第33話

 感染症患者は次々運ばれてきた。

 看護する人間たちにも症状が出はじめてきており、そのたびに私は施しをしているが、一向に収束する気配はない。

 私がしているのは対症療法だから、根本をたたかない限りこの感染症は終わらないか……。だとしてもこの感染症の原因は何だ?


「ルシファー殿、報告です! 以前申し上げた領地に調査に入ったのですが、悪魔が見つかりませんでした!」

「なんだと? では悪魔ではないのかもしれないな。となると呪いか?」

「呪い……」


 ギャラオンでは呪いというものがあった。

 呪われると不幸に見舞われる。プレイヤーがかかると、全部の状態異常にかかったり、歩くたびにHPが減り続けていたり、HPが一気に半分まで減り、回復薬を飲んでも効果がなかったりなどなど。

 それが嫌で呪い耐性を付けたのだが……。


「だれが何のために……」

「国を崩壊させたいやつとかだろう。魔力があるのは呪いのせいかもしれんな。とりあえず解呪するしかないが……。今度はそういうのを探してみろ。呪いの依り代があるはずだ」

「はっ!」


 騎士に命令を下し、すぐに探しに向かわせた。

 すると、数時間後に一人の騎士からまた報告を受ける。


「ありました! 神父に見てもらったところものすごく強力な呪いがかけられた木簡が3つ発見されたそうです!」

「すぐに持ってくるがいい! 私が浄化してやる!」

「了解であります!」


 私は感染症にかかった患者を回復しつつ、その木簡の呪いを見てみることにした。

 運ばれてきた木簡にはたしかに禍々しい魔力を感じる。この魔力が呪いをかけて感染症を引き起こしたんだろう。

 私は木簡に触れて、私の魔力で上書きするように魔力を流した。

 禍々しかった魔力は鳴りを潜め、ただの木簡となる。


「一体だれが何のためにこんな呪いを……。まぁ、考えるのは私の仕事ではない。すぐに燃やしておくがいい」

「かしこまりました」


 私はまだ運ばれてくる患者を治すが、次第に運ばれてくる人の数は少なくなっていた。

 施しを授けていると。


「よぅ。ルシファー。悪魔教を仕留めてきてやったぜ」

「これが悪魔教トップの司祭だ」

「こいつがすべての元凶。面倒ごとを引き起こす悪い奴」

「ああ、友よすまねぇな! だが、悪魔を軽く見すぎたお前の甘さも要因だぜベイベー」


 サタン、ベルゼブブ、ベルフェゴール、レヴィアタンが悪魔教司祭を連れてきたようだ。

 この魔力……。


「なるほど。こいつが呪いをかけた本人のようだな。形はどうであれ、国の崩壊を企んでいるのは確かか……」


 私は気絶している司祭の胸ぐらをつかみ、ほほをたたいた。


「いたっ……。な、なんだ……?」

「貴様のせいで私もいろいろ面倒ごとに巻き込まれているんだ。どうしてくれるんだ?」

「ひっ……。す、すいませんでした……」

「すいませんですんだら私はここまで怒っていない。答えろ。呪いを振りまいたのもお前だな?」

「……はい」

「やはりか。お前たちの後ろには何がいる? お前たちは悪魔を召喚して何をしようとしていた?」

「…………」

「答えないつもりか。まぁいいだろう。貴様は私の手で直接処刑してやる」

「しょ、処刑!? ご勘弁を……!」

「ならば答えろ。後ろには誰がいる?」

「ま、魔王様です! 魔王様がこの大陸も支配したいということで、我々も協力を……!」

「そうか……。わかった。では死ね」


 私は司祭を放り投げ、魔法を放って殺した。

 ちょっとムカついてんだよ。殺したいくらいには。こんな面倒ごと引き起こしてくれやがって。

 だがしかし、裏に魔王軍がいるのはわかった。


「おいサタン。お前……まだ戦いたいんだろう?」

「おうともよ。もしかして俺にやらせるつもりか? いいぜ」

「魔王をぶっ倒してこい」

「わかったぜ! おい、テメエら行くぞ!」

「えー、僕もぉ? って言いたいけどぉ、魔王がいるとまた面倒ごと来そうだもんねぇ」

「ルシファー様の命とあらば」

「え、俺も行く流れなの? 俺は別に戦いたいとかいう気持ちはねえぜ?」

「お前ら含めマモンとアスモデウスを連れていけ。私は城に残って待っている」

「わかったぜ」


 サタンもだんだんと私たちになじんできてくれて何よりだ。

 4人の悪魔は空を飛び向かっていく。


「さてと。すまないな。勝手に殺して」

「い、いえ……」

「ルシファーさんも悪魔、なんです、ね」

「ん? ああ。まぁ、だが、こいつを殺したのは面倒ごとをわざわざ引き寄せたからだ。むやみやたらに殺すつもりはないぞ」

「な、ならいいんですけど」


 安易に殺しちゃったことで信頼が失墜するところか。あぶねぇあぶねぇ。










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