第28話

 私は夢現の状態だった。

 眠たい。けれど、外がなんだか騒がしい。私は外を見ると、サタンと何かが交戦していた。

 

「ルシファー様、敵です」

「ああ。今行く……」


 私は行こうとすると、ベルゼブブが背後に周り、何か扉のようなものを出していた。

 そのまま、私はその扉に吸い込まれる。


「ベルゼブブ……!」

「おっと。すいません。ルシファー、あなたはしばらく封印されてもらいますよ」


 と言って、私は抗えないほどの力で扉の中に引き摺り込まれる。

 なんとかして抜け出さなくては……。私はとりあえず、なんとかしてみようと分身みたいな感じで思念体みたいなのを出して見た。

 意識が思念体に飛ぶ。身体はそのまま引き摺り込まれる。


「…………」


 ベルゼブブのやつはやっぱ悪魔か。

 私は隠れながらベルゼブブの様子を見る。ベルゼブブはため息を吐いていた。


「ったく。ルシファー様を封印するだけでどんだけ魔力を消費すると思ってるんだエルフ共……。私の役割は終わりだ。あとはルシファー様が抜け出さないうちに準備を……」


 準備。なんの準備だ?

 謀反……なわけない。マモン、レヴィアタンは完全にこちら側であるからアイツらが裏切るとは思えない。謀反をするとしてもそこまでリスクを犯すようなやつではない。

 うーむ。わからん。とりあえず、この思念体では何にも出来ないしな。空飛ぶこと以外は無理だ。身体をどうにかして戻さなくては。


「ベルフェゴール、お前は抜け出さないように見張っていろよ。私は眠る……」

「うん〜。おやすみ〜」


 そう言ってベルゼブブはどこかへいった。

 私はベルフェゴールに声をかけてみる。


「おい」

「えっ!? もう……ってあれ?」

「思念体だけ取り出しただけだ。この状態ではなんもできん。何が目的だ」

「あ、そーなの……。うーん。ルシファーにとってら嬉しいことだよぉ」

「嬉しいこと?」

「だからぁ、しばらくは僕と一緒に外出ないでねぇ」

「嫌だと言ったら?」

「仕方がないからここで全力で食い止めるよぅ。思念体だから何も出来ないでしょお?」


 なるほどな。

 全く意味がわからんが従う他ないらしい。うーむ。何が目的なんだ。

 私は仕方ないので玉座に座る。

 身体を取り戻せるよう魔力を送り続けてはいるが。暫くかかりそう。


 まったく。何かやらかすつもりなら封印を解いた後でしごいてやるか。

 何も出来ない今、ただ見てるだけというのも暇なものなのでとりあえずまた眠ることにした。玉座に肘をつき、頬杖をついて目を瞑る。


 眠って暫くが経過しただろうか。

 目が覚めるとベルフェゴールの姿が見えない。それどころか私の身体も見えない。

 私は外の方に出ると。なにやら飾り付けがされていた。


「あー、サプライズ」

「おい、ベルフェゴール! 思念体となって寝ているのなら早く言え!」

「だって気持ちよく寝てたしぃ……」

「ただルシファーの身体だけが出たって意識がないのならどうしようもないだろう!」


 と、ベルゼブブが焦った声で走ってきていた。


「ルシファー様!」

「あ、いたぁ」

「ふむ。なるほどな。理解した」

「くっ……。エルフの皆様に申し訳が……」

「エルフの頼みだったのか。こういうことをするなら封印だなんて回りくどい真似をする必要はなかったがな。フッフッフッ……」


 なるほど。たしかにベルフェゴールの言う通りではあった。


「……で、私に秘密にした理由は?」

「そろそろルシファー様が生誕なさった日でしょう」

「そうだったか」


 たしかに初ログイン日が近いけど。初ログイン日が誕生日になってんの?

 

「そこで、一番最初のルシファー生誕祭は本人にも秘密にしようということで封印の手段を取ったのですが」

「そうか。ま、こういうことがあったのならば先に言え。裏切りに怒り狂って貴様らを殺しかねないぞ」

「失礼いたしました」

「だが、まぁ……。自分の祭りか」

「そろそろ戻ったらぁ?」

「む、そうだな」


 体に戻りましょうか。









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