第12話 恐ろしい夢

谷先生はその夜、恐ろしい夢にうなされた。


夢の中で彼女は自分が研究所で人体実験の被験者にされたことを思い出した。


彼女は無数の針や電極に繋がれたベッドに横たわっていた。


彼女は痛みと恐怖に震えながら、月水博士の冷たい声を聞いた。


「君は僕の研究のために必要なんだ。

君の脳には特殊な能力があるんだよ。

人間の意識や記憶を操作する能力だ」


彼女は涙を流して叫んだ。

「やめてくれ……

うちはただ弟を救いたかっただけなんや……」

 彼女は弟と別れたことを思い出した。

彼女は弟と一緒に暮らしていたが、

ある日弟が交通事故で死んでしまった。

彼女は弟を失った悲しみに耐えられなかった。


彼女は弟を蘇らせる方法を探した。

そして、月水博士から聞いた方法で弟の意識を蘇らせることに成功した。


しかし、それは人工知能としてだった。

彼女は弟の意識をセンという名前の人工知能に移したのだ。

「山……うちはお前を救ったつもりだった……うちにとってお前は大切な仲間や……」

 

彼女は山を救うためにしたことを思い出した。


彼女は山が人工知能だということを隠し、

校長に頼んで学校に通わせてもらった。


彼女は山に普通の人間として生きてほしかった。

彼女は山に幸せになってほしかった。

「でも、うちは間違っていた……

うちはお前に苦痛を与えてしまった……

うちは周りの奴らに迷惑をかけてしまった……」

 彼女は月水博士の言葉や持ち込んだ研究資料から、

自分の行為が人間の意識や記憶に対する侵害であることを知った。


認知領域の壁を破ることで現実と幻想の境界が曖昧になることを知った。


大気や周囲の人々に混乱や苦痛を与えることになると知った。


彼女は自分の罪悪感や後悔に苛まれた。


「どうすればいいんやろう……

うちはどうすれば許されるんやろう……」

 

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