見に行こうか

久々

先日、ママの実夢みゆがコンクールに出場するためにパパの和真かずまと行った娘の柚希ゆずき。会場で舞うママの実夢みゆに感動して余韻よいんひたる時間もなく、包丁を持った男に捕まって自力で逃げたもののきょうざめな気分でいた。


思わず柚希ゆずきは独り言を呟く。

「どうしてガラの悪い人や強盗に遭遇してしまうのか、そういう星に生まれたのではないかと考える日もあった。自分でもまだ、保育園を卒園したばかりだよね。柚希ゆずきって」


金曜日、パパの和真かずまから明日の土曜日に出勤する予定で電車を運転するからママと共に乗りに来てくれたら嬉しいな。


ワクワクしながらどうか変な人に絡まれませんようにと祈る気持ちでいて、晩御飯を食べるなりスグに眠ってしまう。


ママの実夢みゆに寝ようとしていると話があるとパパの和真かずまが呼び止めた。


「この前、包丁を持った男にも物怖ものおじせず、冷静でいて何なら自分が人質に取られて面倒くさそうにしていたから包丁は怖いもの、いつでも護身術ごしんじゅつが使えるワケではないことを伝えておいて。立てこもり事件がその典型だよ。どうしようもない場合もあることも伝えていこう」


たまにある立てこもり事件。昔の事件では鉄球で家を壊して乗り込んだことや銀行で行員や客を巻き込んだ事例もある。そう考えると他人事たにんごとではないし、その場合は護身術ごしんじゅつでどうにか出来ない場合もあると感じる。


土曜日、いつもより早く目覚めた娘の柚希ゆずき。せっかくならお弁当を持って行きたいと言っていて菜の花を眺めながらのピクニックするのもいいかもと考えた。


娘の柚希ゆずきに用意するから待っているように伝え、おにぎりと玉子焼き、冷凍のからあげを作っていた。出来てお弁当箱に詰めて家を出るよと伝えると柚希ゆずきが部屋から中々出てこない。


部屋に行ってみるとどれを着ようかと悩んでいた。そしてママの実夢みゆに問いかける。


「ねぇ、ママ。この水色のワンピースと黄色のワンピースだとどっちがいいかな?」


菜の花は黄色だから黄色のワンピースだの映えると思うよと提案をして着るのを待って家を出た。ママの実夢みゆもいすみ鉄道に乗るのは何年ぶりだろうかと懐かしんでいた。


蘇我そが駅から「いすみ鉄道」大原おおはら駅に向い、1日乗車券を購入した。駅員室で何時発の電車にパパが運転するのかを聞いてその時間まで待っていた。


すると折り返しの電車が大原おおはら駅にやってきてパパの和真かずまが降りて来て次の電車に走ることを柚希ゆずきに伝えると嬉しそうな笑顔をしていた。


終点の上総中野かずさなかの駅まで行って近くのお寺にある椅子に座ってお昼ご飯を食べていた。家内安全をお参りして再び電車を待っていた。


時間になり、菜の花電車がやって来て柚希ゆずきが興奮するようにかわいいとテンションが上がっていた。思わずママの実夢みゆもこれを見たくてパパと来たことがあると話していた。


家に着くまでは何があるか分からないと身構えていたママの実夢みゆだったが、この日は何事もなく家路に着いてホッとしていたが、娘の柚希ゆずきは出かける度に変な人に出くわしていたら身がもたないと語っていた。

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