標的

見過ごせない

護身術ごしんじゅつを身につけていつ何があっても自分の身は自分で守れるようになった柚希ゆずき


そして優してイジメなど断固反対の精神で公園に遊びに行った時に同い年くらいの男の子が小学生に場所を譲るように言い合いを見かけては仲介に入って護身術ごしんじゅつで助けてあげることも度々あった。


大きい小学生が幼稚園児相手に手加減なしに殴ったり蹴ったりしている様子を見て力関係は明らかなのにどうして弱いものイジメをするのだろうか、柚希ゆずきにはそれが分からなかった。


みんな仲良く平和に過ごしたいと考えている柚希ゆずきに取ってそれをおびやかすものは何人なんぴとも許さない気持ちでいた。それが自分より大きい小学生や大人ならば尚更のこと。


ある日、同じマンションに住む煌希こうき君と共に駄菓子屋に向かっていた。柚希ゆずきとしては新しい駄菓子が入ったのか、いつも買っているチョコボールやグミを買うかと期待を膨らませながら歩いていた。


その道中、煌希こうき君が歩いている時に運悪く、ガラの悪い大人に肩が当たってしまった。肩の骨が折れたと猿芝居をしていて、大金があるはずもない保育園児にそれをしている。


おびえる煌希こうき君とは対象的にアホに絡まれて面倒くさがっている柚希ゆずきがいた。せめて同じことをするなら背丈が近い人にするばいいのにと小言をつぶやく。


「お金は持っていないのでどいてもらえますか。家に帰りたいのそこに立たれると邪魔でしかないので」

そう言うと逆上ぎゃくじょうして柚希ゆずきに殴りかかろうとして手首を掴み投げ飛ばした。


柚希ゆずきは近くを見渡していると交番を見つけ、手首をひねったまま連れて行く。引渡して駄菓子屋に行こうと悠長ゆうちょうに考えていた柚希ゆずきだった。


交番に入って事情聴取じじょうちょうしゅをされてひと通り話したら終わるだろうと思っていたが、中々解放してくれないなと感じる柚希ゆずき煌希こうき、挙句の果てには危ないからそういう時は交番でお巡りさんを呼ぶようにと叱られる。


口では言わないが、柚希ゆずきとしては護身術ごしんじゅつで自分の身は自分で守れるからこの話を聞いているのが困わりさんだと駄洒落だじゃれを心の中で思っていた。


交番から解放されたのは絡まれてから2時間が経っていた。何をしに来たか忘れそうになりつつも駄菓子屋に向かった。


新しい駄菓子が入っていると喜ぶ柚希ゆずきだったが棚を見ると既に空で売り切れていた。思わずいつまであったのかを聞いた。


「ゴメンね、1時間前までは結構あったけれど30分も経たないうちに全部売り切れちゃってね……。他のお菓子でよかったら買って行ってもらえたら嬉しいな」


まぁ、新しい駄菓子はまた買えるからいいかなと他の棚を見ると見たことないキャラメルのチョコボールを見つけて買うことにした。


駄菓子屋を出て煌希こうき君から何度も迷惑かけてゴメンね、何度も言っていて簡単に出来る護身術ごしんじゅつ身につけておいた方がいいかもねと話していた。


ちょっと考えておくねと笑いながらマンションに帰って行った。

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