第2話 Pure feeling(2)

「ほんっと! すみませんねえ・・」



夏希は隣のデスクで手伝ってくれることになった結城に申し訳なさそうに言った。



「ま。 貸しを作っておいたほうが。 いろいろいいこともあるかもしれないし、」



結城はふっと笑った。



「え! あたしはゴハンとか奢れませんから! いまだにおこづかい制なんだから!」



本気で焦っている彼女がまたおかしくて・・



「別に。 きみはお金がなさそうだから、集ることはしないけど。 ・・・ダンナ。 北都リゾートの方も行ってんでしょ?」



「え・・あー。 よくわかんないですけど、」



「ホテルのタダ券とか。 ないの?」



ニヤっと笑った。



「やっぱ集ってんじゃないですか。 あたしは。 隆ちゃんの仕事のことはなにひとつわかんないし・・」



手を動かしながら夏希は膨れた。



「社長が倒れて。 もちろん専務が会社を回しているけど。 実質あんたのダンナが仕切ってるって噂だし、」



結城もキーホルダーをひとつひとつ丁寧に袋詰めしながら会話を続けた。



「えー? そうなの・・かなあ????」



夏希は暢気に宙を仰いだ。



「まだココに来て8ヶ月のおれが感じてるんだから。 きみが自覚がないのは笑えるけどなあ、」



「隆ちゃんは家で仕事のことは全然話しないから。 ま、あたしが聞いてもワケわかんないんですけど。」



少しいじける彼女に



「家庭に仕事を持ち込むのがキライな男っているし。 ま、おれもその気持ちはわかるかな、」



結城は顔を緩めた。



「仕事の話するときって99%、グチだし。 ヨメにそんなグチこぼしたくないって思うんじゃないの? プライド高そうだもんね。 あの人。」



夏希はそれに妙に納得してしまい



「あ~~~、そうかも。 隆ちゃんは優しいけど、何でもすっごい自信満々だし。 あんまり人から言われるのが好きじゃないかも。」



彼の日頃を思い出して思わず頷いてしまった。



「だから。 加瀬さんみたいな子がいいんじゃないの? いろいろ難しいことつっこんでくる女ってウザいし。」



「はあ。 って! あたしがバカってこと言いたいんですかあ????」



夏希のノリツッコミに、結城はまた笑ってしまった。



「なんか入れ方がザツだなあ。 もっとこうしてマークが見えるようにして・・」



結城は夏希が袋詰めしたものを見て言った。



「ちゃ、ちゃんとやってますよお。」



ムッとして言い返すが、確かに彼がやったものは非常にキレイにできていた。



「結城さんて。 器用ですよねえ。 少なくともあたしより器用・・」



するとまた彼はふふっと笑って



「加瀬さんは。 主婦と思えないほど不器用だね、」



と言ってきた。



「だから! そうやって優しく笑いながら失礼なことをさりげなく言うの、やめてもらえます!???」



夏希がムキになればなるほど、それがおかしいようでいつまでも笑われた。





「遅かったね。 おれより夏希のが遅いなんて珍しい・・」



帰宅するともうすでに高宮は風呂にも入った後だった。



「あ~~~、肩凝った。 ま、自業自得なんだけど。 ひどいめにあった~~~。」



夏希は肩を叩きながらげんなりした。




「え? あの結城って男と?」



高宮は夏希にお茶を淹れてきた。



「ま。 なんだかんだ言って手伝ってくれたんで。 ありがたかったんですけど、」



夏希はまだ不機嫌そうにご飯をパクついた。



するといきなり高宮は彼女の前に座って



「あんな怪しげな男と二人っきりで残業なんか! ダメじゃん!」



とものすごく必死に言い始めて



思わず箸から豆腐のカケラが落っこちた・・



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