第10話 Pure feeling(10)
「ね~~、どうする???」
我慢できなくなった南は秘書課に飛び込んで、やっぱり志藤に訴えてしまった。
「はあ?? あの『ホスト』とあゆみちゃんがあ???」
さすがの志藤も驚いた。
「だって! だいたいあの二人どんな接点? 少なくともあたしたちと一緒の席では、会ったことなかったと思うし。」
もう仕事を終えて帰ろうとしていた萌香も聞くともなしに聞こえてしまい、思わず立ち止った。
「ほんっま! 手が早いねんなあ~~。 ああいうのって美女を嗅ぎわける能力がハンパねーもん、」
志藤はおかしそうに笑った。
「そんな気楽に~~~、」
「別に。 ただの男と女。 出会ってしまったもんはしゃーない。 構うな、構うな。」
志藤はまた新聞に目を移した。
萌香はなんとなく心配そうにその場に立ちすくんでしまった。
「ここは・・」
あゆみは連れてこられた先の目の前で、驚きを隠せずにいた。
「こっちはお客さんの入口だから。 こっち、」
結城は戸惑うあゆみの腕を引っ張った。
「こ、ここは。 結城さんの、ご実家の、」
『ゆうき』とかかれた木の小さな看板を見て、あゆみはすぐにピンと来た。
「うん。 ウチ。」
結城は言葉すくなにそう言って、彼女を引っ張って裏の木戸のドアを開けた。
「お兄ちゃん、」
家に上がっていくと、妹の沙耶が居間で宿題をしていた。
「よ。」
結城は笑顔で右手を少し上げた。
「え、どーしたの? なんかあったの?」
目を丸くする妹に思わずふっと笑ってしまった。
『何か』がないとここに寄りつかないことを小学生の妹も感じ取っている。
それがなんだか情けないような気になって笑いがこみ上げてしまった。
「お客さんを連れてきたんだ。 オヤジ、呼んできてくれない?」
結城は後ろに控えていたあゆみを前に出すようにしてそう言った。
「あっ、」
沙耶はまた驚いた。
「こ、こんばんは・・」
なんだかどういうことになっているのかわからずにあゆみは所在がなかった。
「このあいだの・・お姉ちゃん、」
お台場で会ったあゆみのことを覚えていた。
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