第33話 防具屋


 変異フェニックスに防具を焼かれてしまったので、俺は防具屋にやってきた。

 防具の買い方も、いろいろと手順がある。

 防具の買い方も「ダンジョン探索者なり方講座」としては説明しておかねばならないからな。

 ちょうどいい機会だ。


「というわけで、これから防具を買います」


【そういえば、前の防具はなにつかってたんですか?】

【見たことない防具だったよな】

【どこで買ったんだ……?】


 と、コメント。

 俺はそれに応える。

 

「えーっと、前の防具はですね。あれはダンジョンができた初期に買ったやつですね。駿河屋が限定で50個だけ売ってたやつです」


【は…………?】

【え…………?】

【待って、ダンジョン初期って、それ性能クソじゃないの……?】

【なんで買い替えなかったwwww】

【ものもちよすぎだろwwww】

【そりゃみたことないわけだwwww】

【いやどんなだよwwww】

【買い替えろよwwwww】

【旧式すぎるだろそれ…………】

【よくそんなので戦えてたな……】

【ボロボロすぎるwwww】


「いやだって。防具って高いじゃないですか。ただのしがない公務員だった俺には、そんなにほいほい買えませんよ……」


【そういえばこいつ公務員だったな……】

【強すぎて公務員だったこと忘れてた……】

【専業探索者でもおかしくない】

【いやそれは草】

【給料で買ってたのかw】


 ダンジョンの装備は、どれも高すぎる。

 公務員だった俺には副業もできなかったからな。

 ふつうは、ダンジョンで手に入れたものを、売ったりすることで、ある程度稼げる。

 だけど公務員だった俺は、ダンジョンから得たものを売ったりして稼ぐことは禁止されていた。

 だから給料でなけなしの金をはたいて買ったのが、あの防具だったのだ。

 それから俺はその防具を自分で改造しながらつかっていた。

 それがとうとう壊れてしまったのだ。

 まあ、今は公務員じゃないし、金もあるから、ちょうどいい。

 とびきりいいものを買おう。


「そうだ。防具を買う前に……っと」


 俺はアイテムボックスから、フェニックスの羽根を取り出す。

 先ほどドロップしたフェニックスの羽根だ。

 俺はすでに予備のエリクサーを腐るほど作ってあるから、もうこのフェニックスの羽根はいらない。

 なので、防具を買うついでに、これは売ってしまおう。


「これ、売りたいんですケド……」


 公務員だった俺は、ダンジョンのアイテムを売ることができなかった。

 だから、今回ダンジョンのアイテムを売るのは初めてだ。

 そういえば、ダンジョンのアイテムは、レアのものならそこそこの値段で売れるってきいた。

 なかには、ダンジョンのアイテムを売るだけで暮らしている探索者もいるのだとか。

 だけどまあ、フェニックスの羽根は、エリクサーを作るための汎用アイテムだ。

 こんな素材アイテム、フェニックスを倒せばいくらでも手に入るものだし、どうせ大した値段はつかないだろう……。


 そう思っていたのだが……。


【あ…………】

【これは…………】

【やばい…………】


 店員は、思わぬ値段を提示した。


「おお……! これは……! フェニックスの羽根……! こちらでしたら、1億5000万円の買い取りになります」

「は…………?」

「だから、1億5000万円です」

「う、うそだろ……?」

「いえ、フェニックスの羽根は超レアアイテムなので、そのくらいします」

「な、なんだと…………」


 ダンジョンのアイテムってそんなに高く売れたのか……!

 なら、もっとはやくに公務員やめて探索者になればよかった……。


【草wwwwwww】

【適正価格わかってなくて草www】

【そりゃあそのくらいするよwwww】

【あたりまえ定期】


「えぇ……? フェニックスの羽根って汎用素材アイテムじゃないのか?」


【そんなわけないだろwwww】

【超レアだってwwww】


 どうやらそうらしい。

 俺は大金を店員から受け取った。

 じゃあ、もしかしてなんだけど、他のアイテムも高く売れたりするのか……?

 試してみよう。


「あの……これも売りたいんですけど……」


 俺はエリクサーを取り出した。


「こ、これは……!? 幻のエリクサー……!? 3億円です……!」

「はあああああああああああああ!?」


 エリクサーなら軽く1000本は持ってるぞ……!?

 もしそれを全部売ったとすると……。

 いち、じゅう、ひゃく……。


 3000億……!?


「ま、まじかよ…………」


 俺ってもしかして、大金持ちになれるんじゃないか……!?

 俺はアイテムボックスのめぼしいアイテムを売って、とりあえず500億ほど手に入れた。

 他にも講座には、配信で得た広告収入や、スパチャのお金が入っている。

 これなら、高級な防具が買えるぞ……!


「あの、店で一番高い防具ください」

「ほ、ほんとですか……!?」

「はい」

「お、お買い上げありがとうございます!」


【うわwwwwwwww】

【金にものいわせてwwww】

【大人の大人買いだ……!】


 店にあった一番高い防具は、セットで100億した。

 俺はそれを買って、着てみた。

 かなり着心地がいい。

 みためもめちゃくちゃかっこいい。


「おお……!」


 気に入った。

 これなら、ますます強い敵と戦えそうだ……!


【かっけええええwwww】

【つよそう】

【最強だった杉田がさらに最強に……】

【どうなるんだ……これ】


 ついでに、武器も店で一番高いものを買っておいた。

 かなり金をつかってしまったけど、まあすぐにまた稼げるさ……!

 



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