第14話
私は城でゆっくりとくつろいでいると、この私の居住区に誰かが入ってくる気配があった。
王国の人だな……。推しかな?と思いながらワクワクして待っていると、違った。
「……アードロイド・エビル様ではないのか」
「がっかりしないでください! ルシファー様、助けてください!」
助けてという言葉が聞こえた。
私は何だと続きを促す。
「王都で悪魔が暴れているのです!」
「悪魔が?」
「はい……。今、騎士団総出で対応していますが、悪魔としてものすごく強く……」
「なるほど。それで私のところに来たのか」
それは一大事ですね。行ってあげましょう。
私は翼を広げる。先に王都に向かっているぞと告げて、私は王都までそのまま飛んでいったのだった。
王都上空につくと、たしかに何か暴れている形跡がある。街中で人間の背中に蝙蝠の翼が生えたような感じの悪魔が立っていた。
「あれベルゼブブじゃね?」
ベルゼブブ。
ギャラオンで登場する大ボスモンスター。悪魔族で暴食をつかさどる悪魔。他人に寄生する形で生きており、エビル公爵も寄生されかけたんだよな。
ベルゼブブがなぜここにいるのかとか疑問はあるが……。私はとりあえずベルゼブブめがけて魔法を放った。
ベルゼブブはすぐに魔法の気配に気づき、私のほうを見て驚いていた。
「堕天使ルシファー……。貴様も俺と同じ悪魔のくせに我を攻撃するとは何事だ?」
「……」
どうやら私たち知り合いみたい。私ベルゼブブにかかわったことないけど。
「どうだっていいだろう」
「……人間の仲間なのか?」
「それを知ったところでどうなる」
「ほほう、その反応は図星なのだな。あの堕天使ルシファーが人間の味方に! これは驚きだな。だとすると、俺一人では堕天使ルシファーと戦うのは心もとないな」
そういって逃げようとしていた。
私はバリアを張り、逃がさない。バリアはこういう進行を防ぐ壁という役割も持てるから便利だな。
さすがに逃したら後々厄介になりそうな気がする。私のゲーマーとしての勘がそう言っている。
負けイベントではないし、勝つしかないよねぇ。
「ここから出ていきたくば私を殺すことだ」
「……貴様は本当に規格外だよ」
「ふん。おとなしく降参するのならば許してやらなくもないがな。私と戦うか、降参し人間を襲わないと誓うか。選択肢は二つに一つだ」
「はっ……。三つ目の貴様を殺す、だ!」
ベルゼブブは蠅を飛ばしてくる。
私はため息を吐いた。
「残念だよ。ビッグバン」
私はビッグバンを放った。
バリアの中で、とてつもない大爆発が巻き起こる。ベルゼブブが放った蠅ごと、ベルゼブブを巻き込んで飛び切りの大爆発。
ビッグバンのいいところって使用者には効果ないってところ。爆発魔法にしては珍しく火力良し、巻き込みなしでいい性能だ。
問題は、威力が強すぎて相手にした場合簡単にバリアが割れること。私は何度もバリアを張り続け、周囲を巻き込まないようにしていた。
さて、誰に寄生していたかは知らないが……。これで倒しただろう。ベルゼブブは寄生した体の耐久もものすごく上げるから体は残っているだろうが、意識はもうほとんどない。
寄生された人は残念だがな……。ゲームの設定上、寄生された人間は死んでいることになるしな。
爆発があけ、煙を上げるベルゼブブ。ベルゼブブは完全に気絶していた。
「これでどうだ? 騎士たちよ」
「助かります……」
「ありがとうございました」
「すっげえ爆発……。アレ食らって原型あるとかすげえ」
ベルゼブブ、耐久がえげつないくらい高いからな……。
私はベルゼブブをかかえ城まで持っていく。ベルゼブブは数時間後に目を覚ました。
「お目覚めか?」
「ここはどこだ」
「私の城だ」
「……なぜ俺を殺さない」
「殺す理由が特にないからだ。それに、お前を殺すのは私としてもすごく面倒だからな。こちら側に引き込む」
「……というと?」
「お前、私の部下になれ」
「は?」
「言っておくが、敗者に拒否権はない。死にたくないのなら私の部下になることだ」
しっかりした人がいれば、エルフの村とか支えてくれそうだしねぇ。
ベルゼブブは意外としっかりしてるんだよ。二次創作でベルゼママっていうものがあってだな……。
ベルゼブブはこの大陸のラスボスの幹部だったんだけど、その生活でめちゃくちゃ世話焼きだった。ラスボスが自由奔放だったし、何もかもベルゼブブに任せていたらしい。
「拒否=死だ。どうする?」
「……わかった。いや……わかりました。ルシファー様」
「そうか。わかったのならよい。私は人間とも積極的にかかわっていくからな。敵意をむき出しにするのは許さんぞ」
「わかりました。ったく……。で、部下として何をすればよいのですか?」
「そうだな。この城の真下にはエルフが住んでいるのだ。エルフは隣の魔王軍の大陸から越してきていてな。もし、襲われそうになったりしたら守ったりするのだ。私はここ、留守にしがちだからな」
「はぁ」
「給料は……私は金などないからな。出せないが」
「……わかりましたよ。ルシファー様。しばらく給料はよろしいですし、なんとなく考えが読めました。ルシファー様……もしかしてこの土地に国を建てるおつもりでしょう?」
「よくわかったな」
「なんとなく想像できますよ」
私は国を建てたいと思う。
だって何もないのは嫌だしな。国といってもフレズベルグ王国ほど広い土地でもないし、本当に貴族の領地みたいな大きさだしな。
ワーデル帝国が滅んで、まるまるルシファーのものとなったわけではなく、この城付近の土地だけでいいといって、ほかはまだ誰も所有者がいない土地。
周りはルシファーが持っていると思っている土地なのだが、私としては正直そこまで広さはいらない。
これ国ってより町っていう規模なんだけど。まぁ、なんでもいいや。
「私は国を作りたいなんて誰一人にも言っていないが」
「私がルシファー様であったのならと思って考えてみたまでです。それで、どういう国にするつもりなのですか?」
「そうだな……。エルフ、堕天使、悪魔と来たからな。異種族でも普通に過ごせる国、か?」
「異種族でも……ふむ。なぜそのような考えに?」
「差別されるのは厳しいからな」
「そのような理由ですか」
あとは単純にそう謳っておけばいろんな種族をこの目で見られる。ファンタジーの定番といえばエルフのほかにドワーフとか。ケモミミはやした獣人とか。もう、そういう種族がたくさん見たい。ファンタジーを浴びたい。
これはもう本当に私のキモすぎる願望なので言えないが。
「ま、わかりました。ではまず、建国の宣言はいたしましたか?」
「してないな」
「……国の名前は?」
「決めてない」
「いろいろ課題がありすぎでしょう」
うん知ってる。
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