第34話 豪遊……!

『まえがき』


前話にてエリクサーの料金設定がおかしいと指摘がありましたので修正しました。







 どうやらダンジョン産のものは、俺の思っていたよりも高額で売れるらしいことがわかった。

 配信を終えた俺は、どきどきする気持ちで銀行に向かった。

 いきなり億をも超える金を手にしてしまって、まるで宝くじが当たったような気分だ。


「これ……どうしようか……」


 金はアイテムボックスにしまっておけばいいけど、なんだか落ち着かない。

 もしアイテムボックスを奪われでもしたら大変だからな。

 一応、銀行に預けておくことにした。


 さて、これからどうしようか……。

 ちょっとお金が入ったから、奮発して豪遊しようか……!


 俺はさっそく、街に繰り出した。

 今までは手が届かなかったような、高級な服屋に入ってみる。

 昔はファッションなんか興味のなかった俺だけど、この前心にいろいろ教えてもらってから、おしゃれをするのが楽しくなっていた。

 俺は気にいった服を何点か購入した。

 もはや金額は気にならなかった。


 それから、電気屋にいって、一番高い最新型のダンカメを購入した。

 これなら今まで以上に精細に、動画がとれるぞ。


 お腹が空いてきたので、高級なフレンチの店に入る。

 コース料理なんか、食ったことがない。

 なんだか一気にセレブになった気分で、俺は浮かれていた。


 みたこともない料理が出てきた。

 俺はそれを写真にとってツイートした。

 ツイートはすぐに拡散され、たくさんのいいねがついた。

 腹も満たされて、承認欲求も満たされて、最高の気分だ。


 しばらく飯を食って、ゆっくりしていると……。

 なんと店に、俺のよく知る人物が現れた。

 やってきたのは、九重心だった。

 心は一直線に俺のテーブルまでやってくる。

 なんだ!?

 俺がここにいることを知っていたのか……?


「先輩……!」

「おう、心……どうしたんだ?」

「どうしたじゃありません。行きますよ」

「え……? ちょっと……」


 心は強引に会計を済ませると、すぐに俺を店から連れ出した。

 いったいなんだというのだろうか。

 俺は心に人目のつかない裏通りまで連れてこられる。

 いったい俺を拉致してなんのつもりだろうか。


「どういうことなんだ……? 説明してくれ」

「どうもこうもありませんよ。先輩には危機感が足りませんね」

「はぁ」

「これ見てください」


 心は、先ほど俺がツイートした画像を見せる。

 これがなんだというのか。


「これ、さっき先輩がツイートした画像です。思いっきり店の場所がわかる写真じゃないですか。こんな画像あげちゃだめですよ。位置バレしますよ?」

「ああ、それでお前は俺の居場所がわかったのか」

「ああ、じゃありません。先輩はもっと有名人の自覚を持ってください。基本、写真は全部予約投稿で時間差投稿すること! このくらい常識ですよ?」

「なるほどな……。き、気を付けるよ……」


 そういえば、心は有名ダンジョン配信者としては先輩だったな。

 有名人になるってことは、こういうことにも気をつかわないといけないのか……。

 大変だなぁ……。


「まあ、今回は何事もなかったからいいですけどね。パパラッチとかにも、くれぐれも気を付けてくださいね。ストーカーとかも」

「まあ、俺みたいなのをストーカーするような奴はいないだろう」

「そうとも限りませんよ。先輩はけっこう女性視聴者にも人気なんですからね」

「はぁ!? 嘘だろ!? 俺みたいな冴えないオッサンがか?」

「先輩、私のプロデュースでかなりかっこよく仕上げたじゃないですか。服もちゃんとして、メイクもして」

「ああ、その節はお世話になったな」

「あの写真とかけっこう評判で、イケメンだっていうんで、女性ファンも多いんですよ?」

「ま、マジかよ……」


 まさかそんなことになっていたとは……。

 俺は自分が動画を上げる以外であまりインターネットはみないから、評判とかはよく知らなかった。

 俺みたいなオッサンにでも需要があるのか……?

 なんだかうれしいような、怖いような……だ。


「ところで、先輩」

「なんだ?」

「私が服選んでいろいろ買ったのに、今日の服装はいったいなんなんですか?」

「え……? ああ、これか。いいだろ? さっき買ったんだ。ブランドのやつでな。一着30万する」

「はぁ……ちょっとお金が入ったからって、そんなアホみたいなもの着て……」

「えぇ……? これ、だめか?」

「はっきり言って、悪趣味です」

「まじか……」


 自分ではいいと思って選んだから、がっかりだ。

 やはり俺にファッションのセンスなどないのだろうか。


「この様子だと、先輩は他にもいろいろやらかしてそうですね……」

「う……」

「ここは私がインフルエンサーの先輩として、またいろいろレクチャーしてあげましょう」

「たのむ、心先生」


 ということで、俺はまた心のお世話になることにした。

 さすがだぜ心ちゃんは!


「先輩、今家はどちらに?」

「家……って、前住んでたところだけど? お前も来たことあるだろ」

「まだあんなボロ屋に住んでたんですか!? 今すぐ引っ越しです!」

「ボロ屋って、そんな酷くないぞ? てか、そんな引っ越しって……急だな」

「はぁ……先輩、今あなたは世界的にも有名人なんですよ? セキュリティガバガバの家に住んでちゃだめです。もしかしたらもう既に、盗聴器とかしかけられてるかもしれませんよ」

「えぇ……!? そんなことあるの!? こっわ」


 心がいうには、今の家はいろいろと危ないそうだ。

 まず、泥棒に入られる危険性もある。

 それに、迷惑系ダンチューバーが凸ってきたりとか。

 他にも、盗聴や盗撮、ストーカー被害のおそれ。

 パパラッチによるスキャンダルのおそれなどなど。


「マスコミにもおそらく家はバレているでしょうね。週刊誌が常に見張ってると考えてください。こんなんじゃ、家に春日さんを連れ込んだ時点で一発アウトですよ」

「まじか……。いや、いまのところ春日さんを連れ込めるような予定はありませんけども……」

「とにかく、ちゃんとしたセキュリティのあるタワマンとかに引っ越してください! 私がいいところ紹介しますから。今から契約にいきましょう。お金はいくらでもあるんでしょう?」


 ということで、俺は心と不動産屋に。

 そして、タワマンを一発購入。

 ひえええ……めっちゃ金飛んだ……。

 

「それと、確定申告の準備はしてるんですか? ダンジョン配信者は個人事業主です。今までみたいな公務員とは違うんですからね」

「確定申告……? なんだそれ……? 全然わからねぇ……」

「はぁ……。ぼーっと生きてんじゃねえよ! 全く……。いまから私の家にきてください。確定申告とか、法律のこと、みっちり叩き込みます。お勉強しましょう」

「ひぇぇえ……」


 ということで、地獄の心ちゃん教室が始まった。





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俺の【ダンジョン探索者なり方講座】がハードすぎて誰もついてこられない件について~上司に頼まれて動画とったら規格外すぎたらしく、なにやらバズっているらしい~有名人になってしまったので仕事辞めて配信します 月ノみんと@成長革命2巻発売 @MintoTsukino

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