君とジェットコースターに乗りたい

土屋リン

君とジェットコースターに乗りたい

「怖いからやめよ」


握る手は汗ばみ、会話はたどたどしく、互いの態度はどこかよそよそしい。


私と彼は遊園地の喧騒を歩く。


私はジェットコースターが好きだ。


だからいつもは決まって乗るのだが、ひとりでだって乗るのだが、今日は特別な日なので、彼が怖いと思うならと諦めることにした。


パレードなど別に好きではないし、舞台などは退屈だ。


でも、そんな緩やかな時の流れも彼が隣にいるだけで、視界が青い空からジオラマに切り替わるときみたいに、心拍数が上がっているのが分かった。


私は今日を忘れたくないはずだった。



「怖いからやめよ」


握られた手は汗ばみ、声はたどたどしく、その眼を私は知らない。


暗闇のその人は、諦めてはくれなかった。

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君とジェットコースターに乗りたい 土屋リン @kishise09

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