第11話
私の喉元に剣を突きつけてくる女。
コウモリのような羽が生えており、人間ではないことは一発で分かった。
人間の街にはこんな種族のやつはいない……となると。
「魔王軍か」
「ご名答〜! よくもうちの可愛い子ちゃんたちを殺してくれたわねぇ〜?」
「なんだ? 殺しに来たのか? 弔い合戦か。魔王軍のくせに人間みたいなことをするのだな」
「違う違う。勧誘しに来たの。魔王様の命令で♡」
「勧誘というにはいささか話をする構えではないようだが?」
私は剣の先っぽを手で握りしめる。この程度でこの体は傷つかないようだった。すげえ頑丈。
「ごめんなさいねぇ。どちらが優位か……わからせなくては交渉にならないと思って」
「そうか。だがハッキリしているだろう? 私が優位だと」
「魔王様の強さの足元にも及ばないやつが優位? 笑っちゃう冗談ね」
「あの程度の輩を王都に進軍させる魔王の強さも知れたものだがな」
私がそういうと、女は剣で切り掛かってきた。
私は受け止め、顔を鷲掴みにして自分に強化魔法をかけて思い切り地面に叩きつける。
「弁えろ」
「ぐっ……。魔王軍四天王の私が一撃もらうなんて……」
「一撃どころではないがな。ここで殺しても構わんのだぞ」
女は身動き出来ない様子だった。
「それに、勧誘ならお断りだ。わざわざ四天王という弱いやつではなく魔王直々に来いとでも伝えておけ」
「あんたら! やって……」
「闇魔法、ブラックホール」
ブラックホールが、敵達を飲み込んでいく。
敵はすっかりいなくなり、私が取り押さえている女だけとなった。
「……私の部下は?」
「ブラックホールに飲み込まれて分解された。こうなることがわかってやってきたのだろう? 貴様も酷いことするな」
「あんたがやっておいて……!」
「黙れ。朝イチで押しかけられて気分が悪いんだ。お前を帰してもいいが、人間のためならばここで殺しておくほうが賢明か」
私は右手に魔力を込める。
この女、鑑定してみても私よりめちゃくちゃ弱い。魔法耐性はそれなりにあるようだが、カンストしている私にとっては差がありすぎる。
「弱い」
「誰が……!」
「実際問題そうだろう? 自信満々にかかってきた挙句、返り討ちにあっている。貴様は私にダメージを与えられたか?」
「……申し訳ありません、魔王様。私は」
私は光魔法を唱えようとした矢先だった。
突然目の前に人が現れて、顔面に蹴りを加えられようとしていた。私はバリアで防ぐ。
「だから舐めてかかるなって言ったでしょ。相手はあの堕天使ルシファーだよ」
「魔王……様……」
「交渉は決裂か。うちの可愛いラミアちゃんを離してもらおうか」
「無理だな。喧嘩ふっかけて来たのはこいつの方だ」
「ま、魔王様……!」
「今助ける!」
魔王は闇属性の力を纏い、私に攻撃を仕掛けてきた。
闇の引力で相手を吸い寄せて大ダメージを与える。魔法も使えるみたいだが、ラミアという女を巻き込まないために使えないのだろう。
「…………」
私は防ぎもせず攻撃を受ける。
魔王は私に触れると、勝ちを確信したのか笑う。が。
魔王自慢の攻撃は出なかった。
「……?」
「私に魔法や属性攻撃は一切効かないが。純粋な殴り合いでしか私は倒せんぞ?」
「こいつ……!」
全属性吸収だからむしろ回復します。ありがとうございます。
やり込んだ甲斐があるねぇ。魔王は闇属性特化型のようで殴り合いではバフも何もかけられないので、私を倒すのに時間がかかるだろう。
「その顔いいぞ。いい絶望の顔だ」
「なんだこいつ……。俺よりラスボスじゃねえか」
「そりゃどうも。こいつは帰してやる。殺さないからとっとと失せろ」
私は女を投げて渡すと、魔王は撤退だと言い残し転移魔法を使ってどこかに逃げた。
ふん。口ほどにもない。魔王はその気になれば倒せることが確信できた。
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