第35話
結果から言うと、俺はSランク探索者になった。
というか契約してるから選択肢がなかった。
今後大事な契約をするときはちゃんと条件を聞こうと思います。
じゃないと悪いやつに利用されるかもしれないからな。
「後日ようこさんには表彰式に出てもらいます。世界初のSランク探索者の誕生ですから、沢山の人が見に来る事でしょう」
「え!?」
「ちなみに拒否権はありません。契約の範囲内ですので」
「マジかよ……」
「マジです。あ、服はいつもの巫女服で大丈夫です。探索者の装備は礼服と同じようなものですから」
「それはありがたいんですが……」
正直出たくない。注目されながら表彰を受け取るなんて俺にはできない。前世で学校の表彰式でもガチガチに緊張した思い出があるんだ。
「これは他国への牽制の意味もあるので諦めてください」
「それ言っていいんですか?」
「この場には私達しかいないので大丈夫です」
「そうなんですか」
いや大丈夫じゃないよね?
俺がいるからこそ問題なんだけど。
俺普通の一般人だからな?
そんな国の重要な事を受け止められる立場じゃないからな?
「お話は以上です。日程について連絡する必要があるので連絡先を交換しておきましょう。メッセージアプリを用意してください」
「はい。………あの、なんでメッセージアプリなんですか?」
「せっかくできたアニメ友達ですよ? 積もる話もあるじゃないですか」
総理の声のトーンが上がった気がする。
もしかしてアニメ友達初めてだったりするのだろうか。
「むっ、今失礼な事考えましたね?」
「ソ、ソンナコトナイデスヨー」
「別にいいですよ。どうせ私は友達一人いないぼっちな総理なので」
あ、失言だった!
気付いたら総理が部屋の角に座って丸くなってる!
「ちょ、そんなこと言ってませんから! だからそんなに拗ねないで下さい!」
「拗ねてないですよー。いつも趣味が合うと思って話し掛けたら恐縮されて話なんてできませんし、ゲームをしようにもフレンドもいなくてずっとぼっちプレイですよ。みーんなマルチで楽しんでるのに私だけぼっちですよ」
「え、何この怨嗟!?」
「私だってみんなと普通に話したいですー。みんなとワイワイマルチプレイして遊びたいんですー」
「わかりましたから! 私が友達になりますから! いっぱいアニメの話してマルチプレイしましょう!」
「え? 本当にいいんですか?」
絵柄のない真っ白な仮面なのに、なぜかパーッと明るくなったような気がする。かわいいなこの人!
「いいですよ。私も友達多い方じゃないので」
そういえばそうだったんだよな。俺の友達って本当に少ないから。最悪ゼロかもしれんし。釣り人さんはもう友達と言ってもいいと思うんだけど、釣り人さんがどう思っているかが怖いところ。
鈴さんはまだギリギリ知り合いか?
実は正式な友達はこれが初めてだったりする。
「ようこさん」
「なんです?」
「ありがとうございます!」
仮面を付けてるはずなのに、神代さんの笑顔が見えた気がした。
本当にかわいいなこの人!!
危うく胸押さえそうになったぞ。破壊力がやばすぎる。
くそっ、仮面で顔見えないはずなのに……。
「ではまずメッセージアプリをインストールするので少し待ってください」
「いやインストールしてなかったんですか?」
「普段使わないですし……」
「なんかごめんなさい」
「謝らないで下さい。惨めになりますから」
「えぇ……」
なんか、今日で神代さんの印象がガラリと変わったな。
今までは荘厳で冷静な完璧な女性だったんだけど今じゃぼっちのかわいい人になっちゃった。
これからは友達として接しよう。
「メール交換も出来ましたし、私は帰りましょうか」
「そうですか。……あの、時間があればなんですが一緒にアニメ見ませんか?」
「見ます」
即答かよ……。
あ、そういえばそろそろしゅんこ達が起きてくる時間だ。神代さんには悪いけど朝ご飯作らせてもらうか。
「神代さん、あの子達が起きてくるので朝ご飯作らために少し先を空けますね」
「なるほど。なら私も手伝いましょう」
「いや流石に総理の手を煩わせるわけにはいきませんよ」
「いえいえ。私は友達の神代唯として手伝いたいのです。なので遠慮なさらず。敬語もいりません」
「さ、さすがに敬語を外すのは……」
「無理にとは言いませんよ。でもわたしの良心が痛むので料理くらいは手伝わせてください」
「じゃあ……お願いします」
神代さんの手伝いもあり、朝ご飯はすぐに作り終わった。作っている最中気付いたんだけど神代さんって料理作るのバカ美味いわ。
俺の料理は普通の家庭料理くらいの美味さなんだけど、神代さんの料理は高級店の料理を軽く超えるレベルだ。
味見させてもらったけどめちゃくちゃ美味かった。これと並べられる俺の料理が可哀想だ。
さて、そろそろかな?
「姉上ーー!!」
ありゃ、どうしたんだ?
いつもは普通に起きてくるのに今日はなんかバタバタしてるな。
「た、大変じゃー!」
「どうしたんだ?」
「し、尻尾がー!」
「尻尾?」
何事かと思い、起きてきたしゅんこの尻尾を見る。
………なんか、増えてね?
昨日までは三本だった尻尾が、四本に増えていた。何があった?
「なんで四本に増えてんだ?」
「儂にもわからん。起きたら勝手に生えておったから」
「体内の魔力量が増えてますね。おそらくそれが原因では?」
「むー、確かに昨日よりも魔力が増えておるな。って誰じゃ貴様!?」
「どうも神代です。今日はようこさんに用事があって来ました」
「……なるほどな」
なぜかしゅんこがこちらをジト目で見て来た。
なんだよそのまたか…みたいな目は。俺何もしてないからな?
ちょっとダンジョン壊しただけだからな?
「姉上の新しい女というわけか」
「何言ってんだお前!?」
「違うのか?」
「違う! 神代さんとはそういう関係じゃなくてただの友達だよ」
「ふーん」
いやそんな疑われてもさ……。
大体前世を含めモテたことのない俺がそんな簡単に彼女なんて作れるわけないだろうが。
それに加えて今世の俺は女の子だからな?
彼女を作るのは絶望的なんだよ。
「まあそういうことにしておこう。尻尾のこともわからぬ故、先に飯を食べようかの」
「そっか。今日の朝ご飯は神代さんが手伝ってくれたから豪華だぞ」
「なんじゃと? それは楽しみじゃな」
「じゃあ俺はネロと銀花を起こしてくるから、先に食べてていいぞ。神代さんも少し待っていてください」
「うむ!」
「わかりましたー」
二人を起こしに寝室に行く。
俺達はみんな同じ部屋で寝るので起こすのが楽でいい。前世で妹を起こすのには苦労したからな。あいつまったく起きないんだからさ。
「おーいネロ、銀花起きろー。朝だぞー」
「ふぁああ……主ーおはよう」
お、先に銀花が起きたな。ネロはまだぐっすりだ。
「ネロー、起きろー」
「んみゅう……」
あぁ……これ起きるのに時間が掛かるやつだ。神代さんを待たせるのはまずいし、運ぶか。
「よっこいせっと」
「あー、ネロずるーい」
ネロを抱っこしたらなんか文句が飛んできた。起きないんだから仕方ないだろ。
ネロを抱き上げて神城さん達が待っている居間に向かう。
「弟子にしてくだされ!」
居間な行くと、そこには神代さんに土下座するしゅんこがいた。
いや、どういう状況?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます