第十話 守る

「ったく、使えねぇ奴隷メイドだなぁ」


 ご主人の口癖は、いつもそれだった。

 ご主人の命令は何時でも絶対。何があっても守らなければならない。

 『殺せ』と言われれば殺すし、『死ね』と言われたら死ななきゃ行けない。

 そして失敗すると怒鳴られて殴られて蹴られて……

 毎日が物凄く長く感じた。

 1週間が経つのが1ヶ月位に感じた。

 1週間に1度、木曜日って日にいつも腹痛がする。頭が痛くなる。

 そんな時も、ご主人は看病なんてしてくらなかった。

 腹が切れそうな位の腹痛も、全身が暑くなったり寒くなったりしても、『我慢しろ』と言われ続けた。

 そして突然、プツンと何が切れる音がするとまた月曜日に戻ってた。ベッドで寝ていた。

 そのサイクルが戻っていた。


          *


 褒められるのが好きだった。いつも何かをするとお母さんに褒められるのを毎日の楽しみにしていた。

 今日も今日とで朝早くからお父さんが木こりへ向かった。

 それから、お父さんが帰ってくる事は無かった。


「おとおさん、いつかえってくるんだろ〜ね〜」


 そう聞くと、お母さんはにこりと笑って返事をしてくれた。


「んー、ミーシャが良い子にしてたら帰って来てくれるよ、きっと」


「わかった! じゃあみーしゃいいこにしてる!」


 そして、お母さんとお父さんを待ち続けて5時間、お父さんは帰って来なかった。


「おとおさん、まだかえってこないね」


「そろそろ時間かしら」


 もし、お母さんとミーシャの能力が一緒ならば、お母さんは馬鹿だと思う。

 お母さんはなんで逃げなかったのだろうか。

 戻れるのであれば、戻りたい。でも、戻れない。

 あの後、お母さんの言葉を聞いて私はお父さんを探しに外へ出た。

 数分後、首のないお父さんの遺体を見つけた。


          *


 私が走って家に帰ると、家には顔が真っ白になり、腹が裂けたお母さんの遺体があり、次の瞬間意識が飛んだ。

 

          *


 それからというもの、奴隷と言う生活を送っていた私は初めて彼に会った。

 『ソウマ コミヤ』。それが彼の名。

 初めて、奴隷である私に優しくしてくれた人。

 初めて、奴隷である私を撫でてくれた人。

 初めて、守りたいと思った人。

 これが25回目。次こそは守り抜いて見せる。

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何でも願いが叶うと聞いたので、異世界転移を頼んでみた。 無名の猫 @mumeineko

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