第17話

 大陸会議。聞いたことあるな。

 ギャラオンはオンラインゲームだけど、ソロで進めるストーリーもあって、大陸会議という単語が出てきたのは知ってる。

 内容までは知らないが、大陸会議はこの大陸に属する国の王が四年に一度、一ヶ所に集まり会議を開くのだとか。


 何話すんだろな……。と思いながら、私は馬車に揺られていた。


「私は飛んでいけばすぐなのだが……」

「私がいないと敵ではない証明ができんだろう。今回の会議ではルシファーにはもう危険性はないと伝えるつもりなのだから」

「…………」


 今回の大陸会議は私も参加するらしい。

 大陸会議はこの大陸に属する7つの国の王が集まるので、警備も厳しく、各国騎士団長や、ものすごく腕が立つ騎士などの限られた強者が警備に当たるという。


 騎士にとってこの会議の警備は誇りになるのだとか。強さが証明されたということになるから。

 どうでもいい……。私はこんなむさ苦しい髭面の国王と着くまで延々と話し合うのも何か嫌なので眠ることにした。


 何時間眠ったんだろうか。

 いや、何日というべきか……。もうついてる。


「ようやく起きたか」

「着いたのだな」

「あぁ。ここが会議場所のマルクス大教会だ」


 目の前には城のような建造物。これが教会らしい。

 馬車がたくさん門を潜って入っていく。私たちもこの門を潜るようだ。

 

 門をくぐり馬車が止まる。

 国王は騎士団長に連れられて降りていき、私も降りる。

 ああ、太陽が眩しい。この場所……たしか天使になるために一回訪れたな。天使になる条件がこの大教会で神に認められること。ものすごく善行をして天使になれと。

 

 果たしてこの世界の私はそうやって天使になったのかは知らないが、ここはゲーム内だと訪れたことがある。

 中も全部記憶してる。


 私は国王に遅れて歩いていると魔法が飛んできた。

 各国の騎士が私を取り囲む。


「ルシファーだな」

「…………おい、フレズベルグ国王」

「あ、すまんすまん! 説明してなかったな」


 フレズベルグ国王が私に近寄ってきた。

 危ないですと告げられるが、私の隣に立つフレズベルグ国王。

 フレズベルグ国の騎士団が周りの騎士団の人に説明を始めた。推しもこのメンバーに選ばれてるのは流石だ。強いもんね。推し……。


 騎士達は剣を収めたが、まだ警戒は解かれてない。

 推しははぁ……とため息をついて、私を思いっきり剣で殴ってきた。


「…………」

「怒らないだろう? 怒るのならばすでに殺されている」

「あの……」

「おい、俺以外もいるんだからキャラは守れ」


 と言われましても……。推しが目の前にいるとどうも脳が溶けるんです……。


「こほん。仕方があるまい。私が警戒されるのも想像の範疇だ。おい、拘束する鎖があるだろう? 不安ならばそれを私につけておけ」

「すまない」


 そういって、推しが私を鎖でぐるぐる巻きにしていく。

 あ、なんか不思議な感覚。もっとちょうだい……。私は少し嬉しさを噛み締めていると、これで安心と言って歩くこと以外を封じられた。魔力を封じる鎖で、意識したらこの魔力封じの呪いも解けそうだが、まぁ、解く必要はないかな。


 私はこの状態のまま歩いていく。

 推しが大陸会議の会議室の扉を開けると、各国の王らしき方達がこちらを向いて驚いていた。

 私は席に座る。


「なんの真似だそれは……」

「拘束していたら警戒されないだろう? まぁ、このぐらいの魔力封じなら解けるが」

「……まぁ、そうか」


 フレズベルグ国王は前を向く。


「では、会議を始めよう」


 と、白い髭の禿頭が言った。

 あれはホワイト国国王のミスター・ホワイト。ふざけた名前してるよな運営よ。

 一応各国の王は頭に叩き込んできたが……。


「今回の議長は私、ホワイト国国王、ミスター・ホワイトが務めさせていただく」

「ホワイト殿。まずは私たちフレズベルグ国から緊急の議題があります」

「どうぞ」

「フレズベルグ国は……ルシファーと協定を結びました」

「……ほう?」

「今までルシファーは我々にとっては恐ろしいものでありましたが、それは単なる噂程度。我々の度重なる窮地を救っていただいたのはルシファー殿のおかげだ」


 国王は淡々と述べていく。

 私の危険性のなさや、味方にすることのメリットなどを述べて、我々の国に懐柔したということ、勇者を送り込む必要はないことを告げていた。


「にわかには信じがたいが……」

「本当なのか?」

「それを証明するために連れてきたのです。見ての通り、ルシファー殿は拘束されて文句の一つを言っていますか?」

「言ってないな」

「むしろ喜んでるように見えるが……」

「よ、喜んでなどおらん! ただ好きなやつに鎖をぐるぐる巻きに巻かれるのは少し……こう、なんだかムラムラするってだけだ!」


 そういうと周りの人たちが一斉に吹き出した。


「好きな人……?」

「ルシファー殿は我が国の騎士に恋をした。それ故に、人間と協力する姿勢を見せたのだ」

「なるほど……」

「恋の魔力って怖いわね……」


 周りはどうやら納得したようだ。

 すると、私はなんか不思議な魔力を感じた。この教会になにかあるな? 今一瞬だけ不思議な魔力を感じ取ったが……。

 私はなんか嫌な予感がすると思い、鎖をぶち壊した。


「あ、暴れ出しましたぞ!」

「ルシファー、お前……」

「伏せていろ」


 私はこの場にバリアを張った。

 その瞬間、この大教会の建物が崩れ落ちてきたのだった。










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