milky way.
@Tukuyomi100801
Milky Way.
「空に瞬く、無数の星たち。手を伸ばせば、捕まえられそうなのに。」
優香は考える。親、学校や塾の先生からの大学受験への大きなプレッシャーや勉強に時間を使っているせいでいなくなっていく友達のことなどを。ただ、この河川敷から見える夜空だけは全てを包み込んでくれる。無数にある星、星座なんか文系の私には分からない。でも、何もかも上手くいかない時に来ると心が楽になる。なにか分からないものに胸を締め付けられる痛みもない。元々友達など多く居ないためひとりぼっちは慣れていたため、一人でいるのは苦では無く楽であった。しかし、この時間も有限だ。朝が来る度、自分が今どうしたらいいのかが分からなくなり、消えてしまいそうになる。
「おーい!」
遥斗の声だ。こいつはいつも私に絡んでくる。別に絡んでもいいことなんてひとつもないのに。でも、
「何浮かれない顔してるんだ?」
「別に。」
こんな会話しかしない。できない。
また1人話してくれる人が離れていってしまいそうで怖い。いやだ。この時間を1分1秒でも続けていたい。こんなに甘くて苦い思いをするのが楽しいと思えるなんて何時ぶりだろう。
もし、この時間に終わりが来なければ。
夢でもいいから、覚めないでよ。
受験日当日。ここまで来たらあとは全力を尽くすだけ。ふと、遥斗の声が蘇る。
「お互い頑張ろうな!」
あんなに元気でいれる遥斗は勉強のし過ぎでどこかおかしくなってしまっているのではないかとも思える。
「ありがとう。」
人に感謝するのも何ヶ月ぶりだろう。やっぱり遥斗は最低で最高だよ。
時は進んで20××年2月。優香は受験も終わり1人暮らしの準備をしていた。
明日は久しぶりの学校。自由登校でもあるが、受験が終わったということもあり、友達ともう1度仲良くなろうと考えていた。
6時。いつもは起こされるのに今日は自力で起きれた。これで1人でも大丈夫。支度が終わり家から出た。学校への道のりは何故だか懐かしかった。
学校に着いた。おかしい。いつもならあの馬鹿げた大声で絡んでくる遥斗が今日は見当たらない。いつも一緒だった人が居ないのがこんなにも不安だなんて思わなかった。登校中も目を凝らした。瞬き1つするだけでも見失ってしまいそうで不安だった。
また河川敷に来てしまった。全てが上手くいってるはずなのに、何か足りない。
あんなにウザイとかめんどくさいとか思ってたのに。不意に涙がこぼれた。呼吸も忘れるほど激しく泣いた。
「もし、どこか遠く飛んで行ったとしても見つけられるのかな。」
考えれば考えるほど、涙は止まらない。
あいつが居ないと、全てが怖い。
「優香!」
遥斗だ。来てくれた。
「寂しかった…」
「え?なんで泣いてんだよ?」
「うっさい。ばか。」
「はいはい」
嬉しい。楽しい。この時間を続けたい。
「優香、俺ちょうど今からコンビニ行こうと思ってたんだけどさ、一緒に行こうぜ」
「…うん。」
もしこの瞬間に終わりが来ないなら、夢でもいいや。
「あれ、シリウスじゃない?」
「え?どれ?てか、お前文系だよな?星好きなの?」
「え、なんか見えた」
「なんだそれ」
2人は歩き出す。冬の大三角を後ろに何光年もずっと一緒に。
milky way. @Tukuyomi100801
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