お出かけ

未遂

双子の萌夢もゆ光織みおりをあやしたり、ダブルベビーカーを押したりと柚希ゆずきはお姉ちゃんだからが口ぐせで何でも率先してお手伝いをやっていた。


4月になり、その柚希ゆずきも地元の公立の小学校に入学をした。お受験して私立の小学校に入れようとはパパの和真かずまとママの実夢みゆは考えていなかった。


その理由は自分たちはあくまでも公立の学校に行くのには遠く、私立でスクールバスで通っていた経緯があって都市に近い蘇我町そがまちならば柚希ゆずきが望まないのに無理やり私立に通わせる必要はないと考える。


地元の蘇我城西そがじょうせい小学校の入学式、パパの和真かずまとママの実夢みゆに手を繋いで学校の校門をくぐる。くれぐれも護身術ごしんじゅつを使う場面は考えてねと念押しをされた。


保育園の時は近くにいた子たちがいざこざを起こして保育園の先生がなだめてその場をしずめて解決をするということが時折あった。小学生になったらそのようなことはないだろうと柚希ゆずきは考えていた。


入学式を終えて1組のクラスに行くと煌希こうき君も同じクラスでお互いに挨拶あいさつをする。いやがらせやイジメがあったら前のように助けてあげるから遠慮なく柚希ゆずきに言ってねと自分の席に戻って行った。


軽い自己紹介をしてこの日は終わり、通学路の確認をするために先生たちと共に家に帰って行った。登校する時は班で集団登校するが、帰りは基本的に1人で帰ることになると伝えられた。


翌日から授業となるが、入学式が金曜日だったため月曜日から。土曜日に家から学校までの距離でどこに危険があるのかを確認をするためにパパの和真かずまとママの実夢みゆと共にゆっくり歩いて確認をしていた。


せっかく家を出たのならばと学校から程近いショッピングモールにそのまま向かった。フードコートでお昼ご飯を食べてアパレルショップや本屋、雑貨屋を巡っていた。


突然、柚希ゆずきが足を止めて何か違和感を覚えた。エスカレーターに乗っている女子校生はスマホに夢中になっていて、その後ろにいる男の人が盗撮をしていた。


その姿を見た柚希ゆずきはいても立ってもいられず、エスカレーターを駆け上がり男の人の手首を掴んだ。今、盗撮してましたね。


「証拠ないのにガキが何を言っているのか分からない。そもそも女子校生もスマホに夢中になって無防備で露出の激しい服を着ている方が悪い」

そう自分の正当性を主張していた。


手首を掴んだままサービスカウンターに連れて行って警察に通報してもらった。その間、女子校生はずっと泣くばかりで余計なことをしてしまったかなと自責の念を感じる柚希ゆずきだった。


「女子校生に騒いでごめんなさいと謝るとスマホを見ていた私も悪い。それに盗撮を見つけて捕まえるって勇気あるね。謝礼金として受け取って欲しい」

そう渡されたが、断ってこういうの欲しくて助けたわけではないと伝えると駄菓子屋でチョコボールをイチゴ味とキャラメル味を買ってもらった。


その後、女子校生だけでなくなぜか柚希ゆずきと家族まで警察に連れて行かれて事情聴取じじょうちょうしゅを受けることになる。


もう何人かの警察の人とは顔馴染みみたいになってまた柚希ゆずきちゃんが犯人捕まえてきたのかと言われるほどになっていた。

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