どんな感じなのか

柚希ゆずきはずっと言っていることがあった。それはパパとママのお仕事をしている場所を見てみたいということ。


パパの和真かずまとしてはその日、いつ運転をするかは当日分かるため何時のどの電車か伝えることが出来ない。ママの実夢みゆとしては講師としては短時間だが、バレエ教室に戻って教えていた。


だが、せっかく柚希ゆずきに見てきてもらうならば講師として教える姿でもいいが、発表会やコンクールに出場してバレリーナとして舞う姿を見せたい気持ちがあった。


柚希ゆずきが卒園近くになり、パパの和真かずまと共に近くにあるホールでママの実夢みゆがコンクールに出場することを表明して行くことを決めた。


当日、気合を入れてピンクのワンピースを身にまとい、手を繋いでホールに向かう。バレエを初めてだとワクワクしていた。


結婚する前からずっとママになる前から実夢みゆのバレリーナとしての姿を見てきたがいつ見てもスゴいと感じるし、柚希ゆずきも静かにしてと言うほど前のめりになって興奮していた。


終演後に家に帰る途中、包丁を持った男が突然暴れて人質に柚希ゆずきの喉仏に包丁を向けて金銭と逃走用の車を要求して周りは騒然としていた。


怖くて泣くどころかあきれていた。どうして柚希ゆずきはこう変な人と遭遇するのか。あまりこの時間が続くと警察に通報されて事情聴取じじょうちょうしゅに時間がかかるなと感じていた。


スタンガンやピストルだったら手も出ないが、包丁だったら別に怖くない。刺されても血が出るくらいだろうという強心臓でいた。


この角度なら鳩尾みぞおちに当たるかなと確認して足で鳩尾みぞおちを蹴って地面に降りる前に腕を掴み、投げ飛ばした。


周りからは拍手を飛び交って何事もなかったかのように家に帰って行った。パパから教わった護身術ごしんじゅつを覚えてよかったよ、でもそのお陰で変な人によく絡まれるけどね。


そう笑いながら家の玄関に入ってママの実夢みゆにバレエで舞う姿に感動したことと包丁を持った男に捕まって対峙たいじしたことを高らかに話していた。


この後、普通の親子では考えられないような会話が繰り広げられる。


柚希ゆずき、いくら護身術ごしんじゅつ身につけていたとは包丁を向けられたって心配になる。ケガはしていない、大丈夫?ケガはしていない?」


柚希ゆずきケガしてないし、包丁向けられても怖くないよ。だってパパが護身術ごしんじゅつを教えてくれたもん。ピストルだったら太刀打ち出来ないけど、包丁なら刺すまで時間あるし刺されても痛いくらいだよ」


その言葉を聞いてママの実夢みゆは娘の柚希ゆずきの手を握ってこう話した。


「包丁向けられても怖くないって言うけれど刺されたらスゴい血が出ることもあるの。そうなると場合によっては多量出血で死んじゃうことがあるから包丁を向けられたら助けを求めて、危ないと感じたら自分から何もしないこと」


自分の身を守るために護身術ごしんじゅつだが、時と場合によってにしないとパパやママに心配をかけてしまうなと実感した。

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