第26話
夜会はまだ続く。
中央ではダンスが踊られていた。貴族の令嬢やフレズベルグ国第一王子が特に目を引いている。
ダンスか。小学校の時、ソーラン節踊らされたな。嫌だったなーあれ。
「ルシファー様もどうでしょう。一曲」
「いや、私はそういうのは不得手でな。遠慮する。見るだけで良い」
「そうですか。なら仕方ありませんね」
イフリート公爵はそう言って笑った。
「王子と踊っているのは私の娘なのですよ。よく出来た娘でして。私なんかよりよっぽど立派なのです」
「そうか……。自慢なのだな」
「ええ。どこに出しても恥ずかしくないくらいで」
惚気か。
まぁ、たしかに美しくダンスを踊るな〜とは思う。動きが明快で、見ている側としてもちょっと気持ちがいい動きだ。
私が見ていると、突然、王子とイフリート公爵の娘が引き剥がされていた。
会場は騒ぎになっていた。
転ばされたイフリート公爵の娘と、その前に立ち塞がる女の子たち。
「クロエ・イフリート殿。庶民をいじめておいて何のうのうと殿下とダンスを踊られているのですか?」
「虐め……?」
「悪魔と契約し、庶民であるサクラさんを虐めた。否定はさせませわよ」
なにこれ。断罪式?
何が何だか分かってない様子のクロエというイフリート公爵の娘。イフリート公爵は驚き呆けて動けていなかった。
「クロエ!」
「殿下。ダメですわ。このお方はサクラさんを虐めたお方。あなたの前では猫を被っているかもしれませんが、彼女の本質は性悪なのです! これが証拠ですわ!」
そういって紙をばら撒く女。
私も一枚拾って見てみる。そこには階段から突き落とすイフリート公爵の娘。
でも、これ……。この写真から悪魔の魔力を感じる。
「なにこれ……! で、出鱈目よ……!」
「だったらこの写真はどう説明するのですか?」
「それは……」
「クロエ……。お前本当に……」
イフリート公爵は信じかかっている。
が、これはないわ。私はわかるぞ。誤魔化せん。
「おい」
私は見てられないので声をかけることにした。
「なんでしょう?」
「嘘偽りは大概にしろ。何をしようとしてるのかは知らなく、興味もないが……嘘をついて人を蹴落とそうとするのは気に入らないな」
「嘘? 私の何が嘘だと?」
「貴様、悪魔を撮影すると悪魔の魔力が写真に篭るというのは知らなかっただろう」
「……えっ?」
クロエが驚いた顔でこちらを見ていた。
「それにこの写真を撮るにしても都合が良すぎるな。まるで階段から突き落とすことがわかってたかのように撮られている。偶然撮影できたにしてはタイミングもいい。悪魔の力がなくとも分かりそうなことだ」
「…………」
「まぁいい。どうせ醜く違うと否定するのは分かっているからな。この悪魔を呼び出してやろう」
写真の魔力から私はこの悪魔を召喚した。
中から出てきたのは雑魚悪魔という感じの悪魔だった。その悪魔は私を見て驚いている。
「る、ルシファー様……」
「答えろ。貴様がこの写真に撮られたクロエだろう?」
「え、は、はい……! 頼まれまして変身して……」
「ちが……出鱈目よ! 悪魔の言うことは信じてはいけないわ!」
「私が尋問しているから出鱈目は吐けん。悪魔は序列にうるさいからな」
私は悪魔を掴み上げる。
「ルシファー殿。本当か?」
「私は嘘はつかんつもりだ。だが、どちらを信じるかは王子の勝手にしろ。最愛の方を取るか、友愛の方を取るか」
「…………」
王子は顎に手を当てて、金髪の女と向き合う。
「そうだな……。たしかに、この写真は違和感だらけだな。ルシファーの言う通り、これは突き落とされると分かってないとこのタイミングは難しいはずだ。それに、この写真のクロエの耳には耳飾りが付いているが、耳飾りは片方にしかつけていない。確かにそうだが、逆だ。いつも逆の耳につけている。写真では左だが、常に右だ。常に右につけているにも関わらず、この日だけ偶然左に付けていたとは思いづらい。耳に怪我をしている様子も見られないからな……。アザトー。お前、嘘をついたな?」
「ちが……。私は……」
「連れて行け。私に対して嘘偽りを述べたことは罪である。また、この夜会で混乱を招き入れたのも事実。アザトー令嬢もとい、キャベルー伯爵家全員連れて行くが良い」
騎士が金髪の女を捕える。
私はとりあえず悪魔の首を握りつぶし倒しておいた。これで変身は解けるだろ。
悪魔の魔力がなくなった写真は本物に見えるからな。
「ルシファー殿。ありがとう」
「ありがとう、ございます……」
「気にするな。ただの気まぐれだ。お前の父さんが心配していたからな。恩を売ったまでだ」
「父上が……」
ったく。なんで私がこんな目に。
私は元いたところに戻り、とりあえずやけ食いすることにした。
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