第28話
約束は守らなければならない。破ってしまえば信頼を失い、信用もされなくなる。
配信者なら尚のこと。一度でも約束を破れば人は離れて行く。
だから約束は絶対に守らなければならない。それが自分にとってめちゃくちゃ嫌な約束だとしても。
「皆さんこんにちは。自分の強さを自覚し、自分が異常ということを自覚してしまった狐坂ようこです。今回は約束の通り、皆さんの言うことをなんでも聞く配信していきます」
:待ってた
:うぉおおお!!神回確定配信だーー!!
:この時を待ち侘びていたぜ
:ぐへへ、美味いもん食わせてやるからな覚悟しろ!
:しゅんこちゃんとイチャイチャしてもらうぜ
:神主共がまとも……だと!?
「今回の配信はひたすらに神主達の要求を叶えていく配信になります。エッチな物などの配信的にアウトな物はしゅんこちゃんが消してくれますので、心配は入りません。一思いにやってください」
:ようこちゃん……覚悟はいいんだね?
:覚悟はいいか?俺はできてる
:エッチなの送ったやつは死刑な
:さてと、本気出すか
:これは変態紳士神主達による、己の欲望を賭けた聖戦である
そのコメントを皮切りに、俺のコメント欄は加速した。
解放された彼等の欲望。何をして欲しいとか、何を着て欲しいとかが凄まじい速度で流れる。
この中からネロと銀花が選んでくれる。正直何が来るのか全く予想できない。
俺ができるのはまともなのが来るのをただ願うだけだ。
「ふっ、古の竜にして黒炎を操りし我の選択はこれだー!!」
:なんて?
:誰この子
:あ゛あ゛あ゛!! 古傷がぁ゛!!
:やめて、抉らないでえ゛
:あれはちょっとした出来心なんだコミュ障を治そうしただけなんだ俺は悪くないんだ忘れてくれ忘れてくれ忘れてくれ忘れてくれ忘れてくれー!!
:おぉう、なんかめっちゃ断末魔が聞こえる
:漆黒の歴史を持つ物達だ。そっとしてやれ
:で、誰なん?
:こんな中二病残念美人美少女見たことないんやけど
「紹介が遅れましたね。この子はネロです。気付いたら人になって中二病になってました。そしてこの子が銀花です。だんだん陽キャになってきて手が付けられなくなってきました」
:え、なんで人になってんの!?
:両方とも超絶美少女だしさぁ
:片やローブ中二病美少女、片や一目でわかる陽キャ美少女
:うっ、陽キャだぁ……
:陽キャと言うより……ギャル
:確かにギャルっぽいわ
:はぁ、はぁ、この陽キャエネルギー、俺でなきゃ耐えられなかっ………
:↑陰キャ神主ーー!!
:まさかエネルギーだけで人を殺すとは
:これがギャルー色の覇気だとでも言うのか!?
「皆さんノリいいですねー。でもふざけてたら時間がないのでテンポ良くいきましょう。ネロ、お願いします」
「神主共め、この偉大なる我の道を妨げるとは……。今回は許してやるが次はないと思えよ」
「早よ言いな」
「ふん、聞いて驚くがいい!我が選んだのは『ようこちゃんの超絶ホラゲー配信終わるまで帰れません!』だ!!」
「………今回の配信はここまでのようですね。皆さんが視聴ありが」
「待て姉上早まるな!!」
「嫌です!何が悲しくてホラーゲームなんてやらなきゃならないんですか!?」
「全て姉上が撒いた種じゃろうが!」
「ぐ、ぐうの音も出ない」
:ほほう、この反応……さてはホラー苦手だな?
:くっくっく、良質な悲鳴が聞けそうだ
:泣き叫ぶようこちゃん……いい
:楽しみだぜ
「ホラゲー配信はソフトなども準備しなきゃなので今日はできません。今後もしません」
「必ず用意させるから待っておれ!」
「しゅんこちゃん、そう言うの良くないと思います」
:しゅんこちゃん強え
:これぞ正妻だな
:※姉妹です
「じゃあ次はウチだね!ウチが選んだのはこれ!『ようこちゃん、敬語やめようよ』だよ!」
「えぇ!?」
「確かに姉上は敬語をやめた方が良いな」
「しゅんこちゃんまで」
「はっきり言って素との違和感がすごいぞ」
「うぐっ……じゃあこれから素でやるよ」
「やっぱり主はそっちの方がかっこいいよ」
「ありがとな」
:え、やだかっこいい
:元気なアイドルボイスからクールなイケボになっちゃった
:まずい惚れる
:堕ちちゃう
「なんかコメント欄がおかしいな」
「だいたい姉上のせいじゃ」
「俺何かしたか?」
「はぁ〜〜〜(クソデカ溜め息)」
:俺!?
