第3話 Pure feeling(3)

「あいつ、アレだろ?? 北都フィルの女の子に手エ出して事業部をめっちゃ混乱させたっていう・・」



高宮は眉間にしわを寄せて顎に手をやって肘をついた。



「あ~~~? そうなの??」



夏希は逆に訊いてしまった。



「しかも二股とか? すんごい修羅場っちゃったらしいじゃん!」



「隆ちゃん、よく知ってるねー。 あたし、詳しいことはあんまり、」



夏希は首をかしげてしまった。



「南さんがいっつも志藤さんに相談しに来るから。 イヤでも耳に入ってくるし。 いいのかよ、そんな男!」



高宮はまた憤慨し始めた。



「まあ。 今は。 営業の方に専念してくれて。 南さんがあんまりこっちに来れないから。 実際、結城さんがいてくれて助かってるっつーか。 だって、すんごい仕事デキるんだもん。 あたしなんかもう怒られてるし、」



「いかにも。 女泣かせてそーな顔してんもんなー。」




高宮があまりに結城のことを悪く言うので、夏希は少しだけ悔しくなった。



「でも! なんだかんだ言って、あたしのミスなのに今日も手伝ってくれたし。 まあ、いちいち言うことは憎たらしいんだけど。 でもー・・」



「でも?」



「ああ。 ウン。 なんか。 最初の頃の隆ちゃんとちょっと似てるかも!」




夏希はさらに空気の読めない発言をし始めた。



「はあ???」



高宮は憤慨していた気持ちがへし折られたような気がして思わず立ち上がってしまった。



「なんかねー。 すんごい高い所から見下ろしてるってゆーか。 や、結城さんのほうが何考えてるかぜんっぜんわかんないトコあるんだけど! ちょっと上から目線みたいなトコとか?」



夏希はどんどんそれに構わず話を進めた。



さんざんヤなヤツの前提で結城の話をしていたのに



そいつに似てるって!!!



相変わらず相手の気持ちも考えない夏希に高宮は返す言葉もすぐに出てこないほど腹立たしかった。



「まあとにかく。 よくわかんない人なんですよ、」



夏希は無理やりまとめてまたゴハンをばくばくと食べ始めた。



「お、おれもよくわかんない人のカテゴリーに入ってるのかっ!!」



高宮はわなわなと震えたが



「え? かてごり? ってなに?」



あまりに間抜けな答えが返ってきて、



もう身体の芯がなくなっていくような気になって



怒る気力も失せてしまった。





「ああ。 今日は休みなの? 珍しいね。 フツーに家にいるなんて、」



結城は家に帰って携帯を首に挟みながら上着を脱いだ。



「・・うん、うん。 どしたの? なんか元気ないけど。 身体の具合でも悪いんじゃないの? じゃあこの前の店でいい? わかった。 じゃあ・・」



電話を切って小さなため息をついた。



タバコに火をつけてベランダに出た。



空気が冷たくてブルっと震えたが



透きとおった夜空に浮かぶ三日月をぼうっと眺めた。



手すりに肘をついてタバコの火のオレンジを見つめた。

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