第17話 The state of the battle
セントールが必殺の一撃と言わんばかりに大きく槍を振りかぶって来た!!
『喰らえ!獄卒の魔槍!』
「
流石の必殺技なのか、私の物理反射スキルと拮抗している!!
その隙に私は
技を中止し、振り返ると陽光の反射の反射ダメージを喰らい、吹き飛ぶセントール!!
立ち上がりこちらに振り返った瞬間に私はセントールの口にある物を投げ込んだ!!
『―――っぐっあっあぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!』
途端に苦しみだすセントール!!
先日舞衣から貰った対偽神向け毒薬を文字通り投薬したのだが…
目には目を的な発想で毒を投げたのだが、効果が
罪悪感が半端ないっ!!!
介錯してあげよう!
「
刀が背骨の様に分裂し、セントールに巻き付く!
「
分裂した刃が爆発と炎を上げながら引き抜かれると、セントールが断末魔を上げて消滅し、いつもの偽神の靄になり私の中へ吸われていく。
…私、決め技間違ったかしら…
酷く残酷に
…もう毒は使わない様にしよう。
取り敢えず自分の解毒をする為にバックパックから解毒剤を出し一本飲む。
このレシピ、猛毒も解毒も自在に作れる舞依の特製で、効かなかった場合クーリングオフという名の直接返却も出来る優れモノなのです。
「おお、月詠早かったじゃないか?」
半日かけてリトルフェミアに夜帰還し、事のあらましを話して公爵様に爆笑されてしまう。
「まぁ、命のやり取りをしていたら気分が悪くなる事もたまには在る。いい経験になったな」
「いい経験だったんでしょうか…」
疑問を唱えてみる。
「
「喜んでいただきます」
身体は正直だ。
「食べ終わって休息したら、東のイグムンド王国へ向かってみたらどうだ?」
「イグムンド…」
「昔は少々軍事国家の面が強かったのだが、月花達が介入した事によって政権交替してな。風通しのいい国になっているよ」
「ママ達そんな事やらかしてたんですね…」
「良い事だから気にするな。ポータルクリスタルもあるし、行くに越したことないぞ?途中に見えた港町サン・ヴァラドにもポータルクリスタルがあるぞ?」
「少し仮眠してから伺ってみます!」
コロちゃんも
―――翌朝。
イグムンド王国へ向かうべく、準備をしていると公爵様がコーラを片手に入って来た。
「月詠、昨夜イグムンド王国を薦めたが、一つ緊急の案件があってな…丁度適正レベルの者が出払ってるのだが受けてくれないか?」
「案件?どんなお話ですか?」
「実は秘書のフェリルが妊娠中なのだが、流行りの風邪に掛かってしまってな。あまり妊婦に強い薬を使いたくないのだが、
「調達依頼なんですね」
「ああ、だが周辺の棲息モンスターがなかなか手強い処でな。魔法耐性が強いモンスターが比較的多いのだ」
「成程…
「済まないな。物はツリガネニンジンという野草で、こういう見た目だ」
外見を映した紙を渡される。
淡い水色の釣り鐘状の花が咲いている野草だ。
「これを沢山取ってくればいいですか?」
「在庫もあれば助かる人も多くなる。場所はガルワルディアの北東に崩壊した遺跡があるのだが、その
「分かりました!行って来ます」
ガルワルディアまでポータルクリスタルで飛び、そこから飛行結晶で現地まで向かう。
幸い天候は良く、絶好の飛行日和だ。
見晴らしも良く、ガルワルディアから北東へ小一時間程飛んだ場所にその遺跡と湖はあった。
上空から
蒼い可愛い実を付けていて絵より可愛い植物だった。
御免なさい、根まで取らないから摘ませてね。
植物に詫びながらもナイフでサクサク斬っていく私。
と、その時肩にいたコロちゃんが何かに反応した?
瞬間、地面が揺らぐ!いや、地面が沈んだ!?
