第9話
私はフレズベルグ王国の王城内に招かれた。
国王と話をすることになった。会議室に入ると、国王が先に座っている。
「ようこそ。フレズベルグ王国の会議室へ」
「ふん」
私は椅子に座る。
いやぁ、堕天使の威厳を保つためにロールプレイングしてるとはいえ、こういう尊大にふるまうの慣れないなぁ。
「まずは王都を守っていただいたこと、感謝する」
「当然だ。頼まれたからな」
「ルシファー殿は我々人間と戦う様子は見られない……。そのことを前提に、なぜワーデル帝国を滅ぼしたのですか?」
うーむ。それ私も知らないんだよな。
ここで知らないって答えてもとぼけてると思われそうだしな。詭弁を振るうか。適当にでっち上げとけ。
「ワーデル帝国が私を召喚したからだ」
「ほほう?」
「堕天使は分類上悪魔の分類だ。悪魔は契約が破られた際、対価をもらう」
「……つまりワーデル帝国は」
「そうだ。国王が対価として国を差し出したにすぎん」
わかんないけどね?
適当にそれっぽくでっち上げてるだけだけどね?
「契約を破ったワーデル帝国の自滅……ということになるのか」
「そうなるな」
「どんな契約をしていた」
「忘れた。とうの昔のことだからな」
これでうまくごまかせてるといいんですけどね。
「そうか……。わかった」
「話は以上か?」
「ああ。今回は王都を守ってもらったお礼をしたかっただけだ。それに……ワグナリアから話は聞いている。人間と親交を深めたいのだということもな。私からも触れ回っておこう。少なくとも騎士たちは剣を向けることはないように」
「助かる。では私は行くぞ」
私は椅子から立ち上がり、王城を後にしようとすると。
「……もしかして人間と親交を深めたい理由はアードロイドが原因じゃないですか?」
「なに?」
「アードロイドが彼女に手当てされた際、告白されたと……」
いや、しましたけど。しましたけどそうじゃなくて。
孤独が嫌だから……。
「……ルシファー殿。本気でアードロイド・エビル公爵が好きなのか?」
「……黙秘だ。他人の恋に首を突っ込むのはよいことがないぞ」
「……ほほう? なるほどなるほど。それは人間と仲良くなりたいと思うようになりますなぁ」
「…………」
国王、あんたもしかしてこの手の話題好きな感じ?
「わかる。好きなやつのためにはどんなことをしても仲を縮めたいよな。あのアードロイドだ。品行方正で正義感が強いやつが好きならば……人間と親交を深めておいて損はない」
「…………」
「大丈夫だ。私は異種族の恋も理解がある。結ばれるように私からも手配を……」
「……してくれるな?」
「ええ、協力致しましょう」
私は国王様と握手をした。
国王様が私と推しの恋仲を応援してくれるというありがたい話はない。あまりにもめちゃくちゃ偉い権力を持った国王様だ。安心感が半端ない。
「あの、国王様……。さすがにそれはやりすぎでは」
「あのルシファーでさえ純情な恋をしている! それを応援しないバカがどこにおろうか!」
「そうだ。私はあくまで純粋な恋心だ。それを応援しないやつは私が処す」
「この二人なんかおかしいーーーーー!」
すると、ノックする音が聞こえた。
入れと国王が告げると、そこには。
「推しーーーーーーー!?」
「国王様お呼びで……。ルシファー殿も来ているのか」
「ああ。ちょうどいい。お前、ルシファー殿に王都を案内して差し上げろ」
「えっ、俺にはまだ仕事が……」
「仕事は団長にやらせればよい! ほらほら、国のためを思ってルシファー殿に案内して差し上げろ!」
「ああ。私がアードロイド殿に案内されなかったらこの国がどうなるか……」
「怖い脅しやめろ! わかった! わかりましたから!」
私は見事推しに王都を案内してもらうことになった。
「アードロイド・エビル公爵殿。私は貴殿と付き合うまでアプローチをしてやるぞ」
「厄介なのに目をつけられた……」
異世界転生したんだから夢を見させてくださいませ。
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