第10話

 私の人生幸せすぎる。

 推しが王都を案内してくれていた。


「その……なんだ。俺はあんたのこと……誤解していた。本当にすまない」

「気にしないで! あなたが生きてるだけで幸せだから!」


 幸せ〜、幸せ〜。

 私がウキウキ気分で歩いていると、おもちゃの剣をもった男の子がルシファーだ!と言って切り掛かってきた。


「覚悟おおおおおお!」

「ふん。お前にこの私が倒せるか?」

「でやあああああ!」


 おもちゃの剣が私に当たる。

 痛くもなんともないが……。


「ぐっ……。こんな子どもにやられてしまうとは……無念……」


 と、演技で倒れてみた。


「や、やった! 堕天使ルシファーを倒したー!」


 男の子は浮かれ気分で走っていった。

 私は土埃を払いつつ立ち上がる。


「優しいんだな」

「まぁ、生きてることはすぐバレるけどねぇ。夢を見させるくらいはしてあげるさ。本人は今はルシファーを倒したヒーロー気取りなんだから邪魔するのもね」

「そうだな」


 子どもは純粋で可愛いねえ。

 私にも姪っ子がいてよく世話してたけどお母さんの視線が痛かったなぁ。引きこもりクソニートになってはダメだって姪っ子に言ってた。いつしか姪っ子が私のことを悪意なくクソニートと呼んでくるようになった。

 姪っ子にはクソニートはあだ名じゃないことを伝えてあげたほうがよかったと思う。


「もう、夕方だな。案内ありがとう。私は城に帰ります。また、会いましょう!」

「ああ。またな」


 私は翼を広げ、城へ向かうことにした、

 堕天の居城。私一人しか住んでない城……。あんな土地が広いのに私一人で住んでるというのももったいない。

 どうにか活用できないものか。あそこは私の魔力が充満してるから魔物も寄り付かないし……。


「村でも建てて移民を募るか? だとしたら私が一番偉い人をやらなくちゃいけなくなるけど面倒だしな……」


 そういうリーダーは面倒だからやりたくないし、かといってこの余った土地をどうにかしたいし……。誰かを王に仕立て上げるか?

 私が前に立たないでのんびり暮らし……。いや待て待て。誰を立たせる? 寝首をかかれたくはないから信頼してる人がいいが。


 私が悩みながら飛行しているともう城についてしまった。

 まぁ……悩んでいても仕方ないか。私は異世界に転生してきたばかりだし、ゆっくりと眠って明日から考えよう。


 私は玉座に座り、目を閉じる。

 なんでこんな世界に私はいるんだろうなー……。事故に巻き込まれて死んでこの世界に……。いや、まぁ、私は願ってたよ? 人生なげえしハードモードだから人生イージーモードになりたいって。今も割とハードだけども。

 日本の文化恋しい……。ネット、スマホ、一切ない! この世界に友達いない!


 くっ、ネットがないと私の禁断症状が……。


 この世界は植物状態になった私が見てる夢という説はないだろうか?

 剣で斬られても痛くなかったしその可能性が……。いや、数値受けできてるだけでダメージがほとんどないからやろなぁ。


「インターネッツやりてぇ〜」


 私はそう溢した。

 そして、いくら時間が経っただろうか。


 私が目を瞑っていると複数の気配が私の目の前に現れている。

 何事だ?と思いつつ目を開けるとそこには、扇状的な衣装を見に纏った女が剣を私に突きつけていた。










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