第4話 愛理栖の違和感
「ただいま〜!」
真智が家に帰ると、玄関で愛理栖が待っていた。
愛理栖の表情は何か思い詰めた様子で、真智に間髪入れずに声をかけた。
「ねえ、真智?」
愛理栖は何か事情があって真智の帰りを待ちかねていたのだろうか。
「どうしたの?」
真智がそう答えると、愛理栖は難しい表情をして言った。
「宙、最近見てないんじゃない?」
愛理栖は宙のことが気になっているようだった。彼女の目には不安が浮かんでいた。
「あ、うん。谷先生に聞いたらね、宙はパパが久しぶりに家族と旅行に行ってるんだって」
真智がそう答えると、愛理栖は疑問を投げかけた。
「それ、電話だよね?谷先生はちゃんと確かめたのかな……」
愛理栖は何か納得していない様子だった。
「え、そこは谷先生に聞いてみないと知らないけど。ねえ、愛理栖はどうしてそんなに宙のことが気になるの?」
真智が尋ねると、愛理栖は言った。
「宙、今病院にいるよ」
「え、どういうこと?宙に何かあったの!?」驚く真智。
愛理栖は言った。
「やっぱりね。私以外、みんなあの時の記憶が無くなってる」
「あの時の記憶って何?」
真智が尋ねると、愛理栖は言った。
「宙の弟の大気くんのこと。大気くん、病院でずっと寝てるんだよ」
「病院で寝てるって何で!?」
驚く真智に愛理栖は言った。
「大気くん、交通事故にあって植物状態なんだよ。だから、宙は両親と病院で大気くんの病室にいるんだよ」
「なんでそんな大事なこと、愛理栖だけが知ってるの?ねえ?」
真智が尋ねると、愛理栖は言った。
「私も最初は忘れていたよ。だけど、5次元の特殊な存在だからかもしれない。
私は思い出すことができたよ」
「そんな……。」
真智はショックを受けて言葉を失った。
「ねえ、あたし宙のいる病院行ってくる!」
彼女は急いで玄関から出ようとした。
しかし愛理栖は止めた。
「落ち着いてよ、真智。行っても家族以外は面会謝絶だよ」
彼女は真智を見つめてそう言った。
「だったら、どうしたらいいって言うの!!」
怒りを露わにする真智に愛理栖は言った。
「落ち着いて。ねえ、私に考えがあるから、今から谷先生と四葉ちゃんを呼んでくれない?」
「え、何かいい方法あるの?」
真智が尋ねると、愛理栖は言った。
「わからないよ。だけど、何もせず諦めるのも嫌だし」
「本当だよね、愛理栖?本当だよね!?」
真智が尋ねると、愛理栖は言った。
「大気くんが助かる保証なんて全く無いよ。だけど、例え1パーセントでも大気くんが助かる可能性にかけてみたいでしょ?」
「う、うん。わかった。ありがとう、愛理栖」
真智が言うと、愛理栖は言った。
「善は急げね。真智はみんなに連絡する時、集合場所は谷先生のアパートのラボにして」
彼女は真智を見つめて微笑んだ。
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