第20話 現実世界からの目覚め

気が付いた彼女は、

同時にたくさんの事を思い出した。


今まで長い夢を見ていたということ。


自分か研究者であること。


大気を救えていなかったこと。


そして、

自分が既に死んでいたこと。


「えっ……?」

彼女は驚いた。


そして混乱した。


疑問に思った。

「これは……何や?」


彼女は夢だった世界について考えた。

「あれは……本当に夢だったんか?」


彼女は現実の世界について考えた。

「じゃあ……これがホンマの現実なんか?」


彼女は自分の存在について考えた。

「うちは……一体何者なんや?」


彼女は、自分が真智達の担任であり、

科学部の顧問だったことを思い出した。

「そうや……うちは先生だったんや……

真智達や他の生徒達も心配してくれてるんかな……」


彼女は、自分が大気の脳を人工知能として蘇らせたことも思い出した。

「そうか……

うちは大気を……」


 幸いにも、現実世界の彼女の身の回りの日常は、大気を救う前の幻想の世界とあまり変わらなかった。

 ただし、弟と大気の事を除いて……。


彼女は、月水博士という知人の男性研究者からあることを聞かされた。

「君は、実はクローンなんだ。

人工知能も備えている。

10才の頃に死んでいて、

それからしばらくは地下の研究所で実験台にされていたんだ」


「嘘や。そんな……そんなこと……」


「嘘なんかじゃないよ。

後に研究所での非人道的な人体実験の事実が明るみに出たことで、

その組織自体は無くなったらしいけど、

君は奇跡的にあの方に引き取られ生き残ったんだ。

君は強いしとても運がいい」


彼女は思い出した。

路頭に迷う彼女を里親として迎えたのは恩師の丘先生だった。


「丘先生……あの人は本当に優しかった……

孤児だったうちを家族として迎えてくれたんや……」


彼女が15才の頃、丘先生が病気で亡くなった。


そして、彼女は丘先生の親族である谷家に預けられた。



彼女の脳裏には一つどうしても拭えない疑問が残っていた。

「弟……弟はどこに行ったんやろうか……

もう会えないんやろうか……」

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