結晶飛行で飛び上がると、今まで屈んでいた地面が大きく沈み、中から巨大な芋虫が口を開けて来た!
想定していたより大きく、見た目よりも機敏だ!
生理的に無理な外見!
「
ミミズの様な長い胴体が次々と地面から伸びて来るので一撃入れてみるが、貫通するまで行かない!
魔法耐性が高いとは聞いていたがスキル耐性も多少あるのか!
垂直に伸びた胴体の先が蛇の様に唸り、こちらを捕食しようと首を繰り出す!
「
空中で後方に下がりつつ芋虫の口に範囲攻撃を当てる!
ついでにコロちゃんが口から炎攻撃!
斬撃攻撃は効いている様で切り口から緑の液体を噴き上げ、傷をコロちゃんの炎が焼く!
流石、スキルでも魔法でもない猫属性攻撃!!
この大きさを拘束出来るだろうか?
「レージング!ドローミ!」
不壊の鎖で伸びた身体を
「ブック!」
索引を指でなぞり本に名前を付ける!!
「ブック・オブ・サバイブ!!適者生存出来るか!?」
芋虫の根元から虫が現れ食い散らかし、植物が根を生やし生物としての成長を遂げていき…やがて芋虫は細かく崩れ去っていった…
…なんだか前回の残酷さを抑えるという反省を生かし切れていない自分をひしひしと感じたりするが、先に襲われたのだし許してもらおう。
細かくなっても生理的に受け付けないので少し離れた場所で再び植物採取を続け、預かった袋が一杯になる程度だけ頂いて、踵を返そうとした瞬間。
「おい、女」
何処からかフードを被った人物が歩いてきた。
声は…中世的で男か女か分からないが背中にロングソードを帯剣している。
「その本をどこで手に入れた?」
「教えませんし、渡しませんよ?」
「話が早くて助かる!」
ロングソードを背中から抜き、突きつけようとしたのを神速で抜いた罪なき刀で弾く!!
この一撃で折れない武器は大体魔器だ、気を付けなければ!
「他にも武器を持っていたか!?ならば!」
急接近してきて、高速の四連撃を繰り出して来たが、こちらはストライフの女神の盾で防ぐ!
「それも魔器か、この剣を防ぐとは!」
神器なのだが面倒なので敢えて訂正はすまい。
と、瞬間屈んで足払いを喰らう!
油断した!
姿勢を崩した私に鋭い横薙ぎが振るわれるが、飛行結晶で姿勢制御し、横薙ぎを刀で受け止めた!
「トライアングラー!」
突然フードの敵が三人に増えた!
幻術かと思いきや物理的な剣の重さも増えている!
「…本を渡せ、そうすれば痛い目に合わないで済む!」
「読書家が本を易々と手放すと思わない事ね!」
三本の剣を斬り上げで跳ね上げて、すかさず後方に移動!
コロちゃんがファインプレーで男に凍てつく吐息を浴びせ、三人纏めて下半身を大地に氷で縫い留めた!
「くそ、動けない!謎の生き物め!」
あからさまにショックを隠せないコロちゃん!
「おおおおおおおお!!」
敵がロングソードに炎を纏わせて地面に突き刺すと、半ば強引に氷を割った!
と、同時に分身と思しき二体が消える!
「渡せ!世界の為にそれは必要!!」
フードの敵が構えを変えた!
何か技を繰り出して来る!!
「退廃する六芒星!」
魔器に六芒星が魔方陣となって現れ、そのまま高速の突きを放ってきた!
「
高速移動抜刀術でこちらも対抗する!!
鈍い金属音がするが、相手のロングソードを真っ二つに斬ったこちらに軍配が上がった!!
「…私の魔器を折るか…貴様、名前を教えろ」
「個人情報なので教えません!」
「顏は覚えた…本はいずれ頂く…」
そういうと空間移動系のスキルなのか、背後に空間の裂け目が現れて中へ消えていった。
顏は覚えたって…どこかの不良だろうか…
本ももしかして、あのアカシアの記録と勘違いされてるのかも知れない。
今度現れたら聞いてみよう。
無用な闘いは避けてママを追わないと!
