第3話 母方の実家で
突然の事に混乱して居る中、僕のお婆ちゃんであろう
家の中の廊下を美智子さんの後を追って行くと、僕と優空は2階へと上がった。上がると目の前に部屋があった。ドアノブには板が掛けられていて、そこには『奈津』という文字と、霜が降りた様な赤い花が描かれていた。
やっぱり此処に住んでるんだと、1人でに思う。仲間さんの家に案内された筈だった。それなのに、案内されたのは僕の家でもあったんだ……ハッキリ言って、納得出来ない。
「あのーー」
「あそこが涼ちゃんの部屋ね〜」
……先程から聞くタイミング悪過ぎる。何かの因果が働いているのだろうか? もっと落ち着いてから聞こう。
結論が出た所で、僕は美智子さんに「早く早く」と促され、6つある内の1番奥の部屋へと入った。
扉を開けると、そこは2つの窓が付いた綺麗なフローリングをした部屋だった。中には折り畳みが出来そうな木目調の小さなテーブルに座椅子と、シングルのマットレスが置かれていた。最低限の家具は揃っているらしい。
僕が部屋の中に入りキョロキョロしていると、
「やっぱり涼ちゃん、大きくなったね〜」
「え? 美智子さんは僕の事見た事あるんですか?」
「凄いちっちゃい時にねぇ」
美智子さんは人差し指と親指を付けながら言う。ふむ。まさかそんな時に会ってたとは……全然身に覚えがない話だ。
「あの時は楽しかったね〜、皆んな一緒だったから」
「皆んなって?」
「和正さんに私、
父さん達も昔は此処で暮らしてたのか? 知らなかった。でもそれよりも気になるのがーー。
「あの、仲間さんとはどういう関係なんですか?」
仲間 奈津。母さんの隠し子にしてはあまり顔が似てないし、まず苗字も天国でもないし、白崎でもない。
美智子さんは一瞬顔を顰めた後、少しぎこちなく笑った。
「奈津はね、私達の家族だから」
……そんな顔で言われてもそう思える訳がない。それに同い年の美人の女の子が家族になったなんて、漫画の中だけにして欲しいっていうのが本音だ。
「奈津はいい子だから、すぐ仲良くなれると思うわ」
ーーまぁ、そっちの方が色々都合がいいだろう。あの人はここら辺の人達とも仲が良さそうだ。何か訳があるなら、親しくなってから聞くべきだろう。
「はい」
僕は笑顔で頷くと、荷物を整理する。
「それじゃあ、私は昼食の準備があるから先に行くね。準備が出来たら奈津を来させるから」
そう言って部屋から出た数秒後、美智子さんが何かを思い出したのか、バタバタとして戻って来て顔だけを出す。
「それと、美智子さんって言うのは少し他人行儀過ぎると思うの。だから、お婆ちゃんでも良いのよ?」
「分かりました」
「それも敬語じゃなくて良いの!」
むっ……僕の記憶ではお婆ちゃん達と話した事すらない。
だけど、この懇願する様な目に僕は裏切る事は出来なかった。
「分かった。折角だし、荷物の整理をしたら準備手伝うよ」
グッ
お婆ちゃんは親指を立て、無言でそこから離れて行った。先程とは打って変わってリズム良い青音で帰って行った様だ。
さて、それじゃあまずは汗もかいたし、着替え関係を出してっと……あとは洗面器具と、あとはーー
「ふぅ。取り敢えずばこんなもんか」
僕は荷物を整理し終わると、ふと風が入って来てる事に気づく。お婆ちゃんが開けてくれたのだろうか。
「あ、此処から丁度アレが見えるんだ……」
窓へと近づき外を見ると、ポツンとあった白い海神様が居るという場所が見える。
「ははっ、僕と赤い糸にでも繋がれてるのかねぇ……海神様は」
ガタガタガタッ ゴ ゴンッ
呟くと同時に何処かから凄まじい音が聞こえ、僕は部屋から出た。見た感じ、異変はない。
「い、イテテテテ……」
と思ったが、階段下から声がして急いで下を見る。
「ちょっ!? 大丈夫!?」
そこには仲間さんが転げ落ちたのか、そこで頭を抑えていた。
僕は急いで階段を降りて、仲間さんへと近づく。
「あ、あはは、ちょっと階段から落ちちゃった」
「笑い事じゃないから。痛い所は?」
「え、え?」
頭は打ったみたいだから念の為病院に行った方が良いかな……腕は大丈夫。脚はーー
「っ!」
折れてはないけど、打撲はしてるみたいだ。
「今すぐ冷やした方が良い」
僕は彼女に肩を貸して立たせる。
両親が医者だと、こう言う時の対応とかに慣れて来るな。
そんな事を思っていると、遅れて皆んなが集まって来る足音が聞こえて来る。
え。
しかし、それと同時に彼女が俺の肩から手を離す。
「奈津っ!? どうしたんだ!?」
「な、何かあったの!?!?」
「ーーもしかして階段から落ちたの? 大丈夫だった?」
お爺ちゃんとお婆ちゃんはしどろもどろしてるが、優空は僕の様子を見て、冷静に状況を把握した様だ。
「いやー、別に何ともないよ? ほらっ!」
だけど、仲間さんは誤魔化す様にみんなの目の前で、目一杯何度もジャンプして見せた。
さっきの打撲……結構痛かった筈だ。
「何だ……そうか。でも痛かったら行かねばなんねぇぞ?」
「そうね……見た所腫れてる所も無さそうだけど、痛かったら後で病院に連れて行くからね?」
「りょーかい!」
何故彼女はそんな事を隠すのだろうか。
だけど今の雰囲気を考えれば、そんな事を聞くのはダメな気がする。
僕は空気を読んで、一先ずそこをスルー。
その後、皆んなで昼食を摂った後に病院に行く事を勧める事にした。
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