第三話 あさごはん
「ミ、ミーシャ?」
「うん。ミ、ミーシャって言うの」
ミーシャ。ミーシャか。可愛らしい名だな。
そう思い、ミーシャに手を伸ばす。
「ありがとな。可愛らしい名ま……」
ミーシャを撫でようとした瞬間、ミーシャは「キャッ」と言いながら逃げた。
え? キャット? 言いとる場合か。猫耳だけど。
「ミーシャ、大丈夫か?」
話しかけても反応しない。
と言うよりチェストの上でうずくまっている。 ってか、どうやってそこのチェスト乗ったの? やっぱキャット? そっか。猫か。
それから30分程待ったが、ミーシャは一向に降りて来なかった。
ので、最終兵器のアレを使ってみる。
「ん、じゃあどうだ? 気晴らしに散歩」
その言葉に反応し、チェストの上からこちらに一目散に飛び掛ってくる。
俺はそれをキャッチ(キャッチってよりかはお姫様抱っこだけど)すると、ミーシャは親指を立ててこう言った。
キャッチ? キャット? もうこのくだりは良いか。
「散歩!! ご主人、それはグッド」
グッド? グッド……っあ! 下から読むと『ドッグ』だぞ!? 言いとる場合か。
よく見ると、尻尾がゆらゆら揺れている。
、お、仲良くなるきっかけ見つけたぞ? 骨投げたら取ってくんのかな? 無いか。
*
「ミーシャ、何か食べたいものは無いか?」
宿の食堂似て。
人がワイワイしている中、俺が注文を決めたのでミーシャにそう聞くと、ミーシャはブンブン頭を振った。
「大丈夫、ご主人が決めて……」
ご主人が決めて。ねぇ?
困る。『ご飯なにがいい?』って聞いて、『何でもいいよ』って答える時くらい困る。
じゃあいいや。コレで。
俺が手を挙げ、店員を呼ぶ。
「いらっしゃいませぇ〜? ご注文は如何なさいます?」
店員が手ぶらでこちらへ来たので、とりあえず注文を行う。
「ここのハンバーグと、このお子様ランチをお願いします」
俺がそう頼むと、店員は自分頭を人差し指で押した。
お? 頭痛か? ここ仕事なんだぞふざけるな?
、と思ったが違うらしい。どうやらテレパシーらしい。異世界スゲェ。
とか思ってると、後ろから唸り声が聞こえた。
後ろを向くと、ミーシャが後ろで頬を膨らませながらこちらを見ていた。
「どうした? ミーシャ。怒ったような顔して」
「ご主人……あんまりミーシャを子供扱いしないで……」
どうやらお子様ランチが気に食わないらしい。
仕方ないじゃないか。子供だし。
「なんでも良いけどって言ったのミーシャじゃないか。結局別のが良いだって? それはもう無理だよ?」
「むぅ」
怒り方かわいっ。
見た目だけじゃ年齢なんて分かんないよ……だけど見た目は12。完璧にロリっ子だ。
ロリコン? ナニソレオイシイノ?
「別に良いだろ。ほら、旗も付いてる」
苦し紛れの言い草。かなり早いがそこは異世界クオリティ。魔法で『パッ』て奴だろう。そう『パッ』。
一見すると旗の立っているただのチャーハンっぽい何か。美味しそう。
ミーシャを見ると、ミーシャはヨダレを垂らしながらこちらを見つめていた。
「ん? どうした?」
「ご主人の許可が出ないと食べない。 旗、嬉しいけど怒られる」
「怒られるって……そんな酷い奴じゃないぞ? 俺……」
少しばかりミーシャを待つが、ミーシャは一向に食べようとしないので、仕方なく言う。
「よし。食べていいぞ」
「ご飯!」
許可した途端、ミーシャはお子様ランチに飛び付いた。
むしゃむしゃむしゃ……
「でも、可哀想だなぁ。これもあれか? 前の主人の影響か」
俺が小さくボソッと言う。もちろんミーシャには聞こえない位小さな声で。
「ミーシャ、可哀想だけど可哀想じゃない!」
「へ?」
いきなり話し出したミーシャに、思わず感嘆の声を上げる。
なんか廻りが静かなのは気のせいだろうか。
だが、そんなのお構い無しにミーシャは話を続ける。
「ミーシャは可哀想だけどその前までは幸せだった! お父さんお母さんに愛されてた! それにミーシャ、今ご飯食べれて嬉しい……旗付いてて嬉しい!!」
「ミーシャ……」
「だからね、あのね、あのね……ミーシャの事、愛してくれる?」
「っ!?」
話を聞いていて、急に来たド直球な質問に少し固まる。
『愛してくれる?』かぁ。人を愛した事も無いけど、出来るかなぁ。
いや、でもミーシャを愛さないなんて選択肢なんてあるのか? ねぇだろ。
ミーシャを買った理由自体が同情だし……
迷っている中、気付くと俺は喋り出していた。
「うん、そう……だな。ミーシャ、お前の事愛すよ」
その言葉を発した瞬間、廻りが急に騒がしくなった。
「うおぉぉぉぉぉぉ!」
なんか叫んでる人、拍手している人、泣いている人、色々いる。
……怖。
え? 怖。
まって? って事は……今の話、全部聞かれてたって……事?
急に恥ずかしくなり、俺は手で顔を隠した。
ミーシャはと言うと……平気そうな顔で毛ずくろいをしていた。
ん? だけど確か、猫って照れた時に毛ずくろいをする習性があるって聞いた事が……
今ミーシャ、毛ずくろいしてたよね? 毛無いのに。
ん? んん?
ミーシャも照れてるじゃねーか!
そう思いながらも、ミーシャは何も無い腕をぺろぺろ、ぺろぺろ。
チッ……憎めねぇ……
その後、このまま帰ろうとし、危うく食い逃げする所になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます