第2話 Invincible and God's Book
最初に会った街の門番さんに目指す最初の街の場所を聞いたので、飛行結晶を装備し飛んで向かっている。
目指す街はアクラドシアという国。
ママの話によると、実は妖精の血族の国らしく、国王の側近に優秀な妖精のお医者さんがいるそうだ。
妖精といえばいたずら好きで、外国の民間伝承ではよく描かれていて『チェンジリング』なる取り換え子の話の逸話も本で読んだ事が在る。
兎に角、本でしか読んだことの無い存在に対し少し楽しみを隠せない!
『タイムセールの贈り物だ、受け取れ』
『マルチデバイサー・ストライフ装着』
『ユーザー・インターフェース可視化』
「え?」
気が付くと左手に近代的な手甲のアイテムが装備されていた。
『マルチデバイサー・ストライフ。きっと君の役に立つ』
そういうとまたキセキさんが静かになった。
小さく「有難う」と呟き、後でユーザー・インターフェースも見てみようと思った。
二時間程飛んでいると前方に、周囲に湖がある国が見えた!
きっとあそこに違いない!
門の傍に降り立つと門番らしき人達に身分証明証を提示し、入国許可を取る。
門が開くと、シンデレラ城の様な城が湖の中心に聳えており、湖の上を大きな一本橋で城に繋げている。
綺麗だからスマホで写真撮っておこう!
勿論自撮りもするっ!
橋を渡りきって、大きな街を城を目指して歩みを進める。
露店も所々並んでいて活気がある!
『はーい美味いよ美味いよ美味いよー!アクラサーモンの塩焼きデッドエンド風味!寄って行ってー!』
……今のは式部ママの通り名じゃ無かったかしら…
「あの、二つ下さい…」
「はーい毎度あ…あれ?コロちゃんじゃないですか?デッドエンドさんのお知り合いですか?」
「…はい、不肖の娘です…」
「え!そーですか!道理で似てらっしゃる訳だ!デッドエンドさんの身内からはお金頂けませんのでどうぞどうぞ!」
「ににん!」
コロちゃんドヤ顔!
「……こんなに早くママの足跡を拝めるとは思わなかったわ…でも美味しいねコロちゃん!」
コロちゃんが夢中になって食べるのは極めて珍しい!
確かに式部ママの味付けが効いてる!
魚を食べ終わり再び王城への道を進む。
流石に大きい国で、城に着くまで少し掛かった。
私と同じ年の時にママ達がここで活躍したんだな…
ママ達、無事なのかな…
城壁の検閲所で受付にママ達の名前を出して、王への謁見を求めると、あっという間に許可が降りた。
警備がザルなのかママ達が有名すぎるのか…?
謁見の間に通されて王様を待っていると、事情を察したのか両脇の近衛兵団が下がっていった。
皇族っぽいローブを着た髭の妙齢の男性が入って来た。
王の椅子に座るなり、無言で私をジロジロ見る。
「あの…」
「ちょ―――っとストップ!今、当てるから!………その容貌…レクスとデッドエンドの娘か?」
「ご明察です…初めまして。実は困った事になってお力添えを頂きに参りました」
例の強盗事件の話を王様に話した。
そして二人が消えた事
「まさかあの二人が…銃一発で…」
「回復スキルで元気にはなったのですが何も言わずに突然消えてしまったのでこちらに来てないかお伺いしたかったのと、帰ってきた時に薬を用意しておこうかと…」
「なる程…二人は暫く来ておらぬが…薬の方は専門家を呼ぶか。ニーナ=ティジカ!ニーナ=ティジカはおるか!」
「はいはーい!僕だよ!」
床をすり抜けてすぽーん!と小さい要請が飛び出てきた!
ノリが軽っ!
