第32話

 3人がその悪魔教とやらを討伐しに向かった直後、国王から書簡が届いた。

 緊急な知らせとのことだ。私は内容を改めてみると。


「王都で謎の感染症だと?」


 感染症について何か知らないか、どうにかして対処できないかということだ。

 対処か。うーむ。

 私に協力を要請してくるのはいいが、私が対処するのは基本的に……。


 まぁいいか。困ってんなら助けないとな。


「アスモデウス、マモン。私はしばらく出かけるぞ」

「なんだ?」

「王都で謎の感染症が流行っているらしい

「感染症?」

「わからないが、わかった」

「わかったわぁ。留守は任せてちょうだい」

「お前らに一旦任せた」


 私は翼を広げて王都まで向かっていった。

 王都に着くと騎士が手を振って私を呼んでいる。私は騎士に従ってついていった。

 感染症にかかった患者はとりあえずデカい一つの建物に押し込んでいるらしい。看護する人も完全防備で事に挑んでいる。


 私は騎士に案内され中に入る。

 大勢の人数が寝込んでいた。1人を見てみると、首元に赤い斑点が浮かび上がっていて熱を持っている。

 悪魔の仕業か? 悪魔教がまたなにかしたのか?

 実際、うっすらと魔力を感じる。


「ルシファー殿、何かわかりませんか」

「わからん……。が、これだけの人数大変だろう。この部屋から出ていったほうがいい。膨大な魔力が流れるからな」

「わかりました。直ちに避難を!」


 騎士は看護してる人たちに避難を促していた。

 私はこの場にいる全員まとめて天使の施しスキルを使用した。

 天使の施しは体力回復、あらゆる状態異常を回復し、耐性を得るもの。

 大方、これで治る。


 患者の様子を見てみると、赤い斑点がなくなって熱も下がっていっていた。

 私は外に出て騎士達を中に入れさせる。


「治したぞ。防護服はいらんと思うが着ておけ。原因究明は迅速にしたほうがいい。私はあくまで治しただけだからな」

「こんな大人数を……」

「たしかに熱が下がってます! 意識を取り戻したのもチラホラと!」

「よし、聴取を急げ! ルシファー殿、まことに感謝する」

「気にするな。ただ、ここにいる人たちを治しただけだからな。まだ他にもいるかもしれん。私もしばらくここに残る事にする」


 私も原因が気になるからな。

 騎士たちが患者たちに事情を聞き始め、夜を迎えた。

 いまだに運ばれてくる感染者。私は片っ端から施しをかけていく。


「ルシファー殿!」

「なんだ?」

「原因についてお話が……」

「ここでいえ」

「はっ! 全員に話を聞いたところ、全員共通する地名が3つ出ました」

「地名?」

「グロエンタ伯爵領、ペンドルトン侯爵領、エドモンド伯爵領の3つです。皆、このいずれかの領地に旅行を行ったみたいで……」

「その地名はヒントになりうるが完全なヒントではないな。感染症なのだからただ感染者に触れて感染しただけかもしれん」

「はい。ですが、この3つだけ話によく出てきたので、感染源はこの3つのどれかかもしれません」

「だな」


 そこまで多く出てくるのも確かに妙な点ではある。

 グロエンタ伯爵領、ペンドルトン侯爵領、エドモンド伯爵領か……。


「団長も騎士をその3つの地域に派遣するらしいのですが、ルシファー様はどう思いますか」

「まぁ、いいとは思うが……。だが、これだけの人数が感染するくらいだ。ものすごく強い感染力だろう。最悪死ぬかもしれんぞ」

「うっ……」

「私がその3つ回るわけにもいかんしな。ただ、悪魔の仕業かもしれんから聖職者を同行させたほうがいいだろう」

「悪魔……」

「感染者に触れた際、うっすらとだが悪魔の魔力を感じた。これだけ強い影響力を持つ悪魔だ。それなりの力はあるだろう」


 病原体をばら撒いている元凶か……。誰なんだろうな。









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