第5話
推しからなぜ私が悪者か聞いてみた。
帰ってきた答えは、私がワーデル帝国を滅ぼしたらしい。ワーデル帝国はあまりよくない噂もあったが、国一つ滅ぼせる力となるとそりゃ誰もが危惧する。
「なるほどぉ。記憶が全然というか……。マジでやったのか私」
ゲームだと既に滅びてるんだよな。
ワーデル帝国は滅びて100年は経過してるようで、私は余裕で100歳を超えてるみたい。
うーむ。転生する前には結構厳しい性格がこの身体に宿ってたんだろうか……。
ルシファーのアバターを作ったのは5年前くらいなのに。
「監視役が推しではないとやる気出ないな……」
推しは流石に監視役にはなれなかったらしく、私の監視には騎士団副団長がついていた。
実力者とはわかるのだが……。推しですら私の体に剣をめり込ませる程度だったしな……。バリアとか貼れば余裕なんだよな……。
「暇だな。ワグナリア殿。なにか暇つぶしはないか?」
「なら魔物の討伐しては?」
「討伐かぁ」
この私のアバター、強すぎて雑魚敵は大体ワンパンで沈むからつまんねー。
正直言って、ネトゲとかこの世界にないし、もう働くか学校行ってみたい。中学とか3年間行ってないし、高校生の年齢になっても引きこもりクソニートだったし。
というか、金が欲しい。
所持金ないんだよな。表示されているのは0G。ゲームだったら900万くらい溜まってたんだが……。ここはもう現実の世界だしな。
「なぁ、私が王の護衛とかしたらいくらもらえる?」
「そもそもあなたは危ないので王には近づけさせません」
「いやいや。フレズベルグ国王一族は勇者の一族であろう? 実力はあるはずだ」
「なぜ信用がない敵を王に近づけなければならぬのですか?」
「……はぁ」
護衛なら楽チンだと思ったのに。常時バリア貼ってればいいしいざとなったら天使の施しというスキルで回復できるし。
まぁ、ワグナリアさんが言うことはもっともなんだよな。
「暇だ。王都の子供達に私の魔法を教えるのはダメなのか?」
「ダメです」
「そうかぁ」
なら魔道具だ…‥と言いたいけど魔道具はわかんないんだよねぇ。
魔法ならなんとか教えられるんだけどぉ。うーむ。楽して金を稼ぎたい。
「仕方ない。金を稼ぐのならまずは体を動かせということか。なにか土木関係であるか? 破壊のほうなら楽だからそちらがいいが」
「ないです」
「……私は何をすればいいのだ?」
「人間に関わらないことです」
そんなぁ。
人と関わらないのなんて私死んじゃう。寂しくて死ぬ。いや、ニートだったから割と平気なんだけど。でもいざガチで切り離されるのは嫌になるよね。
「……っし、ではまず人間と仲良くなるために人助けをしよう!」
私は翼を広げ、監視役を引き離した。
人助けをするのだ。私は空を飛び、困ってる人がいないか探していると、行商人の馬車が魔物に襲われている。
私は闇魔法を唱え、魔物を倒した。そして、行商人の前に姿を現す。
「大丈夫か?」
「ルシファーだ……。ひ、ひいいいい!?」
「逃げられた。馬車忘れてるけど……」
せっかく助けてあげたのに。
うーむ。信頼関係が0からどころかマイナスからスタートなんだよな。ルシファー=悪という認識が強い。
私は仕方ないので、やれることをまずやる。
やれることといえば。
「神様、どうか好かれますように」
神頼み。
教会の前に行って祈りを捧げた。が、何も起きない。神は見放している私を。堕天使だから見放されてるのは当然なんだけど。
「天使さんだ!」
とてとてと駆け寄ってくるのは女の子。親は顔を青ざめさせている。
女の子は私をみて面白半分で近寄ってくるが、大きく転けてしまう。そして、足を擦りむいたのか、ワンワン泣き始めた。
「痛い〜!!」
「に、逃げるわよ!」
「逃げなくても良い。傷を見せてみろ」
私は女の子の頭を撫でる。
「痛いの痛いのとんでいけ」
血が出てる。私は傷口に手をかざし、天使の施しをかけた。
血が止まり、女の子は。
「痛くなくなった!」
「だろう? 傷一つで泣くな。強くなれないぞ」
「うん! 天使さん優しい〜!」
「あ、ああ、ありがとうございます……?」
「あ、ああ。お嬢さん。今日から、気をつけて走ろう。つまづいたりしたら、今度は痛いの飛んでいかないかもしれない」
「うん!」
私は子供を撫でる。
私にもこんな可愛い時期あったんだよなぁ。引きこもりクソニート前はこんな可愛かったんだよなぁ。
それに、母親の方も私をみて及び腰にはなっているが、私が傷を治したことにまだ戸惑いを隠せていない。
「では、さらだばー」
私は翼を広げ飛び上がる。
怪我を治す仕事か。天使の施しで全て治せるし楽でいいよな。
魔力もたくさんあるし。堕天使ルシファー、もとい戦場の天使ナイチンゲールにまずなってやろうかな。
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