「あの…ママがこのレシピの弾丸で撃たれて諸々何も使えない状態になったんです。解毒薬を作りたいので御知恵を拝借したいんですが…」
「……んー、これを煎じてこれも配合したから、この結果とあの結果になって…よくもまたこんな複雑なレシピを考えたもんだ…未知の物質は凡そ見当はついたよ」
「治療、若しくは効果を打ち消したりする解毒剤は出来ないものでしょうか?」
「出来なくは無い。だが、素材がレア過ぎる…残念ながらその素材は今無いんだ……ワンチャンあるとしたらガルワルディアのお医者さんの処かな?」
「ガルワルディア…それは遠いんですか?」
「普通に飛べば三日、でもポータルクリスタルに触っておけば帰りは一瞬さ」
「名前は何という素材ですか?」
「アングラソイルジン。一塊もあれば十分だから手に入ったら薬を調合するから持っておいで!緑の屋根のお医者様を訪ねるといいよ」
「有難う御座います。早速向かってみます!」
一礼をしてから、踵を返し謁見の間を後にした。
「王様…彼女、真面目すぎてボケるスキがなかったんだけど」
「レクスはスキあらば突っ込んできたからのぉ…まぁあれはあれで面白い子になりそうだよ」
おっと、この街を発つ前にママに、いつかここに立ち寄る事が在ったらって言われてた事があったんだ!
街中のポータルクリスタルに触った後、城壁の湖の側にいくつか設けられているステージへ赴く。
その水辺に立って手をゆっくり叩く。
「レド・ブル・イロ、おいで」
しばらくすると体長三m位で甲羅のついた首長竜の子達が現れる。
首にネクタイをしてるから色で名前は分かった。
ママ達の匂いがするからか、顔を沢山舐めてくれた。
用事というのはこの子達の様子を見てくる事と餌をあげる事だ。
この為にカロリーバーを多めに持ってきた。
「はーい全員分あるから、待って待ってってば擽ったい!あはははは!」
丁寧にカロリーバーを皆の口に入れてあげる。
食べ終わった子は早速コロちゃんと走り回って遊んでいた。
こういう小さな命を大事にする処も月花ママらしい。
一通りご飯をあげて遊び終わってから再会の約束をし、ガルワルディアへと向かう。
何でも防御力が売りの城塞都市と聞いた。
――― 飛行結晶で急ぎ気味に飛んだら三日処か半日位でついてしまった。
確かに城塞都市と言われるだけあって防御力が高そうな都市だ。
入り口で入国手続きをし、中に入るついでにお医者様の家を聞くと2のストリートの緑の屋根の建物だと教えてもらい先を急ぐ!
……2のストリートの緑の屋根…あった!
コンコンコン。
木製の重厚なドアをノックしてみた。
…コンコンコン。
「只今、居留守中です。三日程開けてまたご来店下さい」
「何故三日空けるのか謎なので直ちに開けて下さい」
ガチャッ!
二cm程ドアが開き、お医者様の顔が少し覗く。
「……ん?お主、何処かで見た様な見てない様な…」
「初めまして。レクスとデッドエンドの娘で月詠と申します」
と、深々と頭を下げてみる。
「まぁ!お二人の娘さん!?」
厳重なドアロックが突然解除され、中から美しい女性と医者と思しき老人が出てくる。
「あらやだ!二人に似てて可愛い!」
女性に滅茶苦茶
「もしや何かあったのか?二人はどうした?」
お医者様は名前を頑なに教えてくれなかった。
女性はレティシアといい、このお医者様の養女という事だった。
二人の事情を話すと、お医者様が難しい顔をした。
「うむ、二人はきておらん…素材も確かに滅多に取れない素材だ…」
「こちらにはないんですか?!」
「父上、先日頂いた薬草類の中に混じってませんでしたか?」
「むむ、二人で探すぞ!」
「はい!」
家の中に入れてもらったはいいが、門外漢の私には待つ事しか出来なくて、部屋をウロウロしていた。
壁一面の薬の引き出しが如何にもお医者様らしい。
ママ達と仲間がお医者様二人と写っている写真もある。
ああ、異世界の医学書…少し面白そう。
「月詠さん!ありました!」
視界が開ける様な感覚…良かった…
「有難う御座います…お幾らお支払すればいいですか?」
「何を言ってるんですか!今まで数え切れない位彼女達【
「ワシはあいつらがいつもの調子じゃないと逆に怖いからな…戻ってきたら薬を飲ませてやれ!二人がこちらに来てないかも気に掛けておく」
「有難う御座います!この御恩は必ず!」
お二人に一礼をして家を出た。
「本当にあの二人の子か、疑わしい位に礼儀正しいな…」
「父上、失礼ですよ!…でも賑やかなお二人の子供にしてはとても礼儀正しいですね!」
必要な物は揃った!
