第七話 因子操術

 ループ4回目。ループ回数で言えば5回目。

 ご飯を食べる。……で、情報収集の為に冒険者ギルドへ向かう。

 

「ご主人、なんかゆっくりしてるね、今日」


 ループして気づいた事が2つある、人の行動は大体同じ。

 だが、ミーシャが少し例外。毎回行動パターンが違っていた。

 同じ対応をしても、違う形で返事が帰ってくる。

 もう1つ、時間は戻らない。

 最初のループが朝だったが、2回目のループは昼。3回目は夜で4回目(今回)は朝スタート。

 まだ5回目。回数制限が無いと確定したわけじゃ無いから慎重に……いや、まず何がトリガーでループが行われているかを確認する。

 

「ミーシャ、俺に抱き着いてみてくれ」


 ミーシャとの接触がトリガーと仮定。


「ご主人……? まぁ、良いですけど」


 結果、ループなし。

 じゃあ次、握手。

 どっかのリベンジャーズ見たいなループ方法だが、あれは時間だけ。こっちは状況だけ。でももしそれがトリガーだったら、マリン(女神)を訴える。


「じゃあミーシャ、握手」


「ご主人、何か企んでます……?」


 結果、ループ無し。

 いや、そもそも5回が限界だったりすることもあるか。

 こんなんで5回使い切っちゃった感じ!? 不味いじゃん! 不味いじゃん!!

 いやまだ、1日の回数制限があったり……


         *


 しませんでした。

 1日経った今でも、ループは使えん。

 ペナルティとか……


「俺は!! ループをしている!」


 、と街中で叫んだら、通りがかった人に変な目で見られたり、子連れが『見ちゃダメよ!?』と、子供に俺を見せないようにしたり……教育ママすげぇ。

 対するミーシャは、『ご主人、大丈夫……?』と、若干引いていた。

 も、戻りたい……


「お、なんか面白い事考えてる奴居るやん」


 あの後街中を歩いていると、白髪のイケメンに話しかけられた。


「!?」


 急に話しかけられたので、少しばかり俺は驚きを隠せない。

 対するミーシャは……めちゃくちゃ警戒していた。

 毛を逆立たせ、警戒を行う。


「すまん、すまんて。驚かせる気はちぃ〜っとも無かったんやけどなぁ」


 そうやって白髪のイケメンが話を続けて行く。


「っあ! 申し忘れたわ。ワイは、ラヴィンと申します。一応、探偵やってますぅ」


 ら、ラヴィン? 


「あ、ああ。よろし……」


「あんた名前は?」


 そう言ってラヴィンは、ミーシャの手を取る。

 早い……!

 目で、見えなかったんだが……!

 さっきまでそこで立ってたのに……


「え? あ、ん?」


 そしてミーシャはかなり同様していた。

 ミーシャ、意外と人見知りな所あるから、代わりに俺が説明してやろ。これでも一応教育係だし。


「っあコイツはミーシャっていい……」


「お主には聞いて居らん。失せろ」


 途端に空気が重くなる。ラヴィンの凍てつく視線により、俺は動かなくなっていた。これが蛇睨み、か。


         *


「ミーシャはん、ここがワイの探偵事務所や。どうぞカチカチせぇへんでええで?」


 ラヴィンの探偵事務所に着いた。

 さっきの1件があり、俺は何一つ言わなくなった。


「しゃーなし、ワイの能力を教えてやるわ」


 ラヴィンが勝手に話を進めていく。


「ワイの能力はなぁ。能力だけ言っちゃえば、『因子操術(パティクルメネプリーター)』って言うんだ」


 ぱぱぱ……パティクルメネプリーター!?

 何それかっこいいけど……能力が、わかんねぇよ!


「ちょっと、難しかったんかいな? じゃあ、教えてやるわい」


 らしい。

 能力、かぁ。

 まだ転移して3日経ってるか経ってないか分からんが、序盤でつよつよ能力とかはやめてよ……?


「因子操術。その名の通り、因子を操れるよ」

 

「……と、言うと?」


 ミーシャが質問する。


「すまない、この話はまた明日じゃ無理かなぁ? ほら、お客さん来ちゃってるし」


 ラヴィンがそういうと、後ろから扉を開ける音が聞こえた。


「ラヴィン様、事件解決をお願いします」


 そうやって出てきたのは、お団子結びで髪を縛ったメイドだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る