第九話 勝利と言う名の方程式

「無差別殺傷事件の犯人って言われても、足は着いてるんですか?」


 俺はラヴィンに向かってそう聞く。


「ああ、ほんならあるで? なんならアジトの場所まで知っとるが」


「マジかよラヴィン優秀かよオイ」


 そう本心をそのまま言うと、ラヴィンは少し頭を搔く。


「そんなそんな。褒めても何もでぇへんで?」

 

 どうやら、嬉しかったらしい。

 対するミーシャは、ずっと俺を抱きしめて離さない。可愛い。


「今日は調査とかに行くんですか?」


 アジトに強行突破なんて、そんな事できる訳無……


「ほな、強行突破や。今日攻めるんやで?」


 マジかよ。


          *


「ここがアジトや」


 そうやってラヴィンが指指したのは、土だった。


「これってただの土じゃ……」


 俺が何か言おうとしている所、ミーシャが被せて言う。


「ご主人、違う。これ、地下にある」


「ご名答」


 ミーシャがそう言うと、ラヴィンは指を「パチン」と鳴らし、ミーシャを指差す。

 次の瞬間、扉が開いたらしく地面にパカリと四角形の穴が空いた。


「ご主人、行こ」


 そうして、俺達は階段を下って行った。


          *


 うう、暗い。

 ギリギリ松明で光は確保出来ているが、それでも暗い。

 ラヴィン行くの早すぎだって……

 ミーシャはずっと俺の裾を掴んで離さない。可愛い。

 不意にラヴィンが止まった。

 数秒後、ラヴィンがこっちを見る


「伏せろ!」


 次の瞬間、「パァン!!」と大きな音が鳴る。

 するとラヴィンの腹に穴が空いた。


「っ!」


 ラヴィンは腹を抱えて蹲る。


「ラヴィンさん!」


 俺が駆け寄ろうとすると、ラヴィンは手を広げ、こちらに向ける。


「大丈夫や。こんぐらい、ポーションでどうにかなる」


 そして、ラヴィンの手には青色の液体が出現する。

 ラヴィンがその液体を傷口に掛ける。

 するとラヴィンの傷は、みるみる治っていく。

 ポーションでどうにかなるってこの事か。

 ラヴィンの傷が治ると、ラヴィンは先程打ってきた相手に向けて石を投げる。


「これは応用や! 触れた物なら30秒間自由に錬金する事が出来るんやで!」


 ラヴィンが投げた石は、いつの間にかナイフに変わって居た。


「ぐわっ!?」

 

 ナイフが相手に刺さる。

 そしてラヴィンは追い討ちなのか、更に石を投げる。

 勿論、次の瞬間には全てナイフに変わる。


「トドメや!」


 何処からか剣が出て来て、その剣を使って相手の首を切った。

 それまでの時間、わずか10秒。


「やった……のか?」


 ラヴィンが使用した剣はいつの間にか飴になっており、ラヴィンはそれをぺろぺろ舐めている。


「終わったで。見た感じ、相手は1人だけやったし、ワイらの完全勝利や!」


 呆気なく、終わった……。

 まぁ、悪い事では無いのけれど。まぁ。もっと時間を掛けて倒すとか、展開が早ぇよ。


「今日は解散や。お疲れ」

 

 本当に、呆気なく終わった……


         *


「ご主人、一緒に寝よ」


 その日の夜、ミーシャがそう俺に向けて言う。

 ミーシャと寝るのかぁ。

 え? ミーシャと、寝るの? え?

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