第10話 shaman
オーディンとミニ式部ママが来てくれた分、夜間等の暗殺者撃退に活躍してくれて、とても助かっている。
小花さんと鈴音さんも介護と危険な時間が減っているので助かっているそうだ。
私も暇があればママ達の様子を見に行っているが、偽神が見つかるのは決してコンスタントではない為、徐々に学校へ登校する回数も増やしている。
偽神に関しては、この私達の世界にもアナザーバースにある剣と魔法の世界・カムドアースにも現れる。
忘れがちだが、カムドアースでママ達から偽神を作り出した人も
幸せに暮らしていた私達の時間を奪った相応の報いは受けてもらう。
うに
学校でそんな事を考えてたら舞衣にほっぺを摘まれた。
「
「私達まだ十四だからケアしてれば大丈夫だって!それより聞いて!月詠の助けになるかと思って作ってみたんだ!」
小瓶をポツンと机に置かれる。
中には透明な液体が入っている。
手に取って中を凝視するも水にしか見えない。
「これ…何?」
「普通の小瓶だけど、接触毒が塗ってあってね?無味無臭無痛毒で二十四時間で綺麗なまま天国へ行けるという画期的な…」
「うん、まずはその画期的な毒の解毒剤をくれないと、体育の時間に目撃した舞依の下着の柄を口走るから」
「落ち着いてー!その透明な液体が解毒剤だから!ちな私はもう飲んでるから平気ー!♡」
舞衣の横ピースにちょっとイラッとするものの、毒の瓶に口づけながら解毒剤を飲むのをどうしようと考えて、思いついた妙案がコンビニで貰って使わなかったストローを刺して飲むというものだった。
舞衣が関心して拍手をしたので、ほっぺをうにっとしながら瓶を窓から投げ捨てて
「えー!使ってくれないのー!?」
「私が危険だから使わない!責めて私が窮地に立たない物を作って!」
「はーい…」
舞衣は昔からこうだから、油断ならないっ!
久しぶりに学校を満喫し、病院でママ達の顔を見てから家に帰る。
洗濯物を回している間に鈴音さんの喫茶店でアイスコーヒーとプリンを食べる。
カイネはカムドアースに居た時間が長いからって地の利を活かして偽神探しに行ってくれてるらしいから嬉しい。
私も出掛けたいが、【社】の連絡と入れ違いになっても困るので、大人しく待機している。
あれ?洗濯機に消臭ビーズ入れたっけ?
タオルの洗濯物はパン-パンと振ってパイルを立ててから干す派です。
顔に当たった時の感触が全然違うので。
洗濯物を干し終わったタイミングで、【社】から偽神の連絡があったので内容を確認してカムドアースへ降り立った。
場所はマーメイドの都ウォータリアの傍の大河。
大河から時折超巨大なサハギンが見え隠れするらしい。
私は大河に向かって名乗りを上げる!
「我は【
『……王…王は二人もいらぬ』
大河から何かが跳ね上がり、地響きを立てて地面に降り立った。
身の丈十五m…頭から尻尾までヒレがあり、鱗に覆われた筋肉質な体、巨大な三叉の鉾を持つ水生生物…サハギン。
口振りからしてサハギンキングだろう。
『王は一人でよい…』
「そうね、貴方は王には向いてない」
私がそう言い終わる前に三叉の鉾を突き出されたので、槍の先を名も無き刀の先で止める。
勿論、
「その巨躯で私に技を止められるなど片腹痛い」
力押しが続くがその内、サハギンキングが口から巨大な水玉を吐き出したので、陽光の反射でそのまま相手に反射させると、体制を崩した!
「
高速移動斬りで相手の右肩をすれ違いざまに斬りつける!
だか以外と肉質が硬く、斬撃が浅かった!
『
「私は貴様を王とは認めていない。調理前の魚を捌く感覚と一緒だ」
三叉の鉾の突きを身の丈に合わないほどの連撃を繰り出してきたので離れて距離を取り着地する。
『かかったな!』
着地した足元の水が私に纏わり付き水球の様になる。
『…人はエラの無い不完全な生き物…水中呼吸出来なければ死ぬしかない』
「その様だな」
『何だと…?』
名も無き刀の
「王であるが故に!その程度の攻撃は効かぬ!
現れた二匹の狼がまとわり付く水球を喰らい尽くす。
「芸のない小魚、それで終わりか?」
横回転して尻尾攻撃からの三叉の鉾攻撃で攻撃してくるが、大振りすぎて鋭さがなかったので名も無き疾風でサハギンキングの頭に乗り軽く刀を突き立てた。
「攻撃とはこういう事だ。見てから避けれる攻撃は攻撃ではない」
頭上の私を掴もうとしたので真上に高く飛ぶ!
「
頭上高くから、初速から高速・再生不可の突きを五段攻撃をつけて脳天から貫く!
股下まで貫通すると、飛び退いて相手の転倒から免れる!
すると、留めとばかりにコロちゃんが亡骸を焼いてくれた。
…なんか白身魚っぽい若干いい匂いがしなくもないが気のせいだと思っておこう!
「有り難うコロちゃん」
「ににん!」
と、安心していると、倒れる方向に人がいるのに気づいた!
「ファングハーケン!」
サハギンキングの顔面にハーケンを打ち込み、こちらに倒す様にバランスを変えて私達も巻き込まれない様に避けた!
「大丈夫ですかー!」
女性と思しき人影は頭を下げて去っていった。
何故あんな所に居たのだろう…?
