妻子ともに

自身のために

家訓のように何かあった場合は護身術ごしんじゅつをするようにと教えていた家のあるじでも和真かずまだった。


何もないに越したことはないが、魔の手はどこにひそんでいることは否定が出来ない。


柚希ゆずきが家に帰ってきて次のようなことを言って驚いた。

「保育園のお友達が嫌がらせをしているのを見て護身術ごしんじゅつで助けてあげたの。柚希ゆずき、偉い?」

その話を聞いて困っている子を助けてあげて偉いねと言ったもののどういう状況だったのか分からない。相手の子がケガしてなければいいけどな……。


護身術ごしんじゅつを教えたのは和真かずま自身だった。翌日、保育園に事情を聞こうと考えていた。


翌朝、保育園に電話をして事情を聞いた。

「男の子が女の子に髪の毛を引っ張ったり、悪口を言ってその子が泣いてしまっていてもたってもいられなかったのか私たち保育士が来る前に柚希ゆずきちゃんが男の子の手首を掴み、ひねってその男の子も泣いてしまって……。家で何を教えられたのですか?」


この物騒ぶっそうな世の中なので護身術ごしんじゅつを教えたのですが、すみませんと謝った。今回は正当防衛っていう形で柚希ゆずきには何もおとがめなしとなった。


仕事が終わって柚希ゆずきを迎えに行って家でママの帰りを待っていた。帰りが遅いなと思って連絡をしようとしたら帰ってきた。


実夢みゆは家に入るなり、肩を回していつも以上に疲れている様子だった。何か触れてはいけない雰囲気を感じてたまには晩御飯を出前頼もうかと話していた。


実夢はたまには出前でも取ろうかと牛丼を注文して待っていた。妻の実夢みゆの目を見ると明らかに何かを訴えている、話を聞いてほしそうな目をしていた。


話を聞くと朝から大変だったようだ。

「通勤電車で窓際にいた女子校生が痴漢ちかんされているところを見て、その人の手を掴んでひねってそのまま駅員室に連れて行って事情聴取されて出勤時間に遅れるし、帰りは帰りで実夢みゆをストーカーしてきた人を捕まえて交番に突き出して……」


和真としては護身術ごしんじゅつを教えたことに間違いはなかったと思いつつも大変だったねと言ってあげることしか出来なかった。


届いた牛丼を食べながらパパが護身術ごしんじゅつを教えてくれなかったらお友達を助けてあげることが出来なかったという柚希ゆずき実夢みゆって人妻なのにストーカーされるってそんなに童顔に見えるのかな?


柚希ゆずきに関してはもう護身術ごしんじゅつを覚えて実行出来るとはいえ、防犯ブザーも必要だな。そして実夢みゆに関してはパッと見たら女子大生なのかなと見間違えるくらい童顔たと思う。


しかし、自分から笑顔で童顔なのかなと聞いてくるとは思わなかった。いつまても若く見られることはいい事だよ、娘の柚希ゆずきもママ、いつもかわいいね。


柚希ゆずきに習って実夢みゆにいつもかわいいねと言おうとこれまで以上に誓った。

寝る時にかわいいママと結婚出来て嬉しいよと伝える。


嬉しいけども元々、柚那ゆずなと結婚するはずだったのに実夢みゆでゴメンねとあしらった。しゅんとしていると相変わらずだねと笑ってベッドに向かう実夢みゆだった。

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