:俺っ娘!?
:っしゃああああ!!(俺っ娘好き私歓喜の咆哮)
:俺っ娘か……ふーん、エッチじゃん
:この声で俺っ娘はまずい……孕みそう
:もう産みました。責任とってしゅんこちゃんと結婚してください
「えぇ……」
「賑やかじゃのう」
世風鈴:あっ、あっ、ようこちゃんの男前ボイスやばあっ、あっ
:鈴ちゃん!?
:どうしたんだ鈴ちゃんそれじゃあただの変態だよ!
:↑先程勝手に孕んで産んだ奴のセリフである
:鈴ちゃんが知らない間にロリコンになってて悲しめばいいのか喜べばいいのか
「おっ、鈴さんいるじゃん。………なにしてんの?」
世風鈴:悶えてただけだよ?
:うーん、アウト!
:残当
:現行犯逮捕です
世風鈴:なんでぇ!?
「鈴さん……」
世風鈴:やめてようこちゃん!そんな目で見ないで!
:ようこちゃんの目が絶対零度になっちった
:こりゃあ鈴ちゃんやることやったからな
:幼女と変態の百合園はここですか?
:なんか……ゾクゾクする
:はぁ、はぁ、はぁ!
:ようこちゃんかなどうしようもない俺を罵って!!
:まずい一部の変態どもが騒ぎ出した
:俺の銃火器が火を吹くぜ!
:汚物は消毒してやるぜ!!
「うわぁ……」
「神主達は変態しかいないのじゃな」
「私知ってるよ。リスナーって配信者に似るんでしょ?」
「それなら主は生粋の変態という事になるな!」
「おいそれは違うだろ!!」
:もしやようこちゃんは俺らと同類だったのか……?
:なるほどな。だからこんな変態が多いのか
:へっへっへ、さあようこちゃん君の好きなタイプを言うのだ
:ようこちゃん=変態、変態=俺らだとしたら、ようこちゃん=俺らってこと!?
:俺達は、ようこちゃんだった……?
:俺そんな脳筋じゃないよ……
「おいお前らちょっと待て!」
「あ、ほら姉上『好きなタイプを言うのだ』と言われておるぞ。早く言うのだ」
「ちょっとしゅんこ今はそれどころじゃない!」
下手したら俺が変態というレッテルを貼られてしまう。それは絶対に阻止しなければ!!
「姉上」
「ひっ」
しゅんこからドスの効いた声が発される。笑顔だが目は全く笑っておらず、めちゃくちゃ怖い。
情けない俺はそれを見て震えることしかできない。
「約束は守るんじゃぞ?」
「は、はい……」
俺は従うしかできなかった。
:これが、正妻の本気……!?
:完全に尻に敷かれてますね
:これがようこちゃん達の夫婦生活の一端か
:いやー、微笑ましいっすね
「ほれ姉上、好きなタイプじゃ」
「あー……これって恋愛的にか?それとも友達にしたい奴?」
「恋愛じゃろ」
「恋愛的にか。そうだなぁ……料理が美味くて優しい子、かな」
「ふむ、なるほど」
しゅんこがどこからかメモを取り出し記録した。俺の好きなタイプなんかメモっても何にもならないと思うんだが……何か意味があるのか?
とりあえずスルーしとくか。
世風鈴:ふーん、なるほどねぇ
:鈴ちゃんがアップを始めました
:ついに始まるのか、正妻戦争が
:さあ誰が勝つかな?
:出場者はしゅんこちゃんと鈴ちゃんか……少ないな
:せめてあと一人欲しいところ
釣り人:私が来た
:!?
:釣り人さん出場決定!!
:面白くなってきたぁ!
「つ、釣り人さん!?」
「これはなかなか、面白い事になってきたのう」
「ウチは外野で応援してるよ!」
「ふっ、この我が出る程の戦いではないな」
「おいお前ら見捨てるな」
ペット二人に見捨てられた俺は、なんかよくわからない戦いを見ることしかできなかった。
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