何度でも

気をつけてね

小学校になった柚希ゆずき、まだ家族と共にどこかに出かけることはあるもののいずれは友達と行ってくると家を飛び出していくのかと思うと少し寂しい気持ちがある。


それは学年が上がるに連れて家族と出かけることよりも友達と出かけることが増えるのだろうと入学式を終えて数日だが、そのようなことを考えていたパパの和真かずまとママの実夢みゆだった。


護身術ごしんじゅつを覚えたからなのか何事にもあまり怖がることがなく、それはそれで心配をしているパパの和真かずまのママの実夢みゆ。晩御飯を食べている時に気をつけることを話していた。


パパの和真かずま、ママの実夢みゆ共に目が合ってどちらが話すか押し問答をしていて結局パパの和真かずまが話しかけた。


「いいか柚希ゆずき、いくら護身術ごしんじゅつを覚えていても太刀打ち出来ない物がある。それは車やトラックで小さい柚希ゆずきには歯がたたない。後は自転車に乗る時も周りをよく見るように。自分がケガをしないことも大事だけど相手にケガをさせないことはもっと大事だからね」


ポカンと聞いているのか聞いていないのか分からない様子だったため、その都度伝えていかなきゃなと思っていた。如何いかんせん、柚希ゆずき自身が被害者にも加害者にもなりうる可能性があるからだ。


娘の柚希ゆずきにお願いして自転車に乗せて車で徐行して近づく。どこが死角になって危ないのかを少々手荒れだなと思いつつも身をもって分かる方が実際に友達と自転車でどこかに行くとなった時に活きると考えた。


娘の柚希ゆずきからどうしてこういうことをするのかを聞かれた。なんで〜?


「パパもママも車を運転をすることもあるし、大学生の時に自転車でどこか行こうとしていた時に突然車が飛び出して来たり、バイクがスレスレで通って危ない思いをしたことがあるから」


この話は実際にあった場面もあればこうなりうることもあることを交えながら話していた。車を運転しているときですらバイクや自転車にヒヤリとすることがパパの和真かずま、ママの実夢みゆも同様の経験をしていた。


あまり過保護になりすぎず、過干渉になり過ぎないようにとパパの和真かずま、ママの実夢みゆ共にそれは分かっていながらもその線引きというのは非常に難しい。


それは勉強であっても何かのスポーツや芸術で極めたいと言ってきたとしても娘の柚希ゆずきに任せよう。大事なのは勉強が出来ることよりも人の痛みが分かったり、困った時に助けてあげられる優しい心だと思っていた。


パパの和真かずまは鉄道学部に入りたいと自分が思って幕張産業大学まくはりさんぎょうだいがく、ママの実夢みゆはバレエをもっと極めようと思って川崎星南かわさきせいなん女子大学文化芸術学部に進学した経緯があるからだ。


娘の柚希ゆずきは優しくて困った時に助けてあげられる。この部分ではすでに出来ていると思う。たけど子どもならもっとワガママを言ったり、こうしたいと言った自己主張があまりないなと感じていた。


確かに妹の萌夢もゆ光織みおりの面倒が最優先になってしまうもののお姉ちゃんだから我慢しなきゃ。口には出さずとも雰囲気が漂っていた。


だから柚希ゆずきにも困った時や甘えたい時はパパやママにいつでも言っていいよと何度も何度も伝えた。

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