第32話 変異種
さて、フェニックスも倒したから帰るか……。
と、そのときだった。
俺の目の前に、もう一体のフェニックスが現れた。
しかも、そのフェニックスはなにか変だ。
普通のフェニックスよりも体が大きく、炎の色も青い。
変異種……!?
【なんか出たああああああああ】
【うっそだろおい】
【変異種やん……!?】
【にげてええええええ】
変異種、または亜種や異常種とも呼ばれるそれは、通常のモンスターとは比べ物にならないくらいの強さの強敵だ。
なにかが原因で、突然変異してしまった個体のことだ。
変異フェニックスは、俺に襲い掛かってきた。
なに、変異フェニックスであろうと、羽根をむしり取ればいいだけだ。
しかし――。
「きえええええええ!!!!」
俺はフェニックスの攻撃を、水魔法をコーティングしてガードする。
しかし……!
変異フェニックスの青い炎は、俺の水魔法を貫通し、俺の鎧に燃え移った!
「なに……!?」
【やべえええええええ】
【燃え移った……!!!!!】
【貫通した!!?】
【うそやん】
【杉田がおされてる……!?】
【さすがにやばくないか……?】
【杉田でもやばいぞこれは死ぬ】
「まじか…………」
俺はその場で鎧を脱ぎ捨てた。
くそ……俺の長年愛用してきた装備が……。
しかし、まさか水魔法を貫通してくるとはな……。
すぐに鎧を脱ぎ捨てたおかげで、俺の肉体は燃えることなく済んだ。
だけど、これは羽根をむしりとるのは無理そうだな……。
フェニックスに近づいたら、今度こそ燃えてしまう。
俺が脱ぎ捨てた鎧は、地面で燃えて消えた。
ちなみにだが、フェニックスの炎が消えないのは、その炎がフェニックスの肉体に接触しているあいだのみである。
燃え移った炎は、ほかの普通の炎と同じく、水をかければ消える。
「これは……どうするかな……」
俺はためしに、水魔法をフェニックスに向けて、思い切りぶつけてみる。
しかし……。
「だめか……」
フェニックスの炎は、一度は消えたものの、すぐに復活する。
これがフェニックスの本来の厄介さだ。
いくら炎を消しても、その炎は完全に消えることはない。
だからこそフェニックスは不死身で最強なのだ。
「そうだな……。水がきかないか……。だったら……」
俺は炎魔法を発動させた。
【え……ちょ……w】
【この人なんで炎魔法となえてるの……!?】
【ど、どういうことだ……!?】
【血迷ったか……!?】
【やめろ……!!!!】
「だったら……それより大きな炎をぶつけりゃあいいだろ……!!!!」
俺はこれでもかというほど、全力で炎を練る。
俺の頭上に、巨大な炎の塊ができあがる。
そしてそれを見たフェニックスは、なんとそれに恐れおののき、踵をかえし、逃げようとしている。
【はあああああああああああああ!?】
【なんだそれ……!?】
【でけええええええええ】
【うっそやんwwwwww】
【そんなのあり……????】
【フェニックスびびってて草】
【いやフェニックスの顔wwww】
【逃げてて草】
【やべえええええwwwww】
「うおおおおお……!!!!」
俺はその炎を、フェニックスに向かって投げる。
「メテオ・ストライク……!!!!」
――ズドーン!!!!
背中を向けて逃げるフェニックスに、俺の炎魔法が直撃する。
フェニックスのそれよりさらに熱く、巨大な炎は、フェニックスの不死身の炎ごと、フェニックスの肉体を燃やし尽くした。
フェニックスはあとかたもなく消え去った。
「よし……!」
【いや、よしじゃないが……】
【なにやってんのwwwww】
【いやその理屈はおかしい】
【なんでそうなるwwwww】
【フェニックス燃やしてて草】
【ありえねえええwwww】
【あほやwwwwwwww】
【やばすぎwwwwwww】
【杉田最強!!!!】
【フェニックスって燃えるの……?】
【えぇ…………】
【ドン引き……】
さて、無事に変異フェニックスを倒すことができたな。
しかし、なかなかの強敵だった。
変異フェニックスは初めて出会ったから、危ないところだった。
咄嗟に炎で燃やすというアイデアが思い浮かんだからよかった。
配信の同時接続者数は、1000万人を突破していた。
それにしても、防具が燃えてしまったな。
さっきスパチャももらったことだし、装備を買いにいくか……。
「えーっと、防具が燃えてしまったので。せっかくなのでこのまま、配信したまま、防具でも買いにいきましょうか」
俺はダンジョンを出た。
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