帰り道にガルワルディアのお医者様の処へ寄りツリガネニンジンを御裾分けし、リトルフェミアに戻る。
これで暫くは大丈夫だろう。
「済まなったな、これで薬不足から当面解消される」
「いえ、秘書さんの為ですから」
「先程調剤師にツリガネニンジンを渡したから薬が出来たらフェリルも楽になるだろう。親子二代であの子を救ってくれて感謝だな」
「ママもフェリルさんを助けたんですか?」
「ああ、この国にはあいつに助けられた人間は数多いぞ?母を誇れ」
「はい!」
比較的早く帰れたのか、まだ昼にもなってなかったのでそのままイグムンド王国へ出掛けようと思ったのだが…
「月詠、一度帰ってママに話をしてきなさい」
「えっ」
「露骨に帰りたくない様な顏したな。黙って出てきたのなら、無事な姿を見せてやって、しっかりしている処を見せつけてやれ」
「…はい」
黙って出てきたし、元々三日ぐらいで一度帰るつもりだったのでいい機会だろう。
「戻ってきます。ダイブアウト!」
一瞬で転送装置に戻ってきた。
コート等の装備一式をロッカーに収納し、恐る恐る地下から一階に上がり、式部ママの顔色を伺おうとしたが…
背後から突然頭を掴まれるっ!
「おーかーえーりー」
「あらママン♡ただいま戻りました」
小一時間説教された。
「向こう見ずなのは月花にそっくりにゃ…とりあえず御飯にするからお風呂入って着替えてきなさい」
「はーい」
二日ぶりにお風呂…もしかしてファンタジー世界でもお風呂とかあるのだろうか?
温泉はあるって聞いたけど…
今度公爵様に聞いてみよう。
お風呂を常備警備している玩具のアヒルとコロちゃんと混浴する。
コロちゃんも猫だから水が苦手なのか、湯船にはあまり浸からず、大体は強引に私に洗われて、湯船では私の肩で大人しくしている。
ふうっと一息つくとコロちゃんも「ににん」と一息ついた。
普段動いてこなかったから意外と体力を使う物なのだな、戦いは。
アニメや漫画だともっと主人公が強くて、サクッと倒してる余裕の姿も見るが、容易に熟すのは難しい。
お風呂を出て着替えると、鈴音さん、カイネ、グレースさんと全員揃っていた。
「おかえりー月詠!」
謎のハイタッチをする私とカイネ。
「おお、月詠おかえり」
「お帰りなさいデス!」
鈴音さんとグレースさんも帰還を喜んでくれた。
「えへへーただいま…」
全員で式部ママのご飯を頂きながら私の話を聞くモードになる。
ちなみに今日は麻婆茄子と天津飯とサラダだった。
そんな簡単に月花ママが捕まるとは全員思っていないのでその辺りは兎も角、戦いの経験は細かく聞かれ、寸評される。
特に戦闘教官のグレースさんの指摘は的確で為になった。
「それと…鈴音さん、音遮断の魔法いいですか?」
「ん、待ってね」
小さく何かを唱えると周囲の音が聞こえなくなる。
内外共に音を遮断しているのだろう。
「私のブックを狙って来た人が居ました」
「もしかして、アカシアの記録と勘違いした…?」
「戦闘中に『それは世界の為に必要』と言ってました」
「相手の言葉からは
「相手の顔は見たのかい?」
「いえ、フードを目深に被ってましたし、声も中性的で男女の区別も付きませんでした…」
「月詠、因みにそのブックって何にゃ?」
急に周りがざわつく!
「月花と式部が月詠に持たせたのだとばかり…」
「いや、知らないんだけど…神器かにゃ?」
では、ブックは…月花ママが…?
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