第13話

 私がこの世界に転生して一ヶ月が経過しようとしていた。

 私を恐れていた王都の民、助けを求めて来たエルフ。みーんな平和になってる。私って実は平和の象徴だったりしない?


 そんな平和の中、私はある問題に直面していた。


「……暇だ」


 退屈という問題がついてきた。

 テレビもねえ、ラジオもねえ、車もそれほど……車は一台も走ってねえ。おらこんな村嫌だ……。

 というかこの世界、娯楽が少なすぎる。ミニゲームとしてあったチェス、オセロはあるがそれくらい……。


 狩猟を趣味にしてもいいがほぼワンパンで仕留めてしまう。面白さがない。野生動物との駆け引きとかそんなのなくなるんだよこんなめっちゃ強い身体だと!


 かといってじゃあ国一つ滅ぼしに行くかーって決めたらそれは人類の敵だし、魔王討伐に行くかーって言っても隣の大陸に行くのはすげえ面倒だし。つーか場所知らないし。


 異世界に来たってヒキニートだった私はそこまで冒険しねえんだよ。たしかに異世界って聞いてワクワクしたけど。

 七つの大罪ではルシファーは傲慢。だが、今の私は怠惰。ベルフェゴールと改名した方がいいか?


「仕方ない……。王都に遊びに行こう」


 異世界来てさっそく暇で詰みかけるのはダサい。

 私は翼を広げ、空へ羽ばたく。道中、サタンバードというSランクの魔物に遭遇したので軽く捻り、サタンバードを抱えながら王都に向かった。


 私はまず冒険者ギルドの扉を叩く。


「あ、ルシファー様。いかがなされて……」

「道中倒して来た。換金しろ」

「えーと……サタンバード! ついで感覚で倒されるってさすがというか……。わかりました。では、この素材全部で7万ゴールドとなります」

「うむ」


 Sランクの魔物狩るのは金的に効率がいい。

 冒険者たちも、私に慣れて来たのか私を怖がらず酒を飲んでいる。

 その気の緩みが、悲劇みたいなことになる。

 私は冒険者ギルドを見渡すと、杖を持った女の子が屈強な男冒険者に叱られていた。

 それだけならいいが……。


「お前は本当に役立たずだな! 今までの人生何して来たんだぁ?」


 などと、生きるのを否定するような言葉。女の子の方はすでに泣きそうというか、泣いていた。

 私もそういうの聞きたくないから助けてやろうか。


「おい」

「あん?」

「うるさいぞ」

「てめえには関係ねえだろうが!」

「耳障りだ。人の分際でよく人を貶めることができたものだ。私にとっては人はみなすべからく等しいというのに」

「あぁ? 喧嘩売ってんのか?」

「あぁ。売っている。やるか?」

「……死んでも文句言うんじゃねえぞ!」


 男はデカい斧で切り掛かって来た。私は斧を掴む。

 力はあまりないが、強化魔法をかけたらなんてことない。


「まだこの私と喧嘩をする酔狂な奴がいたものだ。相当酔っ払って区別ができてないな?」

「ルシファー様! 殺すのは……」

「わかっている。子守唄」


 私は子守唄を発動させ、男を眠らせた。


「こいつが壊したテーブルだから、こいつから金をもらえ。それに、私の前で誰かを貶めるようなことを言うな。聞いていて不愉快だ」

「りょ、了解です……」

「大丈夫か?」

「あ、ありがとうございます……」

「感謝されるほどのことではない。お前も嫌だったら逃げたりなんなりとしろ。逃げるのは悪いことではないぞ」


 人の悪口とか聞いて楽しめるような性格はしてないんだよね。私の悪口だったら大体正当な悪口だから笑って流すんだけど。反論したところでヒキニートだからで論破される。


「で……なぜ怒られていた?」

「魔法が……うまく使えなくて」

「そのことか……」


 魔法は私はもうなんとなく感覚で理解はした。私って順応だけは早いのよ。

 普通死んだこと認識したら数日は取り乱しそうなもんを転生したんだ、以上、で済ませたようなもんだし。


「魔法は感覚をつかめば使えるようになる。魔力の流れをまずは認知することだ」

「ええっとぉ……」

「目を瞑り、自分の中になにかが流れてる気配があるだろう?」

「え、はい……」

「それが魔力だ。その魔力を手に集中させるように、魔力の流れを手でせき止めるような形で集めてみろ」

「こう、かな?」

「集まったら魔法を唱えるのだ」


 そういうと、女の子は魔法を放った。すげえデカい火の玉が射出された。


「えっ!?」

「おお、すごいな」


 私は火の玉に当たり吸収する。


「え、出せた!?」

「これが魔法だ」

「すごい……。る、ルシファーさん、ありがとうございます……!」

「気にするな。それより、他の魔法使いのみんなも使い方は間違ってる可能性もある。今の説明を旨にやってみた方がいい」

「「「「「はい!!!」」」」」


 魔法使いの人たちが一斉に返事を返した。


「ルシファーさん、魔法講座出来るんですね」

「当たり前だ。私は魔法で戦ってるのだぞ」

「あの隕石も魔法ですか?」

「みたいなものだ」

「へぇ……。ちなみにあれって人間にできたり……」

「しないだろうな。人間が持つ魔力では発動できん。範囲にもよるが、魔力を結構使う」

「ですよねー」

「聖女や勇者のような……魔力量が多ければ使えるだろうがな」


 アルマゲドン、私は堕天使の種族効果でMP消費量抑えてるから連発できるけど普通に使うとしたら私のMPでも4分の1もってかれる。


「魔法なら教えられる範囲でなら私が教えてやる。私が教えれば貴族学園で習った貴族たちにも負けんぞ」

「うおっしゃあ! ルシファーさんに教えてもらえるんならぜってえ強くなれる!」

「よろしくお願いします!先生!」

「ああ」

「いいんですか?」

「構わん。暇だからな」


 暇つぶしできる。








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