何はともあれサハギンキングから
病院でママ達に靄を渡して家に帰宅すると、鈴音さんとカイネが親子で料理をしてくれていた。
「月詠おかえりー」
「座って待っててー!僕達がやるから」
「有り難う…助かります」
座って待っていると、
「今日は中華なんですね!」
「戦って帰ってきた月詠にしっかり栄養を取ってもらわないとね!」
ご飯もしっかり炊いてあったのでその日は三人でがっつり中華を堪能した。
「ママ達にも食べさせてあげたい」
「そうだねぇ…奪われたものが全て集まる前に意識は戻るかもしれないし、希望は持とう?積み重ねよ」
「…母さんが珍しくいい事を言った…」
「カイネはこの後一人で皿洗いね?」
「いやー!嘘!冗談だってばー!」
「あはははは!」
久しぶりに笑った気がした。
食事後、近所のドラッグストアに出掛けた。オーディンとミニ式部ママに差し入れを持っていこうと思ったからだ。
かつて一つの存在だったとはいえ、不眠不休で守ってくれているのは本当に有り難い事だからだ。
ついでにコンビニでご飯も買っていこう。
病室に入ると、靄を戻しているオーディンの姿があった。
「…また襲ってきてたんですか?」
「あれ?月詠どうしたの?」
「もう遅いから帰るにゃ」
「いえ、不眠不休で守って貰えてるので、責めてエナドリとかご飯をと思って…」
「…気を利かせてエナドリを差し入れする気遣い!これはもう鹿鳴の血としか」
「いやいやいや!体力低下を危惧してご飯を持ってくる気遣いは駒鳥鵙の血としか…」
「二人ともママ達と同じ喧嘩しないでー!」
流石、元々一人だった存在は同じレベルで揉め始める!
揉め続けていたから、そっと二人を放置をして家路に着く。
オーディン達が面白かったからついつい見入ってしまったけど…
夜道をそそくさと急ぎ、犬沢池の刺客に差し掛かると…
『待て』
声を掛けられた方向がおかしかったので上を見ると、
ただし、背中には大きな羽根、手には
偽神…けど今までと圧が違う!
『神を狩る
「さもあらば…何とする?」
『敵とか、そういう概念は毛頭ない…ただ』
「ただ…?」
『ワシより上か下か!?それのみ!』
上から急下降しながら錫杖を振り下ろして来たのを名も無き刀で受け止める!
その瞬間、男の背後からぬるりと鬼二体出て来て襲い掛かってきた!!
「
こちらもフレキ。ゲリと二体出して鬼の相手をしてもらう!
『隠し玉とはやりおる!』
「フレキ、ゲリ!鬼はお願い!」
封印解除、
男が持つ錫杖の強度は高く、名も無き刀の刃が通らなかった!
ならば!
「
音速の連続突きを近距離から繰り出してみるが、錫杖を回転させ弾き返した!!
技の発動終わりに一旦距離を取ると、空いてる手で印を組み真言を唱える!
『オン ビラビラ ケンビラ ケンノウ ソワカ』
不可視の手の様な何かが現れ、身体を潰そうと握ってくる!
封印解除の効果が無ければ秒で死んでいた!
刀で抑えて力を断ち切ろうとする!
「月詠―――!後ろは任せろ!」
カイネとコロちゃんが背後で暴れている!
鬼が思ったより強かった様で、フレキとゲリのサポートに入ってくれた様だ!
「真言に鬼…
『ほう、後の世に名が残るとは光栄だのう』
「本当に腕試しだけの様ね?けど負ける…訳には…いかない!」
先程の不可視の力を弾き飛ばした!
『孔雀王より習得せし力、敗北は許されぬ!』
錫杖で再び攻撃してきて鍔迫り合いの状態になる!
『オン ビラビラ ケンビラ ケンノウ ソワカ』
近距離戦の最中に自分もろとも雷を何回も落として来る!!
稲妻のダメージが蓄積してくるが…接近戦を止めようとせず、動けない!
「召喚カーバンクル!」
カイネが呼んだカーバンクルが真上に現れて落雷を天に返し続ける!!!
「月詠!未だ!」
「ファングハーケン!!」
役小角の眼にハーケンを打ち込み、距離を取る!
下った事で追って来る相手を織り込済みで技を詠唱する!
「
ほぼカウンターで当てたにも関わらず深手には至らず、出血しながら雲の上に逃避したので距離を取って後を追う!!
切れ切れの雲の上に出ると満月が煌々と輝き、雲と小角を照らしていた。
『良き哉、神狩りよ。まだまだ強くなる貴様をここで倒してしまうのは勿体なき』
「では我を見逃してくれるのかな?」
『在り得ぬな、次が最後よ』
「…では死合うか!」
月光の降り注ぐ最中、相手の手の内を探る。
探るというより、もう九割見えているので我がどの切り札を使うかだ。
『参る!』
「
前にスキル・アビリティ反射、背後に物理反射を張った!
実は雲を抜けた瞬間から相手は利き腕もファングハーケンで貫いた目も逆になっていた。
つまり鏡像の姿で別に本体を隠していたので、実体が無い前方は動いてもスキル系攻撃!
後は本体は死角から物理攻撃で来るだろうと予測していたのだ!!
前後の読みが当り、前方は鏡像のみで背後の物理が効いたので吹っ飛ぶ前に拘束する!!
「レージング!ドローミ!!」
空間から
『まだよ!!!』
首が身体を離れ、巨大化し襲って来た!!
「
超速の移動突きで頭を貫通する!!
『見事…』
「貴女は奈良がゆかりの地だったわね。もう奈良は平和よ」
『そうか…神狩りよ、精進せい』
役小角は
下に戻ると前鬼と後鬼は消えた様で、カイネとコロちゃんが池の傍のベンチに座って、手を振っていたので目の前に降りた。
「有難う!さぁ、帰ってゆっくり寝よっか!」
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