知り合いなど一人もいないが、あまりの凄惨さに見ていられない。
だが早く立ち去ろうと、再び歩き出そうとしたグサヴィエは、どこからか響く、啜り泣くような声に足を止めた。
耳を澄ませ、声の出所を探ると、どうやら一軒の焼け跡から聞こえてくるようだ。
「……まさか誰かいるのか?」
そう言って、ほんの少しでも力を込めれば、
急いで、かつ慎重に少女を救い出すと、少女は怯えた目でグサヴィエを見ている。
「大丈夫か?可哀想に…」
汚れた顔を手拭いで拭いてやると、栄養失調である事が分かる。
「…いつからここに居たんだ?」
怯えさせないように優しく問い掛けるが、少女は今にも悲鳴をあげそうな顔で首を振る。
「大丈夫だ、怖がらなくていい」
笑顔でそう言うと、少女はやっと落ち着いた表情を見せる。
「……誰?」
「俺か?俺はグサヴィエ・コーエン、俺も君の名前を聞いても良いかな?」
「……ジ…、……ジー…ナ」
「ジーナか。……どうだ、ジーナ。俺と来るか?」
「……?」
「こんな所に一人じゃ寂しいだろ?」
「…私……何も出来ない、…きっと…迷惑…」
「はははッ、ガキ一人増えたところで、迷惑にもならねーよ」
今まで辛い思いをしてきたのだろう。
少女は期待と不安が混じった、複雑な視線をグサヴィエに向けている。
それは胸を締め付ける程に暗く悲しい色で、グサヴィエは返事を待たずにニーナを肩に担いだ。
「…おじ……さん」
「俺はおじさんじゃなくて、グサヴィエだ」
「…グサ……ヴィエ…」
ようやく敵ではないと理解したのか、ジーナは抱き付くように首に腕を回してくる。
「よし、行くか」
「どこに行くの?」
「……ん?ジーナが安心して暮らせる場所さ」
「そんな所あるの?」
「あるさ、いや…俺が作ってやる」
そう言うと、グサヴィエは強く拳を握りしめた。
今は旅の途中で、ジーナも落ち着かないかも知れない。
だが今回の旅が終わったら、ジーナが安心して暮らせる場所を作ろう。
いや、この子だけじゃない。
きっとこの世には親を亡くした子供が沢山いる。
そんな子供達が安心して暮らせる場所を作ろう。
そしてそれから一年足らずの間に、グサヴィエは孤児院を建てる事になる。
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