第18話 イレギュラー


 中層にやってきたときだった。

 すでに同時接続数は20万人を超えていた。

 

 ここらでちょっと気本に立ち返って、あれを説明しておくか。

 以前の動画のときには説明し忘れていた。

 まあ、あれは金閣寺ダンジョンが人が少ないダンジョンだってのもあったからな。


「えーっと、今からサーチについて説明しますね。これは大事なのでよく覚えておいてください」


【サーチ? なにそれ? おいしいの?】

【初めてきいたんだけど……】

【さもある言葉かのように言うな】

【また造語?】

【勝手に足すな】


「いや……サーチって探索者の基本じゃないんですか?」


【いや……違うと思うぞ……】

【俺はAランクだけど少なくともAランクだと常識ではない】

【普通はそんなの使えないよ……?】


「えぇ……? まあ、いいや。サーチってのはその名の通り、周りに人やモンスターがいないかを把握するためのものです」


【ほう……それはすごい】

【便利そうだ】

【どうやるの……?】


「えーっと、まずは魔力を練って、円状に伸ばしてください。身体を中心にして、ダンジョンの中に円形に広がっていく感じです」


【は…………?】

【いきなりなにいってんだこいつ】

【意味わからん】

【魔力を伸ばす……? 何言ってんだ?】

【またわけのわからないことを……】

【今日も杉田くんは平常運転です】


「お前たち、ダンジョンの中ではサーチを怠るなよ」


【いやそんなこといわれてもw】

【そもそもできないw】


「えーっと、俺の場合は大体サーチの範囲は15キロメートルくらいですかね。つーかこれが限界」


【広……!】

【そもそも基準がわからない】


 俺はダンジョンの中に向けて、サーチを使った。

 すると、サーチの円形内にいるモンスターや人の居場所が鮮明にわかる。

 これがサーチだ。


「なんだこれ…………!?」


【どうした……!?】

【なになに……?】


「いや……サーチに人が映ったんだけど……。なんかめちゃデカいモンスターと戦ってる」


【なにそれヤバそう】

【ヤバいじゃん】


「なんか魔力の反応が薄いし、もしかしたらピンチかも」


【助けにいこう!】


「ああ、そうだな」


 俺はさっそく、サーチで見つけた人影のほうへと行ってみることにした。

 ダンジョンの中を走り回り、なんどか角を曲がる。

 するとそこには、一人の探索者がいた。

 どうやら探索者はモンスターに襲われているようだった。


「大丈夫ですか……!?」


 モンスターに襲われていたのは、見目麗しい女性探索者だった。


【うおおおおお……!? 美人キターーーーーー】

【おい、待てこれみるるんじゃねえか?】

【ほんまやみるるんや。ほんものや】

【有名人……?】

【ダンジョン配信者だよ。アイドル的人気がある】


 ほえ……そうなのか。

 どうりで可愛いわけだ。

 女性は俺の顔を見ると、俺の名前を呼んだ。

 

「にゃにゃ……? あ、あなたは……! って……杉田さん……!?」

「え……? 俺を知ってるんですか?」

「もちろんです。有名人ですもの……」

「それで、状況は!?」

「今あいつに追われているんです……ちょうど、助かりました……!」

「あいつか……!」


 女性を追いかけていたモンスターは、なんとオーガだった。

 しかしなぜオーガがこんなところに……?

 ここは中層で、オーガは下層のモンスターのはずだ。

 もしかして、イレギュラーか。

 イレギュラーというのは、こうして違う層のモンスターが上の層にまで出てきてしまうことだ。

 当然、探索者はそんなことに対処できないからたいていの場合は無残に殺されてしまう。

 この場に俺がいて、本当によかったな。


「えーっと、みるるんさんですっけ。立てますか?」

「は、はい……!」

「逃げていてください。あとは俺がなんとかします……!」

「で、でも……相手はオーガですよ……!?」

「大丈夫。オーガなら何度も倒した……!」


 俺は剣を抜く。

 そして、オーガに向けて一撃――。


「閃光――雷導電鳴斬らいどうでんめいざん――!!!!」


 ――バリバリバリィ!!!!!


 俺はオーガを一撃でノックダウンした。


「ふぅ……危ないところだった……」


【危ないところだった……じゃねえよwwww】

【なんだ今の……】

【意味わからんわ……】

【今のなに……!?】

【ユニークスキルか……!?】

【中二病で草】

【くそかっけええ】

【耳おかしくなるかと思ったわ】

【ポリゴンショック】

【なんでオーガが一撃で死ぬんだ……?】


「いやぁ……さすがに今のは解説とかしてる暇なかったから、なりふり構わず大技で仕留めたよ。ほんとはオーガも攻略法があるけど、それはまた今度ね」


【じゃあ今のが本気ってこと……!?】

【いっつも攻略のために手抜いてたのか】

【攻略法つかわなくても普通に勝てるってことね】

【どんだけ強いんだよ……】

【いや攻略法きいてもどうせ真似できなさそうだから、もういいぞ】


 俺がコメントにうつつを抜かしていると。

 みるるんが俺に駆け寄ってきた。


「あの……! 杉田さん。さっきはほんとにありがとうございました。杉田さんがいなければ、死んでいるところでした……」

「まあ、たまたま通りがかっただけだよ。いいってことさ。ダンジョンの中はお互い様。助け合いが大事だからね!」

「ありがとうございます……! かっこよかったです!」


【おおおおお! みるるんフラグ立った……!?】

【みるるん助けるとかやるなー】

【これは落ちたな】

【みるるんのファンだけど、みるるんの配信から来ました!】

【みるるん救ってくれてありがとうございます!】

【マジで杉田っていいやつじゃね?】

【英雄じゃん】

【かっけえわ普通に】

【よくやった!】


 チャンネル登録者は20万人になっていた。

 そして同時接続数は30万人だ。




==============

【あとがき】


十万字書き溜めました!

なので安心してついてきてください!



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