名前

候補と漢字

実夢みゆのお腹もだいぶ大きくなってきてバレリーナとしてコンクールや発表会に出るのは控えようと考えていた。定期検診で程よい運動はいいけど、激しい運動は避けるように言われていたからだ。


バレリーナとしてはコンクールや発表会に出れないのは寂しい気持ちもあるが、それ以上に自分のお腹に宿っている双子ちゃんの方が大事。感覚を取り戻せばいつでもバレリーナとして復帰出来ると根拠のない自信を持っていた実夢みゆだった。


同じマンションで煌希こうき君ママと会うことも増えて何かあればいつても言ってくださいとありがたい言葉をもらい、迷惑かけることが増えるかも知れませんが、親子共々仲良くしてもらえると助かりますと話していた。


中々名前の候補すら挙がらずにいて男の子だったら、女の子だったらどうするかを尋ねてみることにした。


エレベーター前で話すのは邪魔になるからと家に上げてくれ、焼き菓子とお茶を出してくれた。


「私たちが学生の頃は女の子は樹里じゅりちゃんや世奈せなちゃん、宏美ひろみちゃんなど女の子らしい名前が多かった印象ですが、最近では大海ひろみ君、聖那せな君、樹里じゅり君と同じ保育園にいたりするので男の子だから、女の子だからこういう名前っていうのがなくなって気がする」


その話を聞いて毎年出る名前ランキングにも自分たちが学生時代にはなかった名前や漢字が出てきているなという印象がある。だからこそ名前ってその子がずっと背負っていくからちゃんと考えてあげないといけないと教えてもらう。


まず、この双子ちゃんが男の子なのか女の子なのかにもよって付ける名前も変わってくるが産まれて来た子たちが自分たちの名前に誇れるような名前を付けてあげたいなと考えていた。


実夢みゆ自身、この名前に誇りを思っているし、かわいい名前にかわいい漢字を付けてもらったなと親に感謝している。夢が実って自分が頑張れば夢が叶う。自分が好きでバレリーナとしてやっているが、夢が叶っている。そしてことわざでこういう言葉があるなと思い出した。


「好きこそ物の上手なれ。好きだから練習も苦じゃないし、おのずとじょうずになる」

だから今の自分もいるのかなと実夢みゆは過去の自分を振り返った。


気がついたら柚希ゆずきを保育園に迎えに行く時間になり、いつも以上にはしゃいでいる様子でいた。


家に帰って話を聞いてみた。

「あのね、新しく保育園に入ってきた女の子がいてもゆちゃんっていう子とみおりちゃんっていう子が優しくてかわいいの。仲良くなりたいし、女の子だったらもゆちゃんとみおりちゃんがいいな」


普段あまり自己主張のしない柚希ゆずきがそのようなことを言うのは珍しいなと感じていた。柚希ゆずきが寝静まった時、バパの和真かずまにその話をしていた。


「なるほどね。でも柚希ゆずきって名付けた時も柚那ゆずなちゃんのようになって欲しいと名付けたから柚希ゆずき気持ちは分かるな。女の子だったら候補に入れて名前も考えておかないとね」


そう言ってあくびをしながら寝床についた。

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