第15話 見知らぬ道で
窓から入る海風が急に薄寒く感じる9月。
僕はアレからお爺ちゃんやお婆ちゃんにも何も言えず、僕はただ部屋の中で蹲り、学校を休んだ。
学校を拒否する様に、まるで水に覆われた様な鈍さで身体が動かず。頭の中も、モヤが掛かった様に不明瞭でーー。
お爺ちゃん達も何かを察したのか何も言わず、僕はただ部屋の中でボーッと海を眺めていた。そんな1日を過ごしたにも関わらず、お腹は減った僕は朝ご飯の時間帯を見計らって下へと降りた。
下へと降りると、居間の方では既にカチャカチャと食器音が鳴っている。
僕が食べないと思って、3人でご飯を食べ始めたのだろうか。
少し入りづらいなと思いながら扉を開くと、僕に視線が集中した。
そんな視線に僕は申し訳なくなって、居心地の悪さに視線を右往左往させた。
すると、気付く。
ーー何で僕の席が無いんだ?
「あっ、あの、僕の食べるものってある?」
テーブルの上に僕の食べる分がない、それなら分かる。だけど、僕がご飯を食べないからと言って席まで寄せるだろうか? いや、普通寄せない。
そんな考えの中、返ってきたのはーー。
「えっと、どなたですか?」
お婆ちゃんが言った言葉の意味が一瞬分からず、僕は口を引き結んだ。
多分、数秒。
自分では数分、考えていた様にも思える。
そんな時間、頭の中が擦り切れる程に考えて、それに比例して僕は身体全体が熱くなるのを感じた。
「おい、クソ坊主……此処にお前が食う飯は無い! 早く出てけッ!!」
知っている人物ではないお爺ちゃんのドスの効いた声と、絶対に追い出してやるという意思が伝わって来る肩を押し出す力強さ。
その背後には怯えた様に、仲間さんの肩を抱くお婆ちゃんの姿。
「何の、冗談……? 僕だよッ!! 涼だよ!! 優樹菜の息子のッ!!」
僕は辛うじて口を動かした。
それに返ってきた言葉は、予想とは違ったものだった。
「な、何を言ってるの!! 優樹菜に息子なんて居ないわッ!!」
ーー僕が学校を休んだから、こうなったのだろうか。ただ1日、学校を無断で休んだだけで? ……そんな訳がないというのは分かってる。だけど、2人の行動が、目が、本当に僕を拒否しているのが分かった。
僕は自然とお爺ちゃん達から逃げる様に家から出た。
何故いきなりこんな状況になっているのか、僕はこの状況を1ミリも理解出来ずに、ただ走った。何故こんな事に。そう思いながら、走った。
秋に入りつつある所為か、日は既に傾きつつある道。薄暗い道を電柱が照らし、虫が寄る。人は歩いて居なくて、偶にすれ違った人は、パジャマ姿で靴も履いていない僕に、訝しげな視線を送って来る。
そんな中、見知った顔を見つけた。
「花園さんッ!!」
「え……」
制服姿でカバンを持っていた彼女へと声を掛ける。
ーー表情は、驚愕の表情をしているのか。此方を見て目を見開いていた。
「花園さんッ! 僕の事知ってる!? 白崎 涼!!」
「えっ、え……」
彼女の肩を掴んで揺さぶる。しかし、言葉は返って来なかった。
正確には、返ってくる前に僕はもの凄い衝撃を受けて後ろへと転がった。
「大丈夫か真里!!」
「う、うん」
視線を上げるとそこには、花園さんを守る様に手を広げるタカちゃんの姿があった。
タカちゃんは遠くから走って来たのか息を切らしていた。同時に、タカちゃんは此方に射殺す様な視線を向けていて………多分、何となく、先程の質問の答えが言われなくても分かった。
「誰だよお前ッ!! 真里に何しやがる!!」
がつん。
何かが頭にぶつかった気がした。
僕の事を知らない。意味の分からないその事実が、突き付けられる。
見つけた瞬間、もしかしたらって思った。
タカちゃんが僕の事を嫌っている事は分かっている。だけど花園さんにまで、そんな目で見られるとは思っていなくてーー。
僕は今、本当に1人になってしまったのかもしれない。
そう思って、また走り出す。
少しは慣れた筈の道だったのに、まだ日は沈んでいない筈ないのに、道の先は真っ暗だった。
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