手渡されたものが
すぐにでもアクラドシアに戻りたいが…もう一つミッションがある。
広場で花束を買い、大剣が刺さったお墓とその横のお墓に花を添える。
何回か聞いたことのある悲しいお話で、亡くなった月花ママの友人だ。
「ママがお世話になりました…」
しっかりと冥福を祈り、アクラドシアへ向かおうと思いポータルクリスタルへ向かうと街の入り口がしっかり閉ざされていおり、衛兵が走り回っていた!
「すみません、何かあったんですか?」
「ああ、最近この辺りを荒らし回っている
街に迫ってる事よりも盗賊団のネーミングセンスの酷さに
「なら、斬り捨てても問題ないわね?」
飛行結晶で高く舞い上がる!
外が見えた瞬間、銃弾が飛んでくるが、障壁を張って飛び上がったので問題ない。
しかしファンタジー世界に銃火器とか風情が無い…
障壁を撃たれない角度で調節しながら地面に降り立つ。
「なんだぁ…小娘、俺達に文句でも言いに来たのか…あぁ?」
「
「週に一度は入ってるぜ!いいだろうその喧嘩、この無敵のモルゲ様が買ってやる!」
モルゲと名乗った男は一際身体が大きく、名前も両生類的な顔も何もかもが生理的に合わなかった。
「貴方達…略奪して人まで殺してるって本当?」
「貰ってやった財産を後から返せとか言われても困るしなぁ?後々の手間も省けて一石二鳥じゃねぇか!」
部下たちが一斉に銃を構えて撃つ体制を取るが!
「ファングハーケン!」
ストライフから飛び出した牙が生物の様にしなり、部下たちの武器を全て砕いて行き、ワイヤーでストライフに引き戻る!
「……
「げへへ…その程度の威圧でやられるたぁ、うちの雑魚共は教育し直しだな…相手になってやる。殴る、斬る、撃つ、何でも来な!」
「
殴る、斬る、撃つのどれでもないビームを直撃させる。
が。
超高熱を食らってもびくともしていない!
勝ち誇る様にニヤつく顔にイラッとしたので、次元の狭間から名も無き刀を取り出し
「
必殺の抜刀術で斬る!!!
だが!
刀が通らず平気な顔をして私を殴り付ける!
すぐ障壁を張ったのでこちらも無傷!
「
突きを高速連打する技も放ってみたが効いていない!
「その武器、その戦い方…お前、あのレクスの関係者か?」
「……さもあらば?」
一旦バックステップで間隔を空けて刀を納刀する。
「面白れぇ!この無敵のモルゲ様の配下になれよ!死ぬ程いい思いをさせてやるぜぇ?金!殺し!自由が待っている!!」
『涙とともにパンを食べた者でなければ人生の味は解らない』
「あ?」
「解るかね?」
「…知るか」
「人は涙と共に食を成す程の経験をせねば、人生の意味を本当に理解出来ない。貴様の様にヘラヘラ笑いながら弱き民を蹂躙していく輩には難しいお勉強だったか?」
キレたのか巨体に合わない猛烈な勢いで殴る蹴るを繰り返すが、私の結晶も堅牢さが自慢で微塵もダメージが伝わらない。
「くっ、固ぇな!勝負がつかねぇじゃねぇか!」
「いいや、残り二分で終わりだ」
「何だと!?」
「貴様の様な
「分かった処で勝てると思うなよ!?」
「我は【
左手を横に広げ光の片翼を広げ、同時に刀を次元の狭間に収める。
「ブック」
そう言うと右手に光る本が現れる。
『読破後ステータス上昇』
『読破後攻防スキル上昇』
キセキさんの声が聞こえた。
本を開き索引に目を通し、本を決定する!
「ブック・オブ・ゴッド」
本を勢い良く閉じる音と共に、周囲の風景がガラスの様に崩れ落ち、強固な領域結界が周囲に張られる!
「無理無理…無敵の俺に何も効く筈が…」
「
モルげに指を指すと不思議な色の落雷が何度も落ちる!
「げやぁぁぁぁぁ!!!!」
焦げてあっさり倒れるモルゲ。
「げ…げ…何でだ、このスキルは無敵じゃねぇのか…?」
「そのスキルは無敵、被ダメージはない…だが私が放ったのは神罰!ダメージではないもの」
「神罰…神…じゃ…お前は神な…」
「貴様が無慈悲に殺してきた民の恨み、因果応報を知れ!
