第6話

 良いことをすると気持ちがいいというのはあながち間違いじゃないようだった。

 王都の教会前に行くと、前に怪我を治した女の子がいた。


「天使さん、また会えた!」

「ああ」

「天使さんに会いたくて毎日ここ来てるんだー! シスターさんとも仲良くなったんだよ!」

「そうか」


 この女の子は私にまた会いたくて教会に通っているようだった。

 子どもってなんて無邪気……。汚れてしまった世の大人達にこの清らかさを見てほしい……。


「あの……」

「母親の方も来たのか」

「え、ええ。私もなんとなく、わかるんです。ルシファーさんは悪い人じゃなさそうってこと」

「…………」


 嬉しくて泣きそう。

 

「そう、か」


 人助け、マジ大事。

 私はこの子のお母さんから少し話を聞くことにした。この子はマリーという名前で、上には姉がいて王都の貴族学園に聖女として通ってるらしい。

 聖女。たしかにわかる。だって優しいもんな。母親も。


「天使さん、これあげる!」

「これは?」

「うちのパンだよ! うちパン屋さんなの!」

「そうか」


 パンをもらった。

 少し硬いが……。でも美味しい。


「美味い」

「そう言ってもらえると嬉しいです〜」

「このパンはシチューにつけても美味いかもしれないな」

「……その話詳しく」

「やったことないのか? 食べ終わって汚れがついたシチューの皿とかに少し茶色い焦げ目をつけたパンで汚れを掃除するように拭いて食べると美味いぞ」

「へぇ! そうなんですか! では今晩はビーフシチューにしようと思います!」

「ビーフシチュー!? やったぁ!」


 ビーフシチュー美味いよな。わかる。


「さて、そろそろ人が来るだろう。私は帰るとする。またな、マリー」

「うん! 天使さんバイバイ!」


 私は翼を広げ、城に戻る道中に、負傷した仲間を抱える冒険者の姿が見える。

 だが、戦っていたであろう魔物がすぐに追いつき絶望していた。あれは……エレメンタルウッド……。Sランクの魔物だな。


 私は闇魔法を放ち、エレメンタルウッドを倒した。レベルはカンスト済みなので経験値が入らない。


 私は冒険者達の前に降り立つ。


「ルシ、ファー……」

「もう戦える気力がねえよ……」

「俺たち、ここまで、か……」

「私を……置いてって……。足手纏いに…なる……」


 と、この世の終わりみたいな顔をしている。

 私はため息をついて、手をかざした。


「無茶をするな。自分の実力に合った相手を選んで戦え」


 私は天使の施しをかけてあげた。

 女の傷がどんどん回復していく。折れ曲がっていた手が元に戻り、今にもちぎれそうだった足が引っ付いた。

 うーむ。怪我の酷さによって消費MP変わるのか。


「え、あれ、回復……?」

「え、は?」

「なんで……?」

「私は人間の味方になることにした。お前らも怪我してるのだろう。見せてみろ」

「あ、ああ」


 ガタイのいい戦士風の男が手を差し出してくる。折れているな。

 私は天使の施しをかけてあげた。


「あ、ありがとう……」

「お前は?」

「お、俺はそこまで怪我してないから……」

「少しでも怪我をしているのなら治せるうちに直しておけ。傷の一つで調子が変わる」

「お、おう……」


 私はリーダーらしき人にも施しを。


「エレメンタルウッドの素材はお前達が持っていけ。私はどうせいらないものだ」

「あ、ありがとう!」

「ありがとうございます……。る、ルシファーさん、助かり、まし、た」

「ふん。今度は怪我しないよう気をつけろ」


 私はそう言いのこし城に戻ったのだった。

 かっくいー。今の私かっくいー!








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