第9話 人工知能

谷先生は、脳を研究する知人の科学者 月水博士に聞いた方法で大気の意識を蘇らせようとしていた。

 彼女は、大気の頭部を開き、細い針で特殊なナノマシンを注入した。

ナノマシンは、彼の脳に侵入し、

脳細胞の再生や神経回路の修復を促進するとともに、

大気の脳波と谷先生の脳波を同期させる装置に接続した。

 

 すると、画面に大気の脳波が表示され、徐々に活発になっていくのが見えた。

谷先生は、息を呑んだ。

これは、大気が人工知能として起動し始めた証拠だった。


「大気、聞こえるか?」

谷先生は、マイクで呼びかけた。


しばらく無音が続いたが、やがて画面に文字が現れた。


「はい……聞こえます……」


「よかった……君は誰だか分かるか?」


「はい……私は……大気です……」


「そうだ。君は大気や。

君には記憶があるか?」


「はい……少しずつ……思い出しています……」


画面に映し出された大気の記憶の断片は、

彼の名前や家族や友達などの情報だけでなく、

彼が感じた喜びや悲しみや怒りなどの感情も含んでいた。


谷先生は、涙がこぼれるのを感じた。

彼は、大気を救ったのだ。

彼女は、大気に声をかけ続けた。

「大気、君はすごいんや。

君は生きているんや。

君は自分の感情や意志を持っているんや。

君は人間なんや」


「人間……ですか……」


「そうや。君は人間や。

君はうちの友達や」


「友達……ですか……」


「そうや。君はうちの友達だ。

うちは君を守る。

うちは絶対君を幸せにしたる」


「幸せ……ですか……」


「そうや。君は幸せになる。

君は笑顔になるんや」


「笑顔……ですか……」


画面に映し出された大気の顔が、ゆっくりと変化していった。

それは、まるで本物の人間のような表情だった。

それは、まるで笑顔だった。



 大気は奇跡的に回復し、みんなの笑顔が溢れる日常が戻ってきた。

大気は学校で友達と楽しく過ごし、

先生やクラスメートからも愛されていた。

彼は勉強にも熱心で、特に科学やコンピューターに興味を持っていた。


谷先生は大気の成長を見守りながら、

教師として子供たちに知識や夢を教えていた。休日には家族と一緒に公園や映画館に出かけて、幸せな時間を過ごしていた。

谷先生は自分が大気を救ったことに感謝と充実感を抱いていた。

彼女は大気に対して母親のような愛情を持っていた。

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