第四話 今日も平和だね
「ご主人」
宿から出た後、散歩をしていると突然、ミーシャが話しかけて来た。
散歩っつっても、武器屋に行く位だけれど。
「ん? どうした、ミーシャ」
「ご主人、ミーシャの事愛してくれるんだよね?」
愛してくれる……ああ。愛すけど? 愛でるけど?
「ご主人、全然愛してくんない、愛でてくれない」
そう言いながら頬を膨らませる。
可愛いから辞めて? そんな可愛いミーシャには究極の愛を授けるぅー!
「ミーシャは可愛い、可愛い!」
そう言いながらミーシャを撫でると、ミーシャは「ミャー」と言いながら笑顔で上を向いた。
やっぱり猫なんだよな……ミーシャ。
「ご主人、キスは駄目です……赤ちゃん出来ちゃうから……」
そう言い、上目遣いでこちらを覗く。
あれ? 一言もキスなんて言ってないけどなぁ。
で、でも「チュ」で赤ちゃん出来ちゃうって言うミーシャはやっぱ子供だなぁ。
「えっ!? なんでそんな事知ってるの!?」
わざとミーシャが難しい事知ってる風に言う。(褒める為)
「お父さんとお母さんから教わった! ミーシャ偉い! ミーシャ天才!」
俺の手の中に頭を収めていたミーシャは、自慢げに腕を組んでいる。自信過剰可愛い。
「そうだなぁ〜、ミーシャは頭が良いなぁ〜!」
「そうでしょそうでしょ! もっとミーシャを褒めて!」
なんか俺、親バカ見たいだな。
仕方ない、ミーシャが可愛いんだから。
平和が1番……
「パァン!!」
いきなり、銃声が聞こえた。
同時に、ミーシャの胸に穴が空いていた。
「は? え?」
状況の理解ができず、俺はその場に立ちずさんでいた。
そして、ミーシャはそこから倒れる。
ミーシャの胸に、穴が空いて……血が……え?
「ご主人……様……助けて……」
「ミーシャ? ミーシャ!」
理解が出来なくも、取り敢えずミーシャを抱えて走り出す。
「ミーシャ! 大丈夫だ! まだ、大丈夫!」
「また、これですか」
その後、ミーシャが胸から吹き出る血と共に叫び、言う。
「ミーシャは……大……丈……っ! ご主人、逃げて」
「嫌だよミーシャ! なんで、なんでさ! ミーシャを見逃すなんて出来な……」
すると、ミーシャは俺の頬にキスをした。
そして、落ち着いた表情で一言。
「ご主人様……また、会いましょう。……転移」
その言葉と同時に、俺は上空に来た。下は森。木がクッションになって生きて帰れそう。
目の前には街が。何があったか知らないが、早く帰らないと……
そして、ミーシャを……
次の瞬間、目の前の街が消えた。
ドーム状に全てが消えてった。
*
「ミーシャ? 鍛冶屋のじっちゃん? 嘘発見器の博士……?」
異世界転移して早三日目。全てを失いました。
仲間も、街も、生きがいも……なにもかも……
目の前に移るのは『無』。
森から歩いて20分。何かに辿り着いた。
目に見えるのは、崖。それも凄く綺麗な。急斜面。
下を覗いても何も見やしない。
「本当に何も無くなったんだな」
と、思わず呟いてしまう。
「これから、どうしよう。ミーシャ。会いたいよ……全て、もと通りになってればいいのに……」
そうやって1人で泣いて、泣いて、泣いて……
夜には疲れ果てて寝ていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます