第7話 Pure feeling(7)

「ユーリにも。 ちゃんと相談しな。 また家までついてくるといけないし。 あいつもあれでも男なんだから。 もちょっと頼ってやったら?」



別れ際、結城は笑顔でそう言った。



「ハイ、」



あゆみに少しだけ笑顔が戻った。





デスクに戻ると隣の席で、有吏が原稿用紙にかぶりつき状態だった。



「あ~~~、どういう漢字だったっけ???」



辞書を調べながらの作業だった。、



「ファンクラブの会報?」



結城は煙草に火をつけた。



「ハア。 今日中に仕上げないと・・」



結城は原稿をチラっと見て



「『完璧』の『ぺき』は、下が『土』じゃなくて『玉』だよ、」



と注意をした。



「え? は? あ! そーなんですかあ? おれ、この字を知ってからずうっとこーやって書いてましたよ???」



有吏は素っ頓狂な声をあげた。



「漢字練習は真面目に。」



結城はふふっと笑ってファイルを広げた。



「ハタチになっても漢字練習ですかあ・・」



思いっきり情けない顔をした。



「まったく。 しっかりしないと、いいかげん。 ハタチになっても小学生みたいな空気出して。・・これじゃあ、姉ちゃんの苦労はまだまだ続くなぁ、」



結城は笑ってしまった。



「いちおうこれでも食費のほかに生活費もちょこっと入れられるようになったんですよ。 ま、あんま姉ちゃんの助けになってないかもですけど、」



はあっとため息をついた。



「でもー。」



そして目だけ宙を見上げた。



「でも?」



結城は手を動かしながら聞いた。



「イベントコンパニオンの仕事も。 26過ぎたらパタっと減ったって。 ボヤいてました。 派遣会社、辞めたみたいです。」



結城は彼を見やった。




「やっぱ、ああいう仕事も。 若くないとダメなんですかねえ。 また他の仕事探そうかって言ってます。 おれは銀座の仕事だけにしたらって言うんだけど。 あそこの仕事も週4日だけで今の所いいって言われちゃってるし。あの人、仕事中毒みたいになっちゃって。 家にいるともったいないって言うんです。 身体壊さないか心配なんだけど、」



有吏なりに心配をしているようだった。



「・・そう、」



結城は小さくそう言ってタバコを灰皿に押し付けた。



何だかモヤモヤした。



少し腹立たしかった。



彼女に対して。

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