第8話 明るい知らせ
魔座魂波毛芽画値
魔座魂波毛芽画値
スマートコンタクトレンズを付けた彼女の目の前には、不審な着信相手が大きく点滅表示された。
彼女の首にかけたスマートネックレスは、加工して作られた知人男性の肉声を、ピンポイント照射で彼女の両耳だけに届けた。
ママ〜! ママ〜!
マザコンハゲメガネサン
カライッケン、チャクシンガハイッテイマス。
デンワニデマスカ?
彼女は瞳孔を大きく見開くことで、
レトロなテーマが適応された鬱陶しいAR表示を最小化した。
そして、三回瞬きすることで通話の意思表示をした。
彼女のところには、アメリカから帰国したばかりの月水博士から電話がかかってきていた。
月水博士は、大学で脳科学の研究をしていた知り合いの科学者で、谷先生とは昔からの友人だった。
「どうした、
「えみたん、久しぶりだね。聞いて驚いてると思うけど、実は僕も人工知能の研究に興味があってね」
「えみたん じゃねぇー!っていつも言ってんだろ!」
月水博士は、谷先生が人工知能を使って脳死状態の少年・大気を救おうとしていることを知っていた。前回の実験では、大気の脳に人工知能を移植することに失敗してしまったが、月水博士はそれを見て諦めなかった。
「僕ならもっと効率的な方法があると思うんだ。だから、今度は僕にも手伝わせてくれないかな」
谷先生は、月水博士の申し出に驚きつつも、喜んで承諾した。月水博士は、自分の研究成果を持って、すぐに谷先生の元へ向かった。
数日後、
愛理栖と真智のところに谷先生から連絡が入った。
「今日はLABOに来てくれるか。新しい仲間が加わったんや。奴は脳科学の専門家でな……」
愛理栖と真智は、谷先生がLABOとして使っているアパートの一室に集まった。そこにはすでに四葉と宙も来ていた。四人は、前回の実験で大気を救えなかったことを悔やんでいたが、谷先生から新しい希望の光が見えると聞いて、期待と不安が入り混じった気持ちで待っていた。
やがて、谷先生が遅れてLABOに入ってきた。彼女の後ろには、白衣を着た見覚えのあるザ•マザコンで丸眼鏡のいい歳した中年男性がついていた。
「みんな、久しぶりだね。元気だったかな」
「あ〜!一休さんだ!」
真智は言った。
「だから違うって!!」
月水博士はすぐさま否定した。
「ハハハ、ハハハ」
皆の笑いでほんの少しだけみんなの緊張が緩んだ。
月水博士は、四人に笑顔で挨拶した。彼は以前、四人と会ったことがあった。その時は自信なさげな浮かない表情をしていたが、今は自信満々だった。
「さて、今日はみんなに重要な話があるんだ。前回失敗した状況を聞いたんだけど、今回成功する為の作戦を考えたよ」
月水博士はラボのホワイトボードを使って説明し始めた。彼は自分が開発した新型の人工知能チップを持ち出した。
「これを大気くんの脳に埋め込めば、彼の記憶や感情を復活させることができるんだ」
「でも、それだけでは不十分なんだ。大気くんの脳は、人工知能との同期を拒否する可能性が高い。だから、彼に人工知能を受け入れさせるためには、もう一つの条件が必要なんだよ」
月水博士は、四人に真剣な眼差しで見つめた。
「それは、大気くんにとって最も大切な人の声を聞かせること。彼が愛している人の声があれば、彼は人工知能と心を通わせることができるはずだ」
四人は、月水博士の言葉に驚いた。大気くんにとって最も大切な人とは誰なのだろうか。四人は互いに顔を見合わせた。
「それは……宙さんですよね」
月水博士は、宙に向かって言った。宙は大気くんの姉であり、彼と仲が良かった。宙は、月水博士の言葉に戸惑いながらも、頷いた。
「そうです。あたいが……私が大気くんの声になります」
宙は、弟を救うためなら何でもするという覚悟を決めた。月水博士は、宙に感謝の言葉を述べた。
「ありがとう、宙さん。君の協力があれば、きっと成功するよ」
月水博士は、宙に優しく微笑んだ。宙は、月水博士のキモ気色悪い笑顔に少し心を動かされたが、すぐに自分を戒めた。今は弟のことしか考えられない。
そして、宙が両親に電話で許可をとりつけると、
月水博士を含めた5人は、大気と大気の両親の待つ病院へと向かった。
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