今度はモルゲが火炎に包まれ、風、火、雷、水、土、光、闇、七つの神罰を次々と喰らう。
「ぎぎぎぎぃああああああああああああ」
「ににん!」
コロちゃんが火炎を吐き、モルゲの燃焼が進み、炭の様になって事切れた。
コロちゃんの攻撃姿を始めて目撃する!
そうか、これがハイパーキャットコロちゃんなのか。
猫属性攻撃ってあるのかしら…?
結界を解くと風景が元に戻り、城の門が開いて自警団が手下共を捕まえに出てきたのでその場をお任せし、武装を解いて先を急ぐ。
「あとお任せしますー」
「冒険者様、有難う御座いましたー!」
ポータルクリスタルに触り、アクラドシアをイメージするとクリスタルに映し出され、再度触ると一瞬でアクラドシアに戻った。
どうなってるのか構造に興味がある…
再び王宮に蜻蛉返りし、また王様への謁見をお願いするが、段取りされていたのかすぐに謁見を許された。
「予がアクラドシア国お…」
「はいはーい!僕だよー!」
「ニーナ=ティジカ…言葉が被ったではないか」
「あれれ?王様居たのー?」
若干険悪で、少し思い描いてた妖精と違う気がする。
いや大分イメージが変わった。
アングラソイルジンをニーナ=ティジカに渡すと…
「んー!これこれ!すぐ作るから二十年位正座して待っててねー!」
ちょっぴり刀を突き付けてみた。
「あははジョークジョーク!十分位で出来るからね!」
「このアングラソイルジンは…細かくするのに時間が…掛かるからね!三年位!」
「私、何でも裁断出来ますが?」
「うん、僕が十分で頑張るよー!」
十分後、出来た粉薬を小袋に小分けにした物を少し多めに頂いた。
「余ったのはうちで管理して、上の世界の為に量産体制を整えておくから、いつでも来てね!」
「これって飲み薬ですか?」
「うん、目から点眼、若しくは耳からでもいいよ!……あ、ジョーク!ジョークだから僕の目に入れないで!前にも同じ事された様な気がっ!」
「有難う御座いました!もし母達が来たら帰る様に伝えて下さい!宜しくお願いします」
「…帰ったか…あの二人の子とは思えない礼儀正しさだな…」
「突然変異か
用事は終わったのですぐ帰ろうと思ってたのだが、通りかかった本屋が何故か凄く気になった。
「いらっしゃいませー」
気も
友達と本屋に寄ってこの状態になると大体「遅いー!」って叱られる。
本棚を見渡すと何かの気配がする……
これだ…血の様に赤いハードカバーの本。
文字は…何が書いてあるのか解らない。
暗号や謎の文章を見た時と同じワクワクする感覚!
読破してみたい!
「あの…これお幾らですか?」
「あー、それねー!何書いてるか解らないし、ずっと残ってたから処分したかったのよねー!1ルギーでいいわよ!」
「え、あ…有難う…」
1ルギーがざっと100円なので、最低価格で買えた事になる。
買ってしまった…現地の人も解らない位だから今の私には読めないだろうがきっと読んで見せる!
「ダイヴ・アウト」
そう唱えると秒で転送装置に戻ってきた。
転送装置から出ると、ママ達が戻ってないか部屋を探し、スマホに病院からの着信通知がないか確認する。
その後、若干の喪失感を感じる。
居なくなっただけで死んでない筈なのに。
部屋を軽く片付け、コロちゃんとご飯を食べようと冷蔵庫を開けると、式部ママが付箋に日付を付けた作り置きがあったので日付が古い物から出して、小皿に盛り付けご飯を少しだけ炊く。
その間に味噌汁を…味噌どこ置いたっけ?
発見!
味噌汁も無事出来て、御飯も炊けたのでコロちゃんのお皿にご飯とおかずを盛り付けて、私も一口食べる。
矢張りママのご飯は美味しい。
…食べ慣れたいつもの味なのに、涙が止まらない…
ご飯を一緒に食べていたコロちゃんが慌てて肩に乗って涙を舐めてくれた。
泣き止んで再びご飯を口にする頃には、多少冷めていて勿体ない気分になった。
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