第6話 unable break out
四体目の情報が【社】から入ったのは三体目から三日ほど経った頃だろうか?
アナザーバースの剣と魔法の世界・カムドアースの街の一つ・ウォータリアの大河付近で巨大な翼を持つヘビが現れるらしい。
通りすがりの旅人を片っ端から食べているらしいので急がねば!
カイネに連絡するとうちの喫茶店にいたのですぐに準備出来ていた。
二人で着替えて【社】にもらった座標を入力し、アナザーバースにダイヴ・インした。
ぐぬぬ、カイネに胸で負けている!
そこはアクラドシアがギリギリ見える大河の
刀を
舌を出し入れし、様子を伺っていたが…
突然凄い速さで口を開けて襲ってくる!
「く…重い…」
「せいやぁ―――!」
ラムゥの召喚を纏ったカイネが頭に雷撃蹴りを一撃入れる!
あれが噂に聞いた「
召喚獣を身に纏い、身体能力と特殊スキルを得る秘伝の技らしい。
頭にカイネの一撃が入り、口を閉じさせらた蛇は水の中に身を潜めた。
「カイネ、有難う!」
「大丈夫ー!連携は僕が合わせるから自由にやってね!」
と、今度は蛇の頭が二本出現し、舌を伸ばして来たので
「
目にビームを貫通させ一体を仕留める!
カイネも召装イフリートでもう一つの頭を蹴り倒して仕留めていた!
今度こそやったかと思うと、水から出てきた蛇の頭が四つに増えている!
「倍々に増えてるねー…」
「何匹いるのかしら?」
羽の生えた怪獣の身体に首が八つ!
ヒュドラの亜種か!?
「月詠さん、お手並み拝見したいから任せていい?」
「はい!レージング!ドローミ!」
ヒュドラの周囲の空間から不壊の鎖が伸びてきて巨躯を拘束する!
だが、鎖の隙間から口を開けて水流を発射する蛇の頭!
「
月光に輝く鏡が現れて水流を全てを正確に反射し、ダメージをそのままダメージ源に返した!
私は反射を二種類持っていて
「ブック」
索引を
「ブック・オブ・トール」
本が微かに電気を帯びる!
「
その瞬間!神の雷鎚が轟雷を纏いヒュドラに振り降りる!
打撃と電撃を同時に浴びてヒュドラは消滅…白い靄が無事両手に纏ってきた!
「凄ーい!そんな攻撃見たことが無いよー!」
「えっ!?そうなの…かな?」
「月詠さん…月詠…でいいかな?月詠が本好きだからかもだね!どこでその本を!?」
「…それが…気付いたら持ってて覚えてなくて…」
「…という設定かな?」
「違います!」
何はともあれ帰る事にした。
病院に戻り、ママ達に靄を戻し一息着く。
「カイネ、久しぶりね」
「小花さんもお元気で何よりですー」
「二人とも知り合い?」
「私がカイネと貴女の家に遊びに行く度に、貴女は小説の山場に集中してたから…」
「ああ…それなら仕方ないわね」
「Σ仕方ないの!?」
「ストーリーの伏線回収や謎が紐解かれる瞬間の盛り上がりは後回しにしてはいけないの!寧ろ心でそれを受け入れる準備が万端に出来ているなら睡眠時間だろうと食事の時間だろうと優先しなきゃ、小説に失礼なの!最早法律なの!」
「はいはい、貴女の情熱は分かるから!処でカイネ、月詠は危ない戦いしてなかった?」
「かなり特殊な戦い方ですが、危なげない戦い方でしたよ!流石、王の娘と言ったとこです!」
「そう…二人ともまだまだ若いし経験値少ないんだから気をつけてね?」
『はーい!』
カイネとやれやれという顔をこっそりした。
と、やれやれ顔をした三秒後位に【
一体偽神は
と、情報を見たら…
「月詠様
母上様方の生命を開放しようと本日一柱が人間に化けて潜り込んでいます。反応は病院内で消え、追跡が不可能となりました。病院内に潜む偽神を討伐して下さい」
「もー【社】ったら宛にならない…」
「まぁまぁ…追跡出来るだけ凄いよ」
「手分けしていこうか…看護師だけじゃなく患者に
「なら、私は病棟を下から上へ…受付から調べるわ」
カイネと二人で手分けして院内を調べに行く。
カイネは知恵のあるエルフと強力な召喚術師の子供だ。魔力も高く親の特訓を難なく熟し周囲では天才の名を
そんなカイネが取った行動は…
看護師の姿に化けて、通りすがりに全てを斬りつけていく!
ただし、その刃は母から受け継いだ物理をすり抜ける特殊な刃!
つまり人以外でないとダメージがない。
「手応えはない…数が多いから霧がないし、不可視のマーキングも付けていこうかなー♪」
ピクニック気分で範囲を詰めていく。
私は一階受付に来た。
こういう時に経験値の差が出るというか、見分け方に戸惑う。
どうしていいか分からず周囲を見回すも見分けは全く持って付かない。
風船を貰ったのか、母親と行儀よく座っている子供を見て…昔、風船が欲しくて泣いてしまい、式部ママが慌てて貰って来てくれたのを思い出してふふってなる。
…風船…そうか!
カイネは一人一人辻斬りをしてマーキングしていくが、五階はほぼ終わった様な気かして、四階に降りようとしていた時…
「あれ?今走って行ったのは月詠…?何で五階に?」
一階に降りてみると、とんでもない数の来院患者と看護師がごった返していた!
マーキングが着いた人もいるのでさっき走ってたのは何かをして人を下ろしたのか?
入口はガードマンが締めたのか反応せず閉まったままだ。
月詠はその自動ドアの外にいた。
そのままパニックになりかけの群衆の前で風船を見せて割った!
破裂音が辺りを支配する!
カイネも含め全ての瞳が私に注目している!
「王が令する!人でない者は自害せよ!」
全員の動きが止まる!!!
が、口を押さえた男、耳を押さえた少女、目を押さえた看護師が猿の姿に変わり自害し消滅した!!
「有難う、皆。持ち場に戻って」
何事も無かったかの様に全員が元に戻り、いた場所へ帰っていった。
「月詠…今のは何なの?」
「
「まだそんな奥の手が…だから、五階から避難支持を出してまとめて片付けたのか!」
「そう、注目を浴びないと行けなかったから近くで配ってた風船を貰うのが恥ずかしかったわ」
「あはははは!中学生になるともう気恥ずかしいよね!さ、お母さんに力を戻しに行こう!」
病室へ行くと小花さんが交代で病室に来てくれていた。
「月詠、少し連戦で疲れているだろうし、カイネと二人でご飯食べてしっかり寝てらっしゃい。式部の作り置き腐っちゃうわよ?」
「…忘れてました!カイネと鈴音さんと噛み締めてきます」
帰って御飯を炊いて、盛り付けを済ませてから鈴音さんとカイネを呼びに行く。
時間も時間だから、喫茶店は閉店して食卓に並ぶ。
消費期限も考えて多めに出したけど女子三人なら大丈夫かな?
「やっぱり式部の味付けは凄いねぇ…切り干し大根もカクテキキムチも春雨サラダも皆地味なのに美味しいわ…」
「母さんも料理上手だけど、式部さんのは一線を画すね」
「腹立つけど言い返せない…」
「いや、褒めてるじゃんっ」
「カイネ、うちで御飯食べた事あるの?」
「何回もあるよー!でも来た時に決まって月読が小説の山場で自室に引き
「何たるニアミス…本当にごめんなさい…」
「いいよいいよ、今日こうやって食べられたんだし。早く皆で食卓囲もうね!」
「…はいっ!」
ご飯を頂いてから庭に置いている長椅子に座り、虫よけの豚さんのスイッチを入れる。
後ろで手をついて、あの時の事を思い出す。
ママ達が襲われたあの日。
助ける手段は完璧だった。
いや、キセキさんがいたからこそだけど。
あの日、私が小説を買って遠回りをしなければ、あの強盗が来る前に帰って来れたのではないか?
悔やんでも悔やみきれない。
「なーんて考えてる?」
「そういうだけで
鈴音さんがふふっと笑って横に座った。
「どーせ、二人が怪我した日の事を後悔してるんでしょ?そんな事を気にしても仕方ないさね。重要なのは結果!二人は生きてる!戦って、自分も危険に晒したのに結果を出したのは立派よ?」
「どうしてあの日に限ってあんな事したんだろ?ってありますよね?あの日小説を買って帰らなきゃ…って思います」
「貴女が以前お店に忘れて行った本…難しくて、完璧には理解してないけど心に残った言葉はあるわ」
「…何だったの?」
「悪い手段によって良い結果が生まれた事等一度もない」
「シェイクスピアですね…」
「あの日、早く帰ってたら二人は愚か貴女も撃たれてたかもしれないよ?小さい頃からこっそり頑張っていた稽古事が結実した。段取りが出来ていたから二人を救えた、そう考えなさい?」
鈴音横から抱き寄せてくれて頭を撫でてくれた。
私はこんなに涙もろかったっけ?
…私は弱い。
―――翌朝、起きて顔を洗うと目の下のクマが気になった。
小説に没頭して寝なかった時にもこんな事なかった。
誰が見てる訳でもないけど、コンシーラーで隠してみる。
「ふわぁぁぁぁ…月詠おはよー」
「カイネ…お早う…って、そんな胸大きかったっけ?」
「ああ、僕着やせするタイプだから…」
「服の裏に異次元でも広がってるのかしら…」
「さ、御飯食べて今日も頑張ろう!」
台所へ行くと、鈴音さんと入れ替わりだったのか、小花さんが朝ごはんの用意をしてくれていた。
「さ、食べましょ!食べたら私、仮眠取るから食器は流しに持って行ってね?」
『はーい』
食事はママのお惣菜でとても
―――翌朝、起きて顔を洗うと目の下のクマが気になった。
小説に没頭して寝なかった時にもこんな事なかった。
誰が見てる訳でもないけど、コンシーラーで隠して…みる。
…何故だか妙な既視感がある。
「ふわぁぁぁぁ…月詠おはよー」
「カイネ…お早う…って、カイネそんな胸大きかったっけ?」
「ああ、僕、着やせするタイプだから…」
「服の裏に亜空間でも広がってるのかしら…」
「さ、御飯食べて今日も頑張ろう!」
台所へ行くと、鈴音さんと入れ替わりだったのか、小花さんが朝ごはんの用意をしてくれていた。
「さ、食べましょ!食べたら私、少し仮眠取るから食器は流しに持って行ってね?」
『はーい』
食事は式部ママのお惣菜でとても
―――翌朝、起きて顔を洗うと目の下のクマが気になった。
小説に没頭して寝なかった時にもこんな事なかった。
誰が見てる訳でもないけど、コンシーラーで隠して…みた。
尋常ではない既視感がある。
「ふわぁぁぁぁ…月詠おはよー」
「カイネ…お早う。何か繰り返してる感ない?」
「うーん、そんな気もするけど…はっきりしないなぁ」
「またループするかも…覚えておいて」
「夢を覚えろという困難さ!」
台所へ行くと、鈴音さんが朝ごはんの用意をしてくれていた。
「さ、食べよっか!食べたら私、喫茶店開ける前に少し仮眠取るから食器は流しに持って行ってね?」
『はーい』
これは…敵の攻撃